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転生を繰り返した私。今世も穏やかな人生を希望します。  作者: 吉井あん
第5章:ハッピーエンドはすぐそこに。
68/73

68.イーディス様はとにかく可愛い。

 ドレスが届くまでの1週間。


 のんびり過ごせるのかと思っていたのですが、違いました。

 やはり、イーディス様にはお考えがあったのです。


 朝食の時に、さらりと、まるでデザートを決めたかのように、『カイル殿下主催の舞踏会を開催する』とおっしゃるのです。


 しかも10日後に。


 舞踏会の準備期間としてはあり得ない短さです。

 舞踏会は晩餐会も併せて行われます。


 ですので午餐会やただの晩餐会とは異なり、一ヶ月以上前から入念に備えるのが普通です。



(それを10日でって……地獄のような忙しさになりそうね)



 私は胸の中でため息をつきました。


 ご主人様がお望みになられるのなら、例えただのワガママだとしても、使用人は受け入れる以外の選択肢などありません。


 イーディス様は侍女たちの戸惑う眼差しを気にすることもなく、朝食の冷肉を一かけら口に含まれ、ゆっくりと飲み込まれます。


 そして事も無げに「そんなにたくさんの人は招かないから大丈夫よ」と頬を緩めました。


 そうは言っても……。


 舞踏会です。

 客ではなく主催者なのです。

 舞踏会を開催するのは大変な労力が必要です。


 ですが、不幸中の幸いとでも言いましょうか、今はバカンス中です。

 そして何よりここはリゾート地。


 招待するお客様もかなり絞り、限られた人だけのシークレット舞踏会(でも社交界の皆に知られている)となるのだそう。

 プレミア感が半端ない催しとなりそうです。これは絶対に社交界で大評判になります。

 また招待状依頼合戦が起こりそうです。



(めっちゃ面倒くさそう……)



 心の声が漏れ出しそうになり、慌てて口を押さえます。


 イーディス様は私の葛藤を知ってか知らずか、チラリとこちらを見て、また食事を口に運ばれます。



「急だけれど、もう執事と女中頭には伝えてあるの。全ての準備は彼らとカイル殿下の侍従たちに任せればいいわ。あなたたちは、そうね。私と自分のことに集中してちょうだい」



 またしても!

 蚊帳の外ですか!


 執事や女中頭、カイル様の侍従には通達済みなのに、側近である侍女(私たち)には秘密にしていただなんて。


 いつぞやの午餐会の時もそうでしたけど、ひどくないですか?

 お仕事がほとんどなくていいのは結構なことですけど!



「イーディス様、せめて事前にお話をいただきたかったです……」



 私は思わず愚痴をこぼします(今回は止めません!)。

 だって侍女なのに、何にも知らされていないなんて、信用されてないということではありませんか。



「あら。怒ってるのね、ダイナ。ごめんなさいね。でもカイル様が強くご希望なさったの。向こうで全てしてくださるらしいのよ。私やダイナは自分の衣装のことだけ考えればいいとおっしゃってくれているわ。……許してくれるかしら?」



 イーディス様は上目遣いで凝視されます。


 あぁもう。

 こんなに可愛いイーディス様を許さないはずないじゃないですか!



「あのラファイエットのドレスはこのためだったのですね?」


「うふふ。バレちゃった?」


「……最初からおっしゃってくださればよろしかったのに」


「それじゃあサプライズにはならないでしょ」



 従業員にこんなサプライズは要りません。


 侍女として参加の舞踏会は遊びではありません。仕事です。


 体の準備もですが(お肌や髪の手入れがいるのです!)、それに付け加えて私には心の準備が必要なのです。


 だって私、大した見た目ではないのに、オーウェンと縁着いたために世間で話題の人物なのですから。

 

 イーディス様にお仕えしていることも新聞に記されていたので、どんなに招待客が少人数であっても注目を浴びることは間違いないのです。

 私が失敗すれば、オーウェンだけでなくイーディス様ひいては王族にも恥をかかせることになります。


 でもイーディス様は本当に嬉しそうになさっておいでなので、こんなこと言えません。



(容姿は無理でも、せめてもう少しお肌の調子を上げてからがよかったわ)



 規則正しい、ゆったりとした生活で、荒れ気味だったお肌もだいぶ回復してきてはいますが。完全ではありません。

 ちらほらニキビも……。


 今からでも間に合う……はずがないじゃないですか。



「あら、ダイナは見た目を気にしてるの? あなたはとっても可愛いわ。そんなニキビくらい気にすることないわよ」



 私は手にしたティーポットを落としそうになります。

 ちょっと見ただけでニキビのせいってわかっちゃうくらいなのですね、今の私の肌状況。落ち込みます……。



「……気にいたします。私はイーディス様と違って人並みなのです。努力しないと綺麗にならないのですから。この肌で舞踏会にでよ、はこくというものです」


「うーん、そうなのねぇ」



 イーディス様は執事を呼ぶと、何やら指示を出されました。



「じゃあ、肌の手入れしましょ。ダイナと、そうね。あなたたち侍女全員まとめて一緒によ」



 え、太っ腹?

 どうしちゃったのでしょう? イーディス様……。

68話をお送りします。


もう少しでダイナのお話も終着です。

最後までお付き合い下さいね。


ブクマ、pvありがとうございます!

とても嬉しいです。 

制作の活力です!


では次回もお会いしましょう。


お知らせ

明日の更新は多忙のため、お休みします。すみません……


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