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42.僕と結婚してください。

 ネイサンさんは結婚=戦略って考えている人です。

 誇れるものは男爵位だけの私と結婚を考えるなど、ありえないことです。


 何せ年収1万ダリルの男(ちなみに私は年収100ダリルです!)。

 

 資産は増やすもので、減らすものではないのです。

 持参金も用意できないほどの財政状態の我が(ベネット)家という負債は負わない方がいいってことは、子供でもわかることです。


 だから本気でプロポーズをする気など、さらさらないはずです。

 要はからかっているってことですね。

 この忙しいのに、忌々しい!


 私は気づいたら手紙を握りしめていました。


 執事さんは眉をあげ、



「で、ダイナはそのネイサンさんと結婚するの? 仕事辞めるなら早く言ってね。人員補充しないといけないからね」



 3年勤めたのに冷たくないですか?

 まぁ侯爵令嬢の侍女なんて買い手市場で、よりどりみどりなんでしょうけど。


 でも!

 ネイサンさんとは結婚しませんし。

 仕事もやめません。



「執事様。私はネイサンさんとは結婚しません。そもそも彼にその気はないはずなんですよ。それなのに、なぜ結婚したいって手紙に書いたのか、理解できません」


「ダイナはそう言うけど、人の心なんて分からないものさ。お相手は本当に結婚したいと思っているかもしれないよ」


「そんなこと……」


「あるかもしれないでしょ。来週、半日お休みを取れるように、イーディス様にお伝えしておくよ。ダイナはよく仕えてくれるからね、お許しくださるはずだ。休んで会いに行くといい」


「え、ちょっと、それは……」



 貴重な休みを!

 ネイサンさんの為に消費するなんて!


 ……でも、求婚の返事を手紙でするのも違う気がします。

 どっちにしろ顔を合わせて話をしなければならないでしょう。

 ネイサンさんの真意を問いただしておきたいですし。

 ことは早い方がいいです。







「それで早速会いにきてくれたんだ。ダイナさん。嬉しいよ」



 ネイサンさんは満面の笑みで言いました。

 私は一気に茶を飲み干します。



「違うわよ。呼び出した理由、分かっているでしょう。むしろそれ以外でネイサンさんに会う理由があるわけないでしょう?」



 最近できたという上流階級専用のティールームの一角で、私はネイサンさんと対峙中です。

 あの手紙の最後の一行の意味を答えてもらうために。



「ネイサンさん。プロポーズは冗談で言っていいことではないと思うわ」


「冗談じゃないんだけど? 僕に嘘はないよ」



 ネイサンさんは身を乗り出して、



「結婚してくれ、ダイナさん」



 と囁きながら私の手を握りました。


 甘く低く響く声とネイサンさんのそれなりに整った容貌に、私は揺らぐ……はずがありません。

 女性を数値でしか見ない男の人に、ときめきが生まれる余地がどこにあろうかと。


 思わせぶりに近づいたと思えば、まだ18歳の私に、年寄りを紹介しようとした最低な男が、ネイサンさんです。

 しかも従姉妹のメアリーに対しても条件だけで結婚を迫った過去もあります!(さらっと振られましたけどね)


 私が受け入れることがないってこともわかっているくせに、図々しいというか太々(ふてぶて)しいというか……。


 正直、虫唾が走ります!!!



「お断りします。気持ちのない求婚には応じたくないわ」


「気持ちがないって、愛情がないと言うことかな? それはひどくないか」


「ひどいも何も。真実でしょう。私を愛していないくせに。そもそもネイサンさんは、結婚は愛情よりも条件だと言ってたじゃない。なぜ何もない私に求婚したのよ」



 ネイサンさんは握った私の手を、自分の頬に当てました。

 その目はまっすぐに私を捉えたままです。



「何もないからだよ。ダイナさんは実家に資産もないし、こう面と向かって言うのは気が引けるけど、特別美しいわけでもない。でも心根は綺麗だ。真心を持って人に接しているところがね。好感が持てたんだ」


「たったそれだけで? 呆れた……」



 あれほど金だ何だ言ってませんでしたっけ。

 心変わりだなんて。今更です。

読んでいただきありがとうございます。


今回は少しばかり短めになりました。


ブックマーク評価、とても嬉しいです。

次回も読みにきてくださいね。


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