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第7話 あたしたち二人とも

ジリリリリリリリリリリ!!


鳴り響く携帯のアラームを止めながら、あたしはのろのろと布団から這い出た。


今日は土曜日で、学校は休み。やったね!

……まあ、昨日入学したばっかだけどさ。


だけどあたしは例によって牛舎の掃除のため、四時半に起きております、はい。


まあ、慣れたもんだけどねー。そりゃ小さい頃からやってるし(まあ昔はこんなに早くなかったけどさ!)。それに、この時間帯の澄み切った空気が好き。あー、北海道生まれでよかったなー!って思うんだ。


そんなことを考えながら、あたしはいつものツナギに着替え、髪をお団子にまとめる。

それが終わると一階へ降りて、お母さんに「おはよう!」と叫び、長靴を履いて家を飛び出す。


急いで牛舎に行くと、もう既にお父さんがいた。


「おとーさん、おはよー!」


あたしが叫ぶと、お父さんは「遅いぞさちー!」と叫び返してきた。悪うござんした。


うーん、今日も盛大にやらかしてくれたなぁ。ほんっと、掃除のしがいがあるよ!


心の中で文句を言いながら、あたしは牛舎の掃除をすすめていく。


あー、今日は何にもやることが無いなー…気が早いけど歌詞とか作ろっかな?ソロ曲の歌詞なんかは、作っとけば後々楽になるだろうし。


歌詞はどんな感じがいいかなぁ。今までのハイドラの傾向的に、グループ全員が一つのテーマで曲を作って、それぞれ自分らしさを演出するっていうパターンが多い…というか、人気なんだよね。元の部活とか好きなものとか。バラバラの曲より、テーマが揃っているのにオリジナリティが溢れているグループの方が、グループ・ソロ共にいい感じだって思われるみたい。


だったら、あたしたちも何かテーマに合わせて作ろっかな。うーん、好きな食べ物?趣味?なんかいまいちピンと来ない。


共通点とかはどうかな。………あれ、なくない?

あたしたちはあんまり、ていうか全然似てないらしく、友だちからは「なんで二人は一緒にいるの?」って絶対聞かれる。だから、共通点って言っても北海道出身とか農業学校に通っているとか………


あ!雪!雪が好き!あたしたち二人とも、雪が好きなんだよね。かまくら作ったり、雪うさぎに雪だるま、雪合戦にそりすべり。小さい頃から雪を使っていっぱい遊んできた。


それなら、雪をテーマに歌詞を書いてみよう。あたしのは、性格に合わせた明るいアイドルポップス。笑夏のは、笑夏の演技力を活かしたバラードにしたいな。


中学校の文化祭の演劇で、笑夏は出演者のなかでも一際輝いていた。圧倒的な演技力で劇を引っ張っていた。笑夏の放つ声に、何気ない仕草に、指の動きひとつに、髪が揺れる瞬間に、目を奪われてしまう。笑夏が口を開いたらもう、笑夏しか見えなくなってしまうのだった。あれは凄かったなぁ……


だから、笑夏のソロ曲はその演技力が活きるような曲にしたいな。恋愛っぽさも入れてみたらいいかも。恋愛の切ない気持ちも、笑夏なら美しく歌いきってくれるだろうから。


あー、楽しみになってきたー!早く掃除を終わらせて歌詞を作りたいー!もちろんうちの牛は大好きだし大事だけど、毎日毎日掃除するのは疲れるし(それを言ったらお前はそのおかげでご飯食えてんだー!って言われちゃった。まあ事実だし、感謝してるけどね)、体中臭くなるし…年頃のオトメとしてはちょいとね……


とりあえず後でお風呂はいってご飯食べて、で歌詞を作って……


なんて思ってたら。


ズルっ!


あたしは足を滑らせて、おがくずの山に全力ダイブをかましてしまった。

……牛たちのアレよかマシなのかな……?

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