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54.悪役令嬢にジョブチェンジ。

すこーしザマァです!

 いつもは口ごたえなんてできる身ではありません。

 が、今日は貴族としてここにいるのです。これ以上黙ってはいられません。私が口を開きかけると、



「メリッサ。そのくらいにしておきなさい」



 おっと?


 横槍が入ります。

 メリッサ様の婚約者バージル様のようです。



「言葉がすぎるよ」



 バージル様はメリッサ様を優しくたしなめました。


 これまでバージル様は、どちらにつくでもない中立な態度をとっていらっしゃったのですが……って言えばよく聞こえますが、歯に衣着せぬ言い方だと、どっちつかずの優柔不断でした。


 女性のマウントの取り合いに参加したくない、というのもあったのかもしれません。


 けれど、貴婦人らしからぬ下品ともいえるメリッサ様の横柄っぷりに、耐えられなくなったのでしょう。


 私からすれば「おせぇよ!」なのですが。

 バージル様とメリッサ様の力関係上、仕方のないことなのかもしれません。


 そもそも名門侯爵家の跡取り息子と成り上がり伯爵令嬢の婚約は、政略的に成されたものでした。


 メリッサ様の強いご希望もあったとのことですが、ウォード家の持参金と莫大な資金目当てではないか説が有力です。

 ヒューズ家は裕福ではあるものの、南方の領での投資が失敗し、かなりな額の負債を抱えているのではという噂が数年前に流れたこともありますし。


 バージル様とメリッサ様を目の前にすると、真実なんだろうなっと思います。

 火のないところに煙なし、ですしね。



「バージル様、お止めにならないで!」



 メリッサ様は上目遣いに婚約者を見上げ(びっくりするほど愛らしいですよ!この方!おそらく、おそらくですが、これ計算済みです)、



貧乏な家の娘(こんな人)がオーウェンの嫁に、私の義妹になるのよ? 教育も受けていない卑しい人と親戚になるなんて嫌だわ」


「メリッサ、落ち着きなさい。オーウェンは父上の子ではあるが、ヒューズの籍に入れられてはいないのだから、公的には私と兄弟ではない……ヒューズ(うち)とは関係ないんだ。オーウェンがどんな女性を選ぼうと、メリッサが心を悩まされることではないよ」


「でも、バージル様の異母弟(おとうと)だわ」


「そう。オーウェンは腹違いだ。だからヒューズの人間ではなく、平民のライトの人間なんだ。気にすることはない」



 故にヒューズには関係ない、ということですか。

 ひどいおとしようですね。


 スキャンダルの末に生まれたオーウェン。


 当主の子であるが故に、表立って何かを言われることはなくとも、こうやって影では虐げられていたのでしょう。


 赤の他人、しかもほぼ初対面(使用人の時に何度か顔を合わせていますが、貴族にとっては使用人は空気のようなものです)の私に、ここまでいうということは、日頃からこの扱いをオーウェンは受けてきたということです。


 ふつふつと腹の底で怒りが湧きます。

 と同時に、オーウェンへの尊さが胸に溢れてきます。


 幼い頃からそんな環境で育ったのに、メンタルがやられずに生きてるって、贔屓目に見ても立派じゃないですか!

 天使ですか?!

 私の好きな人は大正義じゃないですか!


 

 ――だから、許せない。


 

 私は服の上からそっと金鎖に触れ、背筋を伸ばします。



「メリッサ様。ありがとうございます。おかげさまで、オーウェンがどれだけ素敵な人かというのを、再確認いたしました」


「は?? あなた何を」



 今までの話、聞いてなかったの?とまじまじと見るメリッサ様を完全無視し、私は手のひらを自らの胸に当てました。



「オーウェンのお顔(ルックス)は皆様ご存知でいらっしゃる通りに、社交界で一番……いいえ、この国でもトップではないかと思うほどに素敵でしょう? それに加えて不屈の魂も持ち合わせているだなんて。こんな最高な人、どこを探してもいませんわ」


「だから、何だっていうのかしら」


「お分かりになりませんか?」



 私はおもむろに扇子を広げると、メリッサ様に顔を寄せ、誰にも聞かれないように、あえて小声で言いました。



「ライトは政商ラーケンの分家。ウォード家がどれだけご立派かは分かりかねますが、ライト……いいえ、ラーケンに敵うと思っていらっしゃるのならば、おめでたいなぁと思ったまでです。ほんと驚きました。カイル殿下と血が繋がっていらっしゃるだなんて、信じられない」



 目には目を!

 嫌味には嫌味でお返しです。

 まぁ私の言ったことは間違いではありません。


 イーディス様の教育を受け始めて、改めて知ったのです。

 オーウェンが継ぐライト家は平民ではあるけれど、貴族だけでなく王家をも凌ぐ力を持つ家門である、ということを。



「ちょっと、ダイナ・ベネット! あなた……」


「メリッサ様。私、貧乏ですが、それでもオーウェンは良いと言ってくれるんです。愛だけあればいいと。これ以上、結婚に何が必要なのでしょう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「……なんてことを!!!」



 メリッサ様が声を荒げ、立ち上がりました。

54話をおおくりします!


ダイナ、強し!!ですね。

さすがです。


ブックマーク、評価ありがとうございます。

執筆の励みにさせていただいています。

頑張って書くぞ〜(^∇^)ノ


次回もぜひ読みに来てくださいね!

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