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転生を繰り返した私。今世も穏やかな人生を希望します。  作者: 吉井あん
第2章:アーティガル祭と薔薇の約束。
19/73

19.お願いですから、巻き込まないで涙

 お祖父様のお宅に、しかもこの時期に赤の他人が滞在しているとは思いもよりませんでした。


 でもよく考えてみたら、というか正確には私もベネット男爵家の人間ですし、ネイサンさんと同じ立場。

 客人同士で従兄の友人と親交を深めてもいいのかもしれません。

 が、何故だかわかりませんが、ネイサンさんとはあまり関わり合わないのが吉という気がします。



 だって先ほどから一瞬も途切れずに送られる従姉妹のメアリーのネイサンさんへの熱い視線。


 この意味が分からないほど鈍くはありません。

 メアリーはネイサンさんを狙っているのでしょう。


 確かにネイサンさんは結婚相手としては悪くありません。というか最適です。

 客観的にみても容姿は整っていますし、ジョンの同級生ということは家柄も良さそうです。

 メアリーとは階級的にも釣り合いが取れていることでしょう(ネイサンさんが貴族であれば玉の輿です!)。


 メアリーもお年頃。

 花婿候補として誰かに奪われる前に、奪ってしまいたいのかもしれません。


 でも私には関係のないことです。

 むしろこの休暇を全力で楽しむつもりなので、他人の面倒ごとには巻き込まれたくないのです。

 メアリーの幸せは心から願っていますが、こちらはそっとしておいてほしいのが本音です。


 と思いながら、黙々と朝食を口に運びます。

 1秒でも早くこの部屋から退散したい。

 あと冷肉が一口……。



「ダイナさん」



 ネイサンさんが私に明るく話しかけてきました。

 こんな時に!



「今日はこれから、どうなさるおつもりですか?」


「そうですね。朝食後、荷解きしてから西の広場に行ってみようと思います。祭りの市が出ているので買い物をするつもりです」



 祭りの間、東西南北にある大広場には、各地から集まってきた行商人たちの露天市が開かれます。

 アーティガル祭の期間は、お祭り価格というのでしょうか、日常品は値上がりしてしまうのですが、行商人の露天だけは当てはまりません。


 産地直送の質の良い品物を破格で販売するのです。


 侍女のお給金から実家へ仕送り分を抜いた僅かなお金でも、満足のいく買い物ができるチャンス! なのです。

 物価の高い首都で思うように買い物ができるのは、この祭り位しかありませんから正直必死。


 ちなみにこの間ダメにされたオレンジ色のデイドレスの生地も、この祭りの露天商から買ったものです。

 あぁちょっと嫌な気持ちを思い出してしまいました。

 まったくネイサンさんのせいです!



「西の広場ということは、繊維市ですね。ドレスの生地か何か買われるのですか? それとも意中の方への贈り物用の……?」



 ネイサンさんが妙に食い気味に訊いてきます。


 さらに彼氏の存在も探ってきているような。

 初対面というのに、何て失礼な方なのでしょう。

 やっぱり『関わり合わない』が正解のようです。



「ネイサンさん。ご心配ありがとうございます。今回は男性の為ではなく、自分に必要だから買いに行くのです。デイドレスを新調するつもりなので、生地を買う予定です。あとドレスの生地に合わせてリボンも揃えるつもりです」


「デイドレス。それは良いですね。今年は可愛らしい感じのデザインが流行っていますから、ダイナさんにもきっとお似合いになるでしょう」


「ありがとう」



 話したくもない異性の会話がこれほど苦痛だとは思いませんでした。

 お祖父様とも叔父様とも話していないですが、さっさと食事を終わらせたほうが良いようです。


 私はネイサンさんに話しかけられ食べ損なった冷肉の最後の欠けらを、口に放り込みました。

 ナプキンで口を拭い、お祖父様にお暇を告げようとした時、



「ねぇ、ダイナ」



 今度は誰?!

 私は声の方に勢いよく振り返りました。


 私とよく似た顔立ちでありながら、私よりもずっと華やかなメアリーが、頬をほんのり赤らめて、上目遣いでこちらを見つめています。

 あぁ、ほんと運がない……。



「メアリー。どうしたの?」


「その買い物、私も一緒に行っても良いかしら?」



 かすかに甘えた声色でメアリーが言いながら、両手を合わせます。

 ここで断れば家主の孫娘を無下にした極悪非道になってしまいます。

 断れないように私を導いたメアリーの手腕は、見事としか言いようがありません。



「……ええ。構わないわ」


「嬉しいわ。でも、女二人だけで市場なんて危ないと思うの。国中から無頼な方たちが来るでしょう? だから、ネイサンさんにも同行をお願いした方がいいんじゃないかと思うの。いかがかしら、ネイサンさん?」


 いや。女だけで大丈夫だから。

 むしろ一人でも平気だから!


 チラリとネイサンさんの顔をみます。

 ネイサンさんは嬉しそうに頷きました。



「喜んで同行させていただきますよ。お嬢様方」



 あぁもう!

 メアリーは余計なことしかしないんだから!!

19話をお送りします!


ブックマーク評価ありがとうございます!

めっちゃ嬉しいです。

感想もお待ちしております。


では次回も読みにきてくださいね!

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