旅立ちの準備
2人は大統領室に呼ぶとすぐに来てくれた。
「アリス、それにイヴ、話があるんだ。」
「「なんでしょう?」」
「訓練も全部終わったし必要な知識も身についたからエデンに降りようと思う。」
「私は今の瑛士なら問題ないと思います。それに実際に体験しないとわからないことも多いでしょうし。」
「私は反対です。危険すぎます、この7年である程度わかってきてるとはいえ、まだまだエデンの魔法というものにはまだ未知の部分も多いのですよ。それに今は戦争こそありませんがそれぞれの勢力が疲弊してしまっているからであってまたいつ始まるかわかりませんし。それに何より私たちにはもう瑛士さんしか居ないのです。」
予想通りイヴは賛成してくれたけどアリスは反対みたいだな、それも猛反対ってレベルで。
「確かに魔法にはまだ未知の部分も多い。何が起こるか分からないという指摘は正しい、けどそれはアダムに護衛をつけてもらうし僕も防衛軍特殊部隊式の訓練を終えてるんだ。ある程度は大丈夫だろう。」
それこそ寝てる間に宇宙空間に転送(魔法なら転移か)でもされない限り死ぬことはないだろう。
「それは私も分かっています。ですが不安なのです。仰るように瑛士さんはここ7年で見違えるほど成長なされましたが前向きすぎる所はありますが優しくて、私達のことを人として扱ってくれて…」
「アリス、一応言うと思考がそれてるわよ。」
もしかしてアリスは僕の事が…いやいや、アンドロイドにはそういう思考は備わってないはずだ。いやでもアリスは長く生きてるからあり得るのか…?そういう可能性があるという論文もデータにあったな…いやでもまさか…
「とにかく私は反対です!」
アリスの顔は泣き出しそうになっていた。その顔はとても人間らしくて…分かってたじゃないか彼女たちは人に近付きつつあるんだと、それをこの7年考えないようにしてたけどあの表情を見ると嫌でも自覚させられるな…嬉しい事だ。でも同時に不安でもある…か。
「でももう決めたんだアリス。僕は行くよ。前にアリスが反対した時も僕は過酷な訓練を始めただろう?それでも反対するなら今回は地球統一政府大統領権限を使ってでも行くぞ。」
そうだ、僕はあの星に行かなくちゃならない。もう2度と人類が滅びる様なんて見たくないんだ。その為にはまず互いを認めさせて平和への道を選んでほしい。でもそれは僕達が無理やり与えたってダメなんだ。自分達で勝ち取ってもらうからこそきっとそこに次への希望が見えるはずなんだ。
「……どうしても…行くんですね。」
「あぁ…彼らには戦争を永遠にやめて平和を勝ち取ってもらう。それを実現させる為には何が必要かを僕は探しに行くんだ。」
「敵いませんね、瑛士さんには…でもいくつか条件をつけさせてください。」
そこにはさっきまでの涙で潤んだ目とは違って強い決意の篭った目があった。
「出来るだけ受け入れるよ。まず聞いてみてからだけどね。」
「ありがとうございます。まず1つ目、危険を感じたら絶対にすぐに戻ってくる事。2つ目、護衛はアダムではなく私に決めさせてください。3つ目、瑛士さんの身体状況をこちらでモニター出来るように新たにナノマシンを投与させていただく事。これら3つが条件です。」
結構多いけど2つ目以外はこっちからお願いしようとしていた事だし問題ないだろう。
「わかった。ただ護衛はあまり多くない方が好ましいんだが。目立つと支障をきたしそうだから。」
「その点はご安心を。光学迷彩を施した多目的無人機を瑛士さんの上空に展開してNOAH-IIに展開している防衛軍即応部隊の数を倍にする以外の瑛士さんの直掩は3名でする予定ですので。」
アリスには僕がエデンに降りるつもりだったのがバレてたんだろう。
以前から決めてたように返事には淀みがなかった。
「ならいい。ありがとうアリス。それにイヴ。」
「それではいつ出発するのでしょうか?」
「まだ決めてないが諸々の準備が終わってからだな。それに向こうでの拠点も欲しいからどこか目立たない場所に無人島とかないかな?」
「ございます。」
側頭部に指を当てて答えるかたり今見つけたのだろう。さすがだな。
「ならそこにエデンの人々には気づかれないように小規模な基地を建ててくれ。」
「了解しました。イヴ、基地建設用資材の輸送準備と1つ新しく核融合炉を作ってちょうだい。」
「わかったわ。」
「それじゃあ2人ともよろしく頼む。」