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後輩よ、俺は恋をしているかもしれない

書いてて思いましたが、思ったよりキャラ崩壊が大きいです。ギャグ回ということで。

ブックマーク、評価、よろしくお願いします

「後輩よ、俺は恋をしているかもしれない」

「は?何を言っているんです。あなたに恋がわかるはずないでしょう」

「だから、かもしれない、なんだ」

 俺は、恋をしているかもしれない。そう思ったきっかけは昨日のことだった。


 俺達はいつも通り生活をしていた。食材を買い、俺が料理をする。そんな1日を過ごしていた。その日の夜のことだった。皿洗いを終え、その日の、いや数日分の疲れを癒すため、風呂に入ろうと思い立った。

 風呂の扉を開け、浴槽が見えた。人影があった。この家に、自分以外の人間。つまり、彼女、ユキしかいない。そうして俺は彼女に罵倒され、どこからか取り出したスタンガンで気絶させられ、追い出された。ついでにまたもやどこからか取り出したハリセンで殴られた。

 女性の入浴中に男性が侵入する。それはもはや犯罪的、いやれっきとした犯罪である。だから、この罰は甘んじて受け入れた。

 ユキの入浴を覗いた時、俺は恥ずかしさを覚えていた。女性、それも俺の主観で美人と言える人の入浴を見ることは過去にあった。その時は何も思わなかった。が、ユキを見たとき、彼女の顔はいつも通りだったが、いつも以上に色気を感じ、同時に自身の顔を熱くしていた。


 この事をきっかけに、いつもの買い物、食事などの姿に、かわいい、綺麗だ、などという感想を抱き、身体が熱くなるようになった。心臓がバックンバックンと鼓動するのを感じるようにもなった。

 それに疑いを持ち、心臓の病気かと病院に駆け込んだ。何故か看護師や医者がわずかに笑みを浮かべていた。

「これは、恋の、病だね。ブフッ」

 何をふざけているのか、と大きな声を出した。こちらは本気で命の危機を感じているというのに。

「いや、ある特定の人を見ると心臓がもうバックバクで身体が熱いし視界が狭まる。これはもう、完璧な恋の病だよ。グッ、ブッフォ」

 こい、鯉、故意、乞い…色々と言葉を浮かべるも、鯉は食べていないし、自分で心臓を動かしているわけでもないし、心臓に願って鼓動を増やしてもらっているわけでもない。このヤブ医者め、と彼を罵倒する。

「あー。そういうね。恋、知らない感じか。そうかぁ」

 彼や看護師らは急に無表情に、呆れたような、幼い子供を見るような表情になった。

「君、何歳だっけ?…16歳!?」

 医者は目を丸くして、看護師らと何やら話し合っている

「いや、あり得る?これマジなやつ?」

「高校生でこれは流石にないでしょ。悪戯じゃない?」

「でも、あの真剣な表情、とても悪戯とは…」

 おい、全部聞こえてるぞ。こい、というのはきっと医学の専門用語なのだから、高校生が知っているはずがない。なんだその哀れむような顔は。

「うむぅ。仕方ない。今から恋について、授業するとしよう。ヘイ!」

 医者が何かを呼ぶと、どこからかホワイトボードがスライディングしてきた。医者は立ち上がり、ペンを握り、ホワイトボードに立ち向かった。

「いいかい?恋というのは、これだ!」

 医者はホワイトボードに大きく一文字『恋』と書いた。恋の病の真相を俺はやっと知ることができた。こい、とは、恋なのだ。

「そして、君が体験した現象、それは完全に、恋だ!!」

 医者はドンッとホワイトボードを叩き、拳を痛めたのか、もう片方の手で拳を撫で始めた。看護師らはうんうんと頷いていた。

「君は、完全にその女性に惚れているんだ!」

「なんだってー!」

 驚きのあまり、叫んでしまった。木村さんに弁明をしたあの時間は一体何だったのか。しかし、これは大問題だ。恋をしていたら、必ず仕事に支障がでる。どうにか、恋の病を治せないだろうか。

「その相手に告白するんだ!そして付き合ってしまえ!なんなら婚約してしまえ!いや、未成年か…」

 テンションの落差が激しい医者だ。が、恋というのは付き合う、もしくはきっぱり振られることで終わるらしいことは俺でもわかる。であれば、告白するしかあるまい。しかし、もし振られて関係が悪くなってしまった場合、彼女を勧誘するのは難しいだろう。ならば、成功させなくてはならない。


「と、いう訳なんだ」

「は?は?は?は?は?は?……」

「壊れたか?」

「は?壊れてませんが?」

「そうか。それで、どうやったら、確実に付き合えるかな?」

「先輩、まずは、その医者に脳外科をおすすめしましょう」

「なんでだ。良い先生だったぞ。おかげで関係が進みそうだ」

「本当にどうしてしまったんですか。貴方は、恋をする以前に、恋を理解していないはず、そもそも、依頼を放って恋人になろうとするだなんて、そんなこと私の知ってる貴方はしない!」

 どうしてしまったのだろう。いつもの口調が崩壊している。彼女の叫び声は初めて聞いた。

「いや、これも仕事の一部だ。付き合って、仲良くなってから勧誘したら、解決だろう?」

「いや、でも……あ、貴方には、まだ恋愛は早いですよ」

「俺は年齢的には高校生だ。なんなら今が丁度良い時期じゃないか?」

「ふざけないでください。貴方には、私がいるでしょう?」

「…?何が?」

「だから、あの女でなくても、私が恋人になれます!」

「いやぁ、ないかな。一緒に風呂に入ったりもしたが、ユキの時みたいな感覚はなかったし」

「な!?あ…」

 そろそろ決着がつきそうだ。これで、俺は恋をしているということがわかった。早く終わらせて、彼女を起こさなくてはならない。

「じゃあ、俺はターゲットを起こさなきゃだから」

「ちょ…待っ!?」

 ぷつりと電話を切る。さてと、仕事するか。


 そういえば、告白の仕方を聞くのを忘れていた。

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