表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/73

64.私が幸せにします。

「ベネット男爵夫人。覚悟など()うの昔に決めています。ダイナは私が守ります。私は父でも母でもない。彼らとは違う人生をおくりますよ。ご安心ください」



 オーウェンは言い切りました。

 迷いなく、キッパリと。


 オーウェンの言葉に心臓が破裂しそうです。


 私の好きな人は、なんてかっこいいんでしょう?

 元々イケメンですけど、なんだか今日は100倍は輝いて見えます。

 これは惚れた弱みの錯覚ではないとは確信しています!



「そう。そこまでいうなら、歓迎するわ。というかお相手がアメリア様の残された御子(おこ)ですもの。反対する理由もないわね」



 お母様は冷えたお茶をボウルに捨て、新しいものを注ぐと、オーウェンと私の前におきました。



「ダイナを大切にしてくれる人が現れてよかったわ。ダイナは年のわりに老成してて可愛げがないでしょう? だから男性に望まれる子ではないと思っていたの。子供の頃から、何百年も生きた年寄りみたいな雰囲気があるのよ」


「ね、ちょっとお母様!」



 思わず私は声を荒げます。


 年頃の娘に対して、すごくひどい言いぶりではないですか?

 可愛げがないとかなんとか。


 ここまで思ったところで、ふと疑念が生まれます。



(もしかしてお母様、何か気付いてる?)


 まさか。まさか?



「お、お母様。その言い方、ひどいわ。私はまだ10代よ」


「あら、そうかしら? あなた昔からどこかしら達観したところがあるじゃない。アンやジェフリーとは違って、何をしても冷めてて、いつも子供らしくないと思っていたのだけど。自分では気付いていなかったの?」


「いや、その」



 お母様のおっしゃる通り、三歩くらい下がったところから見る癖はあります。


 だって人生色々知ってます。

 むしろ知りすぎています。

 人生7回目ですもの。


 むしろ人以外の人生? 鹿生?も経験しています。

 この世界では誰よりも経験豊富であるということは自信があります。



(でも誰にも前世のことは言ったことがないのに……)



 生まれ変わりとかの概念が、この世界にはありません。

 ですので他人に転生したと言ったところで、頭がおかしい変人扱いされるだけなのです。


 平穏無事で生きるのが目標なのに、そんなリスキーなことできません。


 それにお母様はぼんやりしているように見えて、私のことはわかっていたところに驚きます。


 親として当たり前というところでしょうが、ほったらかしにされていたという認識しかなかったので、とても意外です。


 私はしどろもどろになりながら応えます。



「私、ずっと、し……しっかりしなきゃって思ってたから……。だって私がやらなきゃお家は回らなかったでしょう?」



 く……苦しい言い訳です。


 けれど、これ、大きく間違ってはいません。


 おおらか系の母と思い付いたら走っちゃう系の父、そして後継様な俺様体質の兄と姉。幼い妹と弟たち。


 誰かが常識を持っていないと、家族が空中崩壊してしまう危うさは常にありました。


 前世の記憶がある分、頑張りすぎてしまっていたというところは失敗だったかもしれませんね。



「ごめんなさいね。ダイナ。お父様とお母様が不甲斐ないせいで、幼いあなたに苦労させすぎちゃったのね。家族のために子供であることを捨てて、大人にならなければならなかったということでしょう。あなただけに苦労を背負わせてしまった」



 お母様はショゲながらおっしゃいました。


 正直、反省するの遅すぎません?って思ってしまいますが。

 もっと早く手を差し伸べてくださったら、今よりも気楽な人生であったのかもしれないのに。


 ですが。

 ものすごく、ものすごーく誤解されていますけど、頭おかしい子と思われなかったことだけは結果オッケーです。


 奇人変人扱いは、平凡な人生には必要ありませんもの。


 べそべそ言い始めたお母様を慰めようと声をかけようとした時、オーウェンが私の肩を強引に抱き寄せました。



「男爵夫人。これからは私がダイナを支えますので、ご心配なく。苦労はさせません。この国で一番の幸せな女性にしてみせます」



 あれ?

 オーウェンがきらきらしてる。

 ああ、きらきらしすぎてる。


 というかここまできらきらすると胡散臭すぎる。

 オーウェンは私の瞳を覗き込み、口元にちらりと笑みを浮かべます。



(やっぱり。わざとね)



 でも、夢見心地の中年女性には効果てきめんのようです。

 お母様が頬を赤らめて(いやなぜ赤くなるのよ、お母様?)、



「あら、そう。心強いわ。お願いね、オーウェン君。ベネットはこの有様だから何にもしてあげれないのだけども……」


「全て任せておいていただいて結構です。ダイナは身ひとつでライトに来てくれさえすればいいのです。絶対に後悔はさせません」


 オーウェンは爽やかに宣言し、お母様も満足そうに頷きました。


 商家仕込みの話術にやり込められた気もしないでもないですが。

 とりあえず無事にミッションクリアかな?

64話目をお送りします!


たくさんのpv、ブクマありがとうございます。

嬉しすぎです。


皆様に多謝を。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ