表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~  作者: 青依香伽
第5章 辺境の地へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/63

3 リリー


 翌朝——


 廊下から使用人たちの動きだす音が聞こえると、ルイーズはベッドから起き上がり、身支度を始めた。昨夜はリオンたちの様子が気がかりで、夜が明ける頃には目を覚ましていた。


 朝の支度も終えて、寝室の隣の部屋で荷物の整理をしていると、リアムが室内のドアから顔を出した。


「リアムおはよう。今日は早いわね」

「よそのお屋敷で寝たのは初めてだから……」

「そうね。まだ早いけど、朝食は食べられる?」

「うん」

「それなら身支度を整えて、呼ばれるのを待ちましょう」


 ルイーズが、侍女から受け取っていた洗面器とタオルを差し出すと、リアムは身支度を始めた。ちょうど身支度を終えた頃、侍女が部屋をノックした。


「失礼いたします。朝食の準備をさせていただいてもよろしいでしょうか」

「シャロン家の二人もすぐにきますから、四人分の準備をお願いします」


 今朝は、エマとエリーを含めた四人で一緒に朝食を摂る約束をしていたようだ。侍女が準備を始めてしばらくすると部屋にエマとエリーが訪ねてきた。四人は挨拶を交わすと、着席をして食事を始めた。


「ルーちゃん昨日はありがとう。スープを飲んでお腹を満たしたから良く眠れたわ」

「それは良かったです」

「昨夜は、リリーちゃんの部屋に行ってくれたのよね。二人とも食事は摂ったのかしら」

「私が部屋へ行ったとき、リオンさんは疲れた顔で、まだ何も口にしていない様子でした。ただ、食事を受け取ってくださったので、多分召し上がってくださったかと思います。それから、私はまた部屋に伺うと伝えました」


 エマがルイーズの話に相槌を打つと同時に、リアムとエリーの声が重なった。


「僕もいきます」

「私も行くわ」


 その言葉にエマが横から待ったをかけた。


「大人数で行くのは迷惑だわ。ルーちゃんは約束してるけど、二人が行くのはどうかしら」

「僕に行かせてもらえませんか。父からも、何かあったら姉上について行くようにと言われました」


 エマはリアムの言葉を聞くと、少し考えた後で二人に任せることにした。


「そう……わかったわ。二人とも、よろしくね」


 ♢


 ルイーズとリアムは、食事が終わるとすぐに、リリーの部屋に向かった。部屋に着いてドアをノックするとレアが扉を開けた。


「おはよう、二人ともどうしたんだ?」

「レアさん、おはようございます。昨日お屋敷に着いてから、休まずに妹さんの看病をされていますよね。今日は私が変わります」

「しかし、まだどんな状態か把握していないんだ……だから......」

「お二人に何かあったら、妹さんも心配されます。少しだけでもお休みになってください」

「……ありがとう。それなら、少しだけ休ませてもらうよ」


 レアはリオンに声をかけにいったが、リオンはソファーにもたれて眠っていた。


「ルーちゃんすまない。兄上は起きそうにないから、ここで休ませておいてくれ」

「分かりました」

「よろしく頼む」


 ルイーズとリアムは、レアが部屋から出ていくと、リリーの眠るベッドの横にある椅子に腰を下ろした。


「顔色が良くないですね」


 リアムに目を合わせ頷くと、ルイーズはケットの上に出ているリリーの手に自分の手を合わせた。


 どのくらいの時間が経っただろうか。リリーは瞼をゆっくり上げると、虚ろな視線でルイーズを見つめた。


「だ...れ?」


「ルイーズと申します。部屋にはお兄様もおりますから、心配なさらないでくださいね」


 囁くように話しかけるルイーズに、リリーがゆっくりと瞬きをした。


「リアム、リオンさんに妹さんが目を覚ましたと伝えてきて」


 リアムは頷くと、リオンのいるソファーに向かった。


「リオンさん、起きてください。妹さんが目を覚ましました」


 深い眠りについたいたリオンは、自分の名を呼ぶリアムに焦点を合わせると突然ソファーから立ち上がり、リリーの元へ急いで駆け寄った。


「っ! リリー、分かるかっ?」

「……おにい…さま……?」

「気分はどうだ? 起き上がれるか? 何があった?」

「…………」

「リオンさん、落ち着いてください。妹さんは今、目を覚ましたばかりです。そんな問いただしても、すぐには答えられません」

「ルイーズ……、すまない」


 リオンは一瞬ためらうと、ルイーズを見て謝った。そして、リリーに視線を戻してから手を握った。


 ルイーズは、敬称なしで呼ばれたことに一瞬驚いたが、リオンは呼んだことさえ気づいていない。ルイーズは、リオンが動揺しているのだと思うことにした。


「リアム、レアさんの所にいってくるからここにいて」

「姉上、僕が行ってきます。——何か必要なものはありますか?」

「レアさんを呼びに行った後、お水とコップ、あとは…、洗面器にぬるま湯とタオルを数枚と清潔なガーゼをもらってきてほしいの」

「わかりました。行ってきます」


 ルイーズから必要なものを聞くと、リアムは急いで部屋を出て行った。ルイーズは二人の方に向き直る。リリーはまだ完全に目を覚ました訳ではないようだ。うつらうつらしたまま、リオンを見ていた。


「リオンさん、妹さんに侍女か乳母はいますか?」

「ああ、乳母はいるんだが……、昨日執事に確認したら、リリーの乳母は半月前に階段から転落して、今は静養しているようなんだ。急ぎ、侍女を付けるように申しつけたが、まだ決まらない状況だ」

「そうでしたか……」


 見たところ、リアムとリリーは同じ年ごろのようだ。そんなリリーが、一人で寂しい思いをしていたのかと思うと、ルイーズはやるせない気持ちになった。


「リオンさん、滞在期間中は、私に妹さんのお世話をさせていただけませんか?」

「……しかし、君に侍女のような仕事をさせるわけには……」

「私は、侍女になるために勉強中です。お役にたてることもあると思うんです」


 返事に迷うリオンを尻目に、ルイーズはリリーの手を自分の手で包み込んだ。自分よりも少し小さな手は、かさつきひんやりとしている。リオンやレアとは違う、薄紫の髪色に、透き通るような白い肌。今は血色が悪いが、早くお世話をして元気な姿にしてあげたい。

 リリーもルイーズに手を触れられると、呼吸が穏やかになるようだ。心なしか、先ほどより瞬きの回数も増えている。


 しばらくすると、リアムがレアとメイドのメアリーを連れて部屋に戻ってきた。レアを呼びに行く途中で、メアリーにお水や洗面器の用意をお願いしたようだ。ルイーズはそれらを受け取ると、リオンとリアムに少しの間だけ廊下で待つように頼んだ。二人が廊下に出たことを確認すると、ルイーズはリリーの隣で膝をついた。


「少し体を拭きますから、不快に思うところがあったら、私の方を見てくださいね」

 

 リリーは、瞬きをしながら返事をする。ルイーズは、その様子を見つめると、身体を優しく拭きはじめた。そして、徐々に表情が和らいでくると、ガーゼに含ませた水をリリーに飲ませた。

 

 すると、その様子を隣で見ていたレアから安堵のため息が聞こえてきた。


「ありがとう。リリーの顔が昨日とは全然違う」


 レアに微笑み頷くルイーズは、その後ろに控えていたメアリーに視線を合わせた。


「メアリーさん、廊下にいる二人を呼んできてもらえますか」

「かしこまりました」


 メアリーが呼びに行くと、リオンとリアムが部屋に入ってきた。リオンはリリーの側に駆け寄った。

 ルイーズは、その場から離れてドア付近にいるリアムの所に歩み寄った。


「リアム、ありがとう」

「姉上、お疲れさまです。僕もお役に立てたようで良かったです」


 顔を見合わせ頷き合う二人は、近くにいるレアに声を掛けた後、リリーの部屋を後にした。廊下に出ると、リアムがルイーズに小声で話しかけた。


 部屋に戻ると、ルイーズはリアムからソファーで待つように言われた。少し経つと、隣の部屋から小さな封筒を持ったリアムがこちらに戻ってきた。


「姉上、父上からです。これを読んでください」


 封筒を渡されると、封を開けて手紙を取り出す。


「何故、手紙なのかしら……?」

「父上は、直前まで姉上に伝えるべきか迷っていたそうです」

「……そう」


 ルイーズは不思議に思いながらも一先ず手紙を読み始めた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ