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どうぶつ村のエリカと妖艶なデーモン  作者: あめ野コッキー
1.不穏な星のプロローグ
3/26

1

閑散かんさんとした町の外、しっとりと湿った空気が漂う森の中に、密かにたたずむ城館があった。


森を切り開いて建てられた城館は大きく荘厳そうごんであったが、長年手入れがされていないようにボロボロであった。


城館の外壁はカビや雨垂あまだれで黒ずんでおり、無数にある窓硝子まどがらすのほとんどにひび割れが散見された。


外周の広く大きな庭は、全く手入れがされていないようで荒れ果てている。


正しく廃城のような姿をしており、外見からは到底、人が住んでいるとは思えない城であった。


しかし、ただ一人この廃城に住んでいる者がいる。


城の一室、部屋の最奥にある玉座に彼女は腰掛けていた。


その表情はうつろであった。


切れ長の目は垂れ下がり、あかく美しい瞳は焦点が合っていない。


背中まで伸びた黒くつやのある長い髪は、しおれたようにしなだれている。


生気を失ったようにピクリとも動かず、まるで人形のようであった。


彼女はとても扇情的せんじょうてきな装いをしていた。

それは下着姿と言っても大差のないものである。


そんな装いからは悩まし気な肢体したいが惜しげもなく覗いており、それは妖艶ようえんで魅力的な人間の女性そのものであった。


しかし、彼女は人間ではない。


鮮やかな色彩の青い肌に、頭の両側から生えた二本の角、鋭い爪のある蝙蝠コウモリの翼に、柔軟な槍のようにしなる尻尾。


彼女はこの城に住まうモンスターであり、より強力な能力を有する個体、ボスモンスターと呼ばれる存在であった。


彼女に固有名称はない。


彼女は、この世界で目覚め自我が芽生えたその時から、自身の種族をこう認識している。


悪魔デーモン




──そしてまた、静寂に満ちた城に響き渡る。


それは、扉の開く音。


それは、よろいの擦れる音。


それは、大きく脈打ち始める、彼女の心臓の音。

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