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転生を繰り返した私。今世も穏やかな人生を希望します。  作者: 吉井あん
第2章:アーティガル祭と薔薇の約束。
17/73

17.デートのために、がんばります。

 オーウェンの言う祭りとは、英雄であり伝説の騎士を讃えたアーティガル祭のことです。


 起源はこの国(ヘリフォード)ができるよりもずっと昔……というよりも、ほぼ神話の時代に遡ります。

 

 当時、大地にはいろいろな生物が穏やかに暮らしていました。

 ところがある日、気まぐれな男神の悪戯により作られた巨人族が天から降臨すると、瞬く間に大地は彼らに支配されてしまったのです。


 大地には私たちの先祖も存在していましたが、小さく脆弱でしたので、巨人の格好の標的でした。

 人間は虐げられ、巨人族の奴隷とされていたのです。


 その後、長く辛い日々が何千年も続くことになります。


 そして苦しみから人類を解放するために現れたのが、騎士アーティガルです。

 妖精の血を引くアーティガルは、女神や妖精の力を借り、大地から巨人を一掃しました。


 そうして大地は人のものになりました。

 巨人族の討伐が完了したのが、ちょうど今の時期、晩秋の収穫期と伝えられています。


 昔はアーティガル祭と収穫祭は別祭でしたが、現代ではアーティガルを讃える祭りと収穫祭を合わせて行うようになりました。


 ですので、この1週間は国中がお祭り一色!

 王侯貴族も庶民も皆が皆、祭を楽しみます。



 ただし。

 悲しいことに、私たち召使い(特に上位使用人)はその限りではありません。


 だってお貴族様は自分のことは何一つできない方ばかりなのです。

 着替えることもできませんし、靴紐すら結べません。トイレのお世話をさせる方もいるほど。

 生活の全てが使用人任せなのです(我が家は貧乏でしたので、専属侍女(レディメイド)をつけてもらうことは叶いませんでした。姉妹兄弟で侍女は一人だけ。ですので、身の回りのことはそれなりにできるのです。ありがたいことです)。


 自分たちの生活に支障が出ると困るということで、召使いの休暇はご主人様の気分次第。

 お仕えする家による、ということになります。


 私の仕える侯爵家では、祭りの期間、使用人は1日だけは休んでいいと決められています。

 ただ日程はお仕えしているご主人様都合で指定されます。


 例年はそれでも不都合はなかったのですが、今年はオーウェンと約束があります。


 しかも、ただの約束ではありません!!

 二人だけのデートなのです!!


 是が非でもお休みを合わせたい……。

 なんとしてでも合わせたい……のでダメもとでイーディス様に相談してみることにしました。


 イーディス様はお優しい方ですが、雇用者と被雇用者の区別はきっちりなさる方です。ですので私の勝手なお願いに対し否を選択する可能性も高いのです。

 少しでも可能性を上げるために、イーディス様のご様子を伺って、話を持ち出すことにしました。

 

 イーディス様の一番ご機嫌の良い時間を見計らい(先日カイル殿下から送られた野薔薇の鉢植えのお世話をなさっている時です!)、私はおずおずと休暇の願いを口にすると、イーディス様は柔らかに頷かれました。



「いいわよ。ダイナはよくやってくれているから、今年は明日から祭りが終わるまで暇をあげるわ。楽しんでいらっしゃい」



 と快くお受けくださったのです!

 1日だけではなく、1週間まるごとです!

 なんとお優しいのでしょうか。


 日頃の行いは大事ということですね。

 いいえ、カイル殿下の野薔薇効果のおかげでしょう。


 他の侍女仲間からは白い目で見られましたが(彼女たちはお休みは1日だけなのです)、ともかくお休みはいただけることになりました!


 祭りの後が怖いですけど……。


 でもまぁ、オーウェンと祭りを楽しめるのですから、どんな嫌がらせにも耐えられるでしょう。

 それに残された他の侍女さんたちも、イーディス様のお供で上流階級のパーティーに参加することができるでしょうし、損はないはずです。


 私は浮き立つ心を必死に押さえつけながら、明日からのお休みの準備に励んだのでした。

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