4 復習
穏やかな昼下がり、裏庭での昼食を終えた四人は、それぞれが目的とする場所へと向かっていった。
エリーは図書室で調べもの。クレアとミアは裁縫に刺繍。午後からの授業が自習に変更されたため、個々がそれぞれ苦手な課題に取り組むことにしたようだ。
昼休みに皆と別れた後、ルイーズは調理室で紅茶の淹れ方を練習していた。お茶会の流れについては学び終えたものの、紅茶の淹れ方がどうしても納得できないようだ。
(お願いするのは簡単だけど、手間暇かかっているし、とても繊細な作業よね。ローラには感謝だわ)
お湯を沸かし、ティーポットとティーカップに少量のお湯を入れ、温めてからお湯を捨てる。ティーポットにティースプーン一杯の紅茶の葉を入れて、沸騰直後のお湯をティーポットに注いで蓋をしたら数分蒸す。そして、茶こしを使って紅茶を注ぐ。
まだ不慣れな手つきだが、教わった手順通りに丁寧に進めている。
するとそこへ、マノン先生が調理室のドアを開けて入ってきた。
「ルイーズさん、練習ですか?」
「マノン先生——。はい、紅茶を淹れる練習をしていました。今から新しいものを入れ直しますので、もしよろしければ飲んで頂けますか?」
「わかりました。でも、淹れ直さなくて結構ですよ。そちらの紅茶をいただきます」
ルイーズは、ソーサーの上にカップを乗せてマノン先生の前に紅茶を差し出した。
そのソーサーを左手に持ち、右手でティーカップのハンドルをつまみながら、口元に近づけ香りを確認する。紅茶を口に含んだマノン先生が、ルイーズを見ながら質問した。
「上手に淹れられていると思います。しいて言うならば、大きい茶葉を使った場合、細かい茶葉を使った時よりも、蒸らし時間を少しだけ長く置いた方が良いですね」
「......はい」
「他に気になる点はありますか」
「いつも我が家の侍女が淹れてくれた紅茶は、とても美味しいのです。教えていただいた通りに、茶葉も湯量も量ってから入れているのですが……同じようには淹れられません」
「そうですか......。その方は、ルイーズさんのことをよく見ていらっしゃるのですね。主人の体調や好みが分からないと、なかなか出来ることではありません。匙加減がとてもお上手な方なのでしょう。今すぐに、その方と同じ水準に達するのは難しいでしょう。今は基本をしっかりと身につけて、慣れることが大切ですよ」
「はい、ありがとうございます」
♢
その日の夜、ルイーズはローラにマノン先生との会話について話していた。
「紅茶って奥が深いのね。私はまだ、教わった通りに入れることしかできないの。マノン先生から、今はしっかり基本を身につけるようにと言われたけど、私もローラのように常に美味しい紅茶を淹れられるようになりたいわ」
「そうですね。茶葉の種類や栽培される環境、それに製法によっても味に大きな違いがありますからね。貴族家によってはティーポットや茶葉の種類も違います。今はマノン先生のおっしゃる通り、基本が大事です。何度も練習をして、基本を身につけておけば、仕える方の好みに合ったものをお出しできるようになると思いますよ」
「確かにそうよね。今は練習あるのみね」
「お嬢様なら大丈夫ですよ。紅茶の淹れ方に限らず、何事にも丁寧に対応されていますから」
「いつもありがとう、ローラ。私はローラの淹れてくれた紅茶が一番好きよ」
「ふふっ、ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです。今度はお嬢様の淹れた紅茶を飲ませてくださいね」
「もちろんっ、約束するわ!」
淑女科上級生との合同授業まであと数日。ルイーズの練習は毎日続くのだろう。




