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第0e話:再会  作者: 吉野貴博
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上中下の下

「で、お前は何しに来たんだよ」

 頭の中でいろいろ整理しているようだ。

「俺の方も話は簡単でな、山で不思議な演奏を聞いた、その演奏はとても心が揺さぶられる凄い演奏だった、だけど誰が演奏したんだかどこから聞こえてきたんだかがさっぱり解らない、だから探して録音してきてくれないか、とそんな訳だ」

「なんだそりゃ」

 そんな話、信じられっか。

「あのなぁ、この山にいるお化けたちがな、昼だろうが夜だろうが、誰かが山に入ろうとしたら、すぐ解るんだよ。今までに何人も入ろうとしたことはあったけどな、みんなお化けに邪魔されて、道が解らなくなって、すぐ帰っていったよ。俺の演奏を聞いた人間なんて、いねーよ。

 馬鹿馬鹿しい。やっぱり俺を見つけて連れて帰ってきてくれって仕事じゃねーのか?」

「いや、そうじゃないんだよ」

 コップを持って揺らし始めた。中の飲み物を揺らすことで集中しているのか。

「お前はお前で、お化けを信じているんだろ?」

「まぁ信じるもなにも、現にいるからな。来るし」

「お前の信じるお化けは友好的なのばかりのようだがな…」

 考えながら話を続ける。

「世の中のお化けとか恐怖ってのは、本来理不尽なものなんだよ。不思議な格好をしている、本来誰もいないはずのところにいる、死なない。

 もっと具体的に言うと、目が悪い人がメガネをかけてないのにはっきりと見える、録音録画したものに声が入る。何も悪いことをしてないのに憑かれたり祟られたりする。幽霊とかお化けに理屈は通じないし、物理法則が通じないことがある、それは解るか?」

「あぁ、解るが、それがどうしたんだ」

「その人が聞いたのはな、隣の山なんだよ」

「え?」

 何言ってんだ?こいつ。

「隣の山にホテルがあってな、そこに泊まって、夜外に出たら音が聞こえてきたんだよ。素晴らしい演奏が。

 その人だって調べたさ、自分でも調べたし、自分の知ってる人にも調べてもらったし。それでも解らなくて、諦めていたところに俺のことを知ってな、録音してきてくれと」

「お前は一体何をやってんだよ」

「旅のついでに音を録ってくれって頼まれて、頼まれた音を録音するんだよ。最初は滝の音とか虫の声とか波の音とかな。俺が旅行に出て、ついでに行けるところだったらいいよって始めたんだが、だんだん妙な音を録ってくれてことになってな。

 でも難しいんだよ。カメラマン想像してくれよ、その一瞬の風景を撮るために何週間も何ヶ月もそこにいて、その一瞬を逃さずに撮影するだろ、音もそんなもんで、行ったら滝が凍っていたとか渇水だとか、台風が来てどうしようもないとかあるんだけどさ、失敗する確率がものすごく高くても、とりあえず行ってみてくれと頼まれるわけさ」

「おぅ、そうか。で、なんで隣の山で俺の演奏が聞こえるんだよ」

「だから言ったろ、怪異ってのは物理法則を豪快に無視することがあるんだよ。

 俺も最初はそのホテルに行ってな、庭に立って、普通に探しても見つかることはない、もう何人もしっかり探して見つからなかったんだから、どう探せばいいんだろと考えていたら、風が吹いてきてな、何気なく風が吹いてくる方向をみたら、この山の斜面なわけさ」

「…」

「実はその人は演奏を聞いたんじゃないんじゃないか、音の怪異に出会ったんじゃないかと思ってな。それで、もしやと思って、その人が聞いた日時のことを気象台に聞いたら、こっちの方角から風が吹いていたと。だけど山の斜面ったって、広いからな、どこから聞こえてきたのかはさっぱり見当もつかない、でも一応と思ってこっちに来てみたら、道が一本しかない。なら歩けるだけ歩いてみるかと歩いていたら、ここに辿り着いたんだよ」

 一気に脱力する。

「なんだよ、それ。そんなことで見つかっちまったのかよ」

「俺だってこんな事やってるとな、いろいろ不思議なことは経験するんだよ。だから聞いた話と風が結びついて、今回は当たったわけだ」

「あー」

 神も仏もありゃしないというか、いつもは助けてくれるお化けたちも、不思議慣れしているこいつには何もできなかったか。

「でもな、依頼の内容は演奏の録音だけでさ、誰が吹いていたかを調べるんじゃないんだ。演奏してもらう代わりにそれ以外のことは一切秘密にすることが条件ってことで、いいんじゃないか?」

 こいつは仕事を完遂したいようだ。

「あー?うん、まー」

 なんと返事をしたらいいもんか。

「つーか、俺が吹くことは確定かよ。なんで決まるんだよ」

 別にいいんだけどね。誰か人のために吹くのも嫌になったわけじゃないし、すぐ他所に移ってもいいわけだし、

 テンションが低いまま何吹こうかなと考えるようになるのだが、こいつはまだ真剣な顔を緩めない。なんだか考えている。

 ようやく何を言うか決まったらしい。

「お前さ、仲間がいるかもしれないぞ」

 は?何言ってんだ、こいつ。

ようやくこのシリーズの表側主人公がテーマに気がつきました。しかし、最終回は決まっているんですが、この途中が二十年考えていても全然埋まっておりません。

とりあえず一段落として、ここでしばらく充電しようかなと思うのですが、二十年考えてどうしようもないことが、これから二十年考えても埋まるのだろうか、遠い目になってしまいます。

でもTwitterで怪談朗読、怪談師と呼ばれている方々からの刺激がありまして、なんとかなるのかなぁと前向きに考えております。

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