炎を纏う巨人
周りが火だらけのこの状況の中で、とりあえず外に出ることにした。
ドアノブを捻り、扉を開けようとしてみるが何故か開かない。
仕方がなく、思いっきり蹴っ飛ばして扉を開けると、そこにはロビーにいつも置いてあるソファがあった。
何故ここにあるのか、理由は言わずもがな、扉を開かないようにするためだろう。
どうして開かないようにしていたんだ……。
今は考えていても仕方がないと大急ぎで宿の外に出た。
すると街には、こちら側に体に炎を纏った巨人が歩いてきていた。
僕は咄嗟にその巨人へと走り出していた。
少しではあったがこの街で過ごし、この街を壊されたくないという思いが心のどこかにあったのだろう。
巨人の近くまで移動できたので一度止まり、もしかしたらと思い声をかけてみる。
「そこのデッカイの!キミ喋れるんじゃないの?」
「ほぅ…よく我が話せることが分かったな……」
その巨人の声は威厳を持っているような低い声だった。
「貴様があの老夫婦が言っていた生贄とやらか」
「生贄?老夫婦?」
「貴様が出てきたあの建物、そこを経営していた二人だ」
そう告げられた時、僕の心の中で何かが見えなくなるのを感じた。
いや、きっと気の所為だろう。僕の心の中には最初から照らされていたものはなかった。
「へぇー、あの二人はまだ老夫婦って年齢ではないと思うけどね」
「その二人だけではない、その他の街人達も口々にお前の事を生贄にと言っていたな。まぁ、我はそれなりの実力持ちならば誰でもいいのだがな。ちなみに街人は全員そこにいた馬を馬車にし、どこかへ去っていったようだぞ」
このデカブツ、さっきから長々と話してるけど、結局は僕と戦りたいってことだろ?
「あのさー、メンドウだからもう僕話聞かないよ?」
「ふん、いいだろう……初手は譲ってやる」
「……なに実力差等しいみたいな言い方してんの?」
「…なに?」
「要するにさぁ…キミは何の抵抗も出来ないまま、僕に殺されるってことだよ……ッ!」
言い終わった途端、僕は全力でデカブツに向かって走り出した。
レベルがここ何日かでかなり上がったからか、かなりの速度だ。
なにをしようと言うのか、腕をこちら向かって伸ばしてきた。
何もさせねぇよ。
「『微塵斬』」
リボルバーを構えスキルを発動すると、拳銃の先端から斬撃が飛ぶ。
それが巨人の伸ばしていた腕へと炸裂し、皮膚、肉、骨を木っ端微塵にした。
「ぬぐぅおォッ!!」
へぇ、やっぱりモンスターと言えど、切ったりしたとこからは多少血が出るんだなぁ。
「『ストレートショット』」
次は『微塵斬』を放ち、傷口から骨が見えていたのでそこを狙ってスキルを発動。
当たった箇所を一直線に貫通させた。
巨人はかなりの痛みを感じているのか、苦悶の表情を浮かべている。
ちょうどいい距離まで来たので、とりあえず跳躍。
巨人の目線のところまで上がり、通り過ぎざまに視力を奪うため、眼球目掛けてスキルを発動せずに、普通に発砲した。
「グゥ……ッ!!」
動く腕が片方しかないため片方の手で目元を覆う巨人。
巨人よりも少し上あたりに来た時、更にスキルを発動する。
「『フリーズショット』」
特に意味は無いが、巨人の頭に当たるように撃ってみる。いわゆるヘッドショットってやつだ。
当たったところから徐々に氷漬けにされて行く巨人。
スキルを発動したあとに、相手は炎を纏っているし効くのかどうか少し焦ったが、色々痛めつけて弱ったのか、それに伴い炎の勢いも弱くなっていたのでその心配は無さそうだ。
氷漬けになった巨人の頭に一度着地したあと、また軽く跳躍する。
空中でリボルバーを真下にいる巨人に向けてスキルを発動させた。
「僕が生贄?いや、生贄はキミだったね 『ギガントショット』」
リボルバーの先端から発射されたのは、銀色に光り輝く、光だ。
物質ではないことは少し想定外だったが、まぁいいか。
『ギガントショット』を受けた巨人は元から氷漬けにされていたこともあり、最初の宣言通り手も足も出ないまま粉々に血肉を撒き散らし黒煙と化した。
「さて、と……どうしようかな…」
地面に着地し、周りを見渡すともう何も残っていない、と言うのは言い過ぎかも知れないが、ほぼそういった状況だった。
「仕方がない、とりあえず別の街とかに行こうかな…」
歩き出した時に微かに聞こえたレベルアップ音が虚しく聞こえたのはきっとこれも気の所為だろう
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