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どうぶつ村のエリカと妖艶なデーモン  作者: あめ野コッキー
4.素敵な出会い
16/26

2

「ふう、やっと森を出られたわ」


エリカがしばらく森の中を歩き続けていると、広く切り開かれた場所に出ました。

森を切り開いて作られた土地は、周りが高い錬鉄製れんてつせいさくかこわれており、土地のおくには城館じょうかんっていました。


「あれがお城かしら? なんだか大したことなさそうね」


なにぶん広い土地でしたので、エリカには奥に建つ城がずいぶんと小さく見えました。それに、エリカの想像そうぞうしていたのはテーマパークに建っているような城でしたので、奥に建つ城館は、色彩しきさいもなくつまらない見た目のただの大きな建物に思えました。


「どこから入るのかしら?」


森を適当てきとうなところから入り、また適当にけてきたエリカは城の正面からは少し外れた場所に出てしまいました。


エリカは森でひろったえだ順繰じゅんぐりに鉄柵てつさくに当てて、カンカンと音を鳴らしながら鉄柵に沿って歩いてゆきます。


やがて城が正面に見えるところまでたどり着くと、そこには大きな錬鉄製の門がありました。


「開かないわ」


大きな門は閉まっていて、エリカは鉄柵を両手で握ってガタガタと揺らしましたが、地面にくいが下ろされており開きません。


「他に入り口はないかしら?」


エリカが辺りをキョロキョロと見渡すと、門の横に鉄柵を切り抜かれて作られたような、くぐりを見つけました。


エリカが半開きのくぐり戸に付いた、なにやら悪魔あくまのような顔のモチーフがほどこされた彫刻ちょうこくの取っ手を引くと、鉄柵の戸はキィーと音を立てて開きました。


エリカは「よいしょっ」と鉄柵をくぐり抜けて、敷地しきちの中へと入っていきます。


「一面に花を咲かせたら、少しはマシになるわね」


門の正面には城まで続く一本の大きな道が通っており、道の左右にはてたにわが広がっておりました。


エリカはそんな庭を横目に、城に向かってまっすぐ歩いてゆきます。


城館はエリカが近づけば近づくほど、どんどんと大きく見えてきました。なので、エリカは一歩、また一歩と歩く度に、首の角度が少しずつ上を向いていくのです。


「まあー」


柵の外から見るとあんなに小さく見えた城館も、正面に立てばそれはもう、とても大きな城館でした。


エリカの通う小学校や、エリカが両親に連れられて、週に一度は買い物に行くショッピングモールくらい大きいのです。


城館の大きさに圧倒あっとうされたエリカは、一度立ち止まって、口をポカーンと開いて城館を見上げます。


「立派なものねー」


エリカが見上げた先には立派りっぱなポーティコをかまえた玄関げんかんがあり、頭上ずじょうのペディメントには仰々(ぎょうぎょう)しいモチーフが彫られていました。


「でも、こんなの誰が掃除そうじするのかしら?」


しばらく城を観察かんさつしていたエリカは、カビや雨だれでよごれたかべを見て言いました。


「わたしは絶対したくないわね」


エリカはそんなことを言いながら玄関に入っていくと、城の玄関扉げんかんとびらを見上げます。


「でかー」


城の玄関扉はとても大きな扉でした。なんせ、エリカの頭の上に扉のノブがあるのです。


「重っ!」


エリカはノブをひねって扉を開けようとしましたが、マホガニーで作られた大きくて分厚ぶあつい扉はとても重く、6歳の子どもの力で開けるのはとても難しく思えました。


「んっー!」


エリカはノブを捻りながら、扉に体を押し付けて全身の体重をかけました。すると、扉はギシギシと音を立ててゆっくりと開いていきました。

一人分の隙間すきまが開くと、エリカはスルッと体をすべませて、たおれるようにしながら城内じょうないに入ります。

エリカが城内に入るのと同時に、扉はバタンと音を立てて閉まりました。


「掃除はしていないみたいね」


エリカは立ち上がって服についたほこりはらいながら言いました。


「そりゃそうよね、こんなに広いんだもん」


玄関から城に入ると、そこは大広間おおひろまでした。正面には大階段だいかいだんがあり、大階段を上がった先には大広間を見下みおろせる二階の通路つうろがあります。そして、通路の真ん中、大階段を上がった正面には、玄関扉と同じくらい大きな扉がありました。大きな扉にはなにやら不気味な彫刻が施されており、あやしげな雰囲気ふんいきただよわせていました。


大広間はボロボロでした。ゆか所々(ところどころ)けたように穴が空いており、家具かぐこわれ、カーテンはどれもこれもやぶれて穴が空いておりました。城内に明かりはともっておらず薄暗うすぐらく、カーテンの破れた穴から入るの光には、たくさんの埃がっているのが見えました。


「あのー」


エリカはかぼそい声で声をかけます。


しかし、誰もいないのか、はたまたエリカの声がか細くて聞こえなかったのか、返事へんじはありません。


エリカはキョロキョロとくたびれた大広間を見渡みわたしましたが、とてもじゃないけどこんなところにお姫様ひめさまがいるなんて、エリカには到底とうてい思えませんでした。


そして、薄暗く不気味な雰囲気が漂う城内に、エリカは少しこわくなってきてしまいました。


エリカは一度外に出ようと扉の前まで戻ります。

そして、エリカは頭上の取っ手に手を伸ばして扉を開けようとしますが、全身で押すことでなんとか開いた重い扉も、引いて開けることはとても難しく、エリカは扉を開けることができませんでした。


エリカは向き直って一度大きくいきうと、大きな声でさけびます。



「だれかあああああああああ!!!!いませんかああああああああああ!!!!」



しかし、やはり誰もいないのか返事はありません。


「ドアを開けてほしいのー!」


エリカは続けざまに叫びます。


「電気をつけてー!」


ですが、やはりいくら叫んでも返事はありません。


いよいよ心底しんそここわくなってきてしまったエリカは、怖さをまぎらわすように、その場で大きくあしをあげて行進こうしんして、歌い始めました。


「おばけなんてなーいさ! おばけなんてうーそさ!」


エリカがしばらくの間歌っていると、突然とつぜん、大階段の上から、バンッ!と扉の開く音が聴こえてきました。


おどろいたエリカはビクッと体をねさせて歌うのをやめます。


そうして、エリカが音のした大階段を見上げると、大階段の一番上、大きな扉の前で誰かがエリカを見下ろしていました。


それは、あざやかな色彩の青いはだに、頭の両側りょうがわから生えた二本のつのするどつめのある蝙蝠コウモリつばさに、柔軟じゅうなんやりのようにしなる尻尾しっぽ


そして、濡羽色ぬればいろドレス(・・・)を身にまとった。





うつくしいお姫様でした。

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