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49.甘い囁きは未来への道しるべ。

「オーウェン、それって……」



 あれですよね?

 私は期待を込めた眼差しを送ります。



「あ、あぁ。それはいずれ、ね」と奥歯に物が挟まったように言うと、オーウェンは再びハグします。


 めっちゃ誤魔化した!! と私は心の中でツッコみ、脱力してしまいました(でもハグは歓迎です)。



「いずれって……」



 ……プロポーズかと思ったのに。


 てっきりそうだと思ってしまったではないですか!!

 というかそれ以外に何の意味があると言うのでしょう。“一緒に暮らす“ってそう言うことでしょう??


 早とちりですか、まさかの!

 まさかの……。


 一人、一瞬にして天空彼方まで舞い上がっちゃったじゃないですか……。



「オーウェン、思わせぶりなこと言わないで。すごく期待しちゃったじゃん」


「うーん。思わせぶりでもないんだけど。()()()、って言っただろう? 今じゃないだけ。その時が来たらちゃんと申し込むよ。……そうだな。景色のいい庭園かどっかで、薔薇の花束抱えて、ひざまずこうか?」


「ふふ。うん、そうしてもらおうかな」



 私とオーウェンは目を合わせ声をあげて笑い合います。


 いずれってことは、不確かな未来ではあるけれど、オーウェンにその考えがあると言うことです。


 オーウェンの気持ちが私に向いていること、勘違いではありませんでした。

 本当によかった。私の一人相撲じゃなかったんだ。

 

 それにオーウェンは私がロマンス小説を読んでいたこと(そしてヒロインに憧れていたこと)を覚えていてくれました。

 なんて素敵な彼氏なのでしょうか。


 ただ一つ。

 疑問は残りますが。



「でもどうして一緒に暮らそうって言ったの?」


 

 そうなのです。

 オーウェンのことですから、何か理由があって誤解するような言い方をしたのではないのでしょうか。



「……それはね、ダイナ。イーディス様もご結婚なさって、王宮に上がられるだろ。いい機会だしさ、侍女を辞めて他の仕事してもいいんじゃないかって思ったんだ」


「侍女を? やめちゃうと私、困る。お給金もらわないと生活できないし、仕送りもしなくちゃいけないの。それに住むとこも無くなっちゃうわ。次の日から路頭に迷うのは困る」


「だから、ね」



 オーウェンは私を抱き抱え、机の上に下ろします。



「ライトで働かないか? 住むとこも心配しなくていい。うちはやたら広くてね。空いている部屋ならいくらでもある」


「え。ライト家で?」



 オーウェンの家は裕福な家ですから、豪邸でしょうし、使用人も沢山いるのでしょう。

 ということは私の仕事は女中メイドか侍女でしょうか。


 うーん。それならば慣れたイーディス様のおそばに仕える方が気が楽です。


 侍女は主人との相性が全て。

 イーディス様から離れ新しい主人と関係を一から作り上げていくのは、気が進みません。

 

 なにせイーディス様は最高の主人なのですから。こんな方、どこにもいらっしゃらないでしょうし。


 それに!

 

 好きな人の家の使用人だなんて、嫌です。

 主人に恋する身の程知らずな侍女とか、周りに見られるのって惨めですもの。


 オーウェンは私の前髪をかき上げ、額に口づけをします。



「どうかな? ダイナ」


「どうかなって。あまりに急で驚いてる。イーディス様について宮に上がるつもりだったから……。オーウェンの家のどなたにお仕えするの?」


ライト(うち)に仕えてもらいたい女性はいないよ。ダイナにしてもらいたいのは侍女の仕事じゃない」



 侍女ではない仕事。

 どんな仕事でしょうか。私には思いつきません。

 


「俺の仕事、手伝ってくれないかな。信頼できる人にしか任せられないんだけど、ダイナならぴったりだと思うんだ」


「ライト家の家業を手伝うの? 私、侍女しかしたことないの。務まるの?」


「十分務まるさ。給料もしっかり払うよ」とオーウェンは私の耳にキスをし、さらりと金額を告げました。


 侍女の2倍の給金です。


 それだけあれば実家に仕送りをしても十分手元に残ります。残るどころか、月に一度くらいは『黒い山羊亭』でちょっとした贅沢だってできるかも!



「どうする?」



 正直迷います。

 金銭的にはお断りする理由がないのですが、職場や生活環境を考えると素直にはいと言えないところです。


 未婚の女性が主人と一つ屋根の下に暮らすこと。

 その意味がわからないほど、子供ではありません。

 厳しい立場にいるオーウェンのかせになるのだけはごめんです。



「それとね。ダイナ。これが一番重要なんだけどさ」



 迷いを察したオーウェンは、触れるか触れないかの手つきで私の唇をなぞり、



「俺がただダイナと離れたくないだけかも。この数ヶ月、ダイナと連絡が取れないことも、会えないことも辛くてさ。そばにいてくれたら、俺嬉しいんだけどな。絶対に辛い思いはさせない。……だめかな」



 だめ……なはずないじゃないですか!!!

 

 オーウェンのこのイケメンの圧には抗えません。

 手玉に取られてる気がしてなりませんが、うん、いいんです。


 だって相手はオーウェンですから。

49話目です!


ダイナもオーウェンも、もう結婚してしまえばいいのになんて思ってしまいますが笑


ブックマーク評価ありがとうございます!

めっちゃ嬉しいです。

完結目指してがんばります!


ぜひ!次回も読みに来てくださいね。

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