第2話
ダンジョン4層だ。
・・・ヤバい。風邪をひいた。
昨日調子よく行ったので、気分良く酒場で飲みすぎてそのまま寝てしまったのがマズかった。
体が寒気でぞくぞくする。関節が痛い。熱でボーっとする。体調が悪い。
だが安心召されよ。このような状態は我が相棒の最も得意とするところ。
我が相棒は、剣身がうっすら青く輝き、柄には色とりどりの装飾が施されている。性能の上昇が外見にも現れているのだ。
俺が剣を振れば、剣筋から何かが飛び出して魔物たちを切り刻んでいく。どうやら風属性の付与が付いて、風の斬撃が飛び出しているようだ。フフ、強いぞ我が相棒。
4層のボスは、キラーマンティス。高さ4mはあるカマキリの怪物だ。
だがこいつも今の俺にかかればどうということはない。相棒を数回振れば、飛び出した斬撃があっけなくキラーマンティスの手足を切り刻み、最後は頭から胴体を縦に真っ二つにして終了だ。
今回、回復薬は飲まない。というより飲んでも意味が無い。ケガや体力は回復するが、病気は治らないのだ。
俺はぼーっと熱っぽい体のまま、ゆっくりと歩んで転移陣に乗るのだった。
◇◇
ダンジョン5層。
・・・ヤバい。風邪が悪化している。
昨日調子よく行ったので、『もうちょっと悪くなったらもっと凄いことになるんじゃね?』などと安易に考えて、薬も飲まずに寝たのがマズかった。
体が寒気で震えるくらいだ。関節がマジで痛い。熱は黙っていても高いのが分かる。体調がすこぶる悪い。
だが安心召されよ。このような状態は我が相棒の最も得意とするところ。
我が相棒は、剣身が青く輝き、柄には金銀をはじめ色とりどりの装飾が施されている。性能の上昇がはっきりと現れているのだ。
俺が剣を振れば、剣筋から斬撃が飛び出して魔物たちを切り刻んでいく。どうやら昨日の風の斬撃がはるかにパワーアップしているようだ。フフ、強いぞ我が相棒。
5層のボスは、グレートタイガー。体長5mはある虎の怪物だ。
だがこいつも今の俺にかかればどうということはない。相棒を数回振れば、飛び出した斬撃があっけなくグレートタイガーの体を切り刻み、最後は頭から胴体を縦に真っ二つにして終了だ。
今回も、回復薬は飲まない。というより今は早く帰りたい。熱で頭がどうにかなりそうだ。
俺は湯気が出そうなほど熱い体を、四つん這いでゆっくりと歩んで転移陣に乗るのだった。
◇◇
ダンジョン6層突入。
実は前回の5層ボス戦から、1週間間が空いている。
あのあと俺はどうやら気を失い、入り口の転移陣に現れた時には意識が無かったらしい。俺が気づいたのは診療所のベッドの上。ボスを倒してから3日後のことだった。
その間に、夢で死んだじいちゃんに会った気がする。
どこかの階段をゆっくり上っているときに、上の方にじいちゃんを見つけ、喜んで階段を駆け上がったら、「バカモノ!」とじいちゃんに一喝、ドロップキックされて階段を転げ落ちた、というとこまで覚えている。
孫に何てことしやがるクソジジイ!実家に帰ったら覚えてろよ。・・・いや、もう死んでいないんだった。まあ、刺激的な夢だった思っておこう。
目覚めた当初、3日間寝ていたせいで体調はかなり回復していたが、まだ本調子ではない。よし、このままダンジョンに突入しよう、と思ったところ、主治医のじじいに卍固めで止められた。
「ワシの目の黒いうちは、患者に無理は絶対させん!」
と言われるがままにあと3日、寝たままで過ごす羽目になった。
しかしあのじじい、無理させないとか言いつつ患者に卍固め掛けるとか本当に医者か?しかもやたら強かったし、俺からギブを取るとは、元魔王か何かか?
結局、診療所を退所した時にはお肌までツヤツヤの超健康状態になっていた。
これじゃいかんと考えてみて、1週間酒を飲んでいなかったこともあり、いそいそと酒場へ繰り出して深酒をすることにした。
そして今、俺は見事に二日酔いだ。
二日酔いの時の相棒は、「あれ、剣が歪んでるんじゃね?」って感じで反り返っていた。まるで東方民族の「KATANA」とか呼ばれる細剣みたいに。
しかしそれでも性能は抜群。それはもう変幻自在の動きをしていた。トリッキーな剣さばきで魔物を翻弄して、相手にペースを作らせないままいつの間にか倒している。そんな動きだった。
その昔、「酔えば酔うほど強くなる」とかいう活劇のセリフもあったように記憶しているが、今まさにその状態だ。酔いすぎて二日酔いだが。
しかし動かされている俺はたまったものでは無い。二日酔いで動き回っては、いろいろと込み上げてくるものがある。
ボス戦(対リッチ)になってそれは顕著になった。もう、少し動いただけでもこみ上げてくるものを止められそうにない、そんな状態だった。
しかし、しかしだ!俺はヒーローなのだ。いかに二日酔いとはいえ、ボス戦の最中にリバースしたとあっては、文字通り”汚”点になってしまう。
俺は神に祈った。じいちゃんにも祈った。元魔王(仮)のじじいにも祈った。
(早く終わってくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ。)
祈りの甲斐あってか、俺はついにリッチを倒すまではリバースすることなく耐え切った。リッチを倒すまでは。