義父との別れ
「お前たちは立派に強くなったと思っておる。もう大丈夫だ。」
私たちの育ての親であるユウイチ・トウドウが私たちに告げる。
彼はもう85にもなる。人間の寿命だ。
「お義父さん。死んじゃやだぁ!」
メルアが泣きじゃくりながら、お義父さんにしがみつく。
「私たちにもっといろんなことを教えてよ!」
マイハも泣きながら、お義父さんに言う。
私も今は泣いている。ただひたすらに泣いている。
「こらこら、私はもう年なんだよ。アエリアならわかっているだろう?それにそんなに泣かれちゃ、俺は心配であの世でも気が気でないよ。だから、笑って安心させて逝かせておくれ?」
「わかった。」
「今までありがとうお義父さん。」
「泣かないから安心て逝って、お義父さん。」
三人でお義父さんに別れの挨拶をする。
「出来のいい娘たちで良かったよ。俺も不安なくあの世へ行ける。楽しかったよ。ありがとう。」
お義父さんはこうしてあの世へ逝った。
― 1週間後 -
「ねえ、アエリア。この孤児院の取り壊しが決定したって。」
マイハがそう告げる。
以前から持ち上がっていた話だ。孤児院と言っても一軒家で、私たち3人しか住んでいないが、教会をここに建てたいらしい。お義父さんがあの世へ逝ったので、ここに孤児院があることがもうこの地域では認められない。
「そっか…。ついに来ちゃったか。」
覚悟はしていた。だがこうも持ち上がってくるのが早いと少々つらい。
「しょうがない。ここは元々教会をたてたかった場所をお義父さんがギリギリで買い取った場所だから。お義父さんと領主、仲悪かったし、仕方ないよアエリア。」
メルアが私を元気づけようと声をくれる。
「これからどうする?メルア、マイハ。」
私は尋ねてみる。
「幸い退去命令は1か月後まで伸ばせたから、それまでにどうするか決めればいいよ。何とか頑張ったから。」
「さすがマイハ、私たちのブレイン。頼りになる。」
メルアがマイハをほめる。
「でしょ?ギリギリまでここには住んでたいからね~。何とか交渉できたよ。ちゃんと穏便にしたからね?」
「わかってるよマイハ、それより、これからのこと考えなくちゃ。冒険者は続けるとして、提案があるんだよ。」
私は二人にあることを提案する。
「お義父さんがさ、私たちを学校に行かせてやりたかった。っていってたじゃない?」
「うん。言ってたね。」
「言ってた。」
「だからさ、王都にあるセントリア冒険者学校に行ってみない?お義父さん以上のことは学べないかもだけど、お義父さんがぼやいてたことをやる価値はあると思うんだ。そこには寮もあるし。」
それに対してメルアとマイハは、
「「賛成。」」
「お義父さん私にちょっと話してたんだよね。私たちは同年代の交友関係やら一切ないから不安だって。」
マイハがそう告げる。
「ええ!?まあ、確かに同年代との交流…ないね。」
「いわれてみれば。」
私はお義父さんが少し恋しくなってしまった。だってこんなにも私たちのことを思ってくれていたんだもの。
「それで、試験はいつなの?アエリア。」
「2週間後、王都である。1か月後にちょうど入学って形になるし、いいと思わない?」
「ジャストタイミング。」
「じゃあ、その方針で行こうか。」
評価よろしくお願いします。