騎士科編:学院2年生春②どうも女神です
「アリスン。めっちゃ強いじゃないか?!なんで?」
とハスウェルが駆け寄ってきた。
だよね〜。今までやんちゃなお嬢だっただけだもんね。
そりゃ、びっくりするよね。
「あ〜、家の私兵団の稽古を見様見真似?しててね。
一時期、太ってたから痩せようと素振りを始めたらハマっちゃってさ。
今でも良くするんだ。それでかな?」
「そっか、毎日きたえてたんだな。俺と一緒だな!」
うん、こんな理由で納得してくれるなんて素直でバカなんだな。チョロいぞ。
「本当にすごいですわ。同級生の中では、群を抜いてますわ!!惚れ惚れしましたわ。」とキャスも興奮して声をかけてきた。
ん?なんかすごいうっとりしてるぞ。
なんか周りに花背負ってる気がする...。
百合か?百合の雰囲気がするぞ。えー、無理。
「ありがとう。キャスも選抜入りおめでとう。」と、感情を殺して答えた。
私、ノーマル!!ノーマル愛好家です。
キャスさん、たくさんイケメンいるよ。
ほら、参席のアイザックなんてどうかな?
これからの成長が楽しみだよ!?
キョロキョロとアイザックを探してみたら、ちょっと離れた場所からブツブツ何か言いながらこっちを見ているアイザックを発見した。
ん、なになに?
『...ありえない...。あんな動き...。なぜ?どうして..。』と、アイザックは真っ直ぐこっちを見つめて否定的な言葉を紡ぐ。
あー、プライド傷つけちゃったかな。
ちょっと怖い、ブツブツ言うイケメン。
これで顔がブサイクなら、近寄りがたい陰キャラだぞと思っていたら、アイザックがズンズンと近づいてきた。
ズシャッァァァ
ヘ?
「その赤い燃えるような髪の毛!
まるで、聖なる夜にふさわしいポインセチアの妖精!」
アイザックがものすごい勢いで片膝をついて見上げてきた。(まるでロミジュリみたいだ。)
「流れるような無駄のない動きがまるで天上から舞い降りた女神の舞のようでした。私のような下賤の者には到底理解ができない輝きが貴方の周りに絶えず煌めいている!」
なんか斜め上の性格の男が来たァァァ。
えっ?残念なイケメンですか。
「貴方のその金茶色の瞳孔は、よく見てもボヤけてしまい特徴がとらえられない。
だが、そこがミステリアスで美しい!」
はい、私のあるんだかないんだか特徴のない目に最大限の賛辞をくれてありがと...。
「女神が先生の剣を弾き飛ばした後の笑みは、荘厳で雅!
私は思わず衝撃で身体が震えました。
私の女神よ、お側に侍る権利をください。」と一息で家臣宣言をのたまった。
アイザック、とりあえず名乗ってくれ。
見てたから名前知ってるけどさぁ。
「えっと、私の名前はアリスンだよ...。
侍られると困るから友達になろうね?王女の護衛をしてるから、アイザックも手伝ってくれるといいな。」と私はアイザックの勢いにちょっと怖気つきながらも手を握った。
アイザックは幸せそうだ。
顔を引きつらせながらハスウェルは呟いた。
「うわぁ、あの不敵な近寄るのもゾッとする笑みを、素敵フィルターを通すと荘厳でみやびになるのか....。
すげぇな、俺と見ているものが同じなはずなのに全く違うものに感じるぜ。」
激しく同意するよ、ハスウェル!
キャスは、うんうん首振り人形のようにアイザックに同意して
「そうです!アリスンは、戦女神なのです。」とキラキラと私を見つめてくる。
脳外科と眼科に行った方がいいよ、キャス!
かるくカオスだ。
あー、コンラッドが恋しい。
常識人がいないと疲れる...。
とりあえず、騎士科初日に私の心酔者が2名できた。
前途多難な気がするよ...。