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第7話

「そもそもコスプレって知ってた?」

「はい、存在くらいは。田舎モンなので実際見たことはないんですけど。佑奈さんの写真見たのが初めてといっても過言じゃないです」

「田舎? どこから出てきたの?」

 黒雪が興味があるのか聞いてくる。

「岩手です。ホント田舎の高校に通ってましたので」

「へー。そこから東大かぁ、大したもんだ」

「そんなに難しくないですよ」

 ケロっと自慢にも聞こえないこともないことを言い放つ勲。

「頭のいい方の言うことは違いますわ…」

「いえ、そういうつもりでは…」

「ま、それはどうでもいいので。私らはコスプレするというつながりで集まったのね。イベントに行ってするのが基本。人によっては個人で撮影されるってこともあるけど、詳しいことは知りたかったら教えてあげる」

「今回の件に必要なら聞きますけど、不要であれば飛ばしてください」

「話が早い、じゃあそれはいずれ。続けるね」

 事務的に話を進める勲。ドライにも見えるがそこは今の問題を理解するために不要と判断したための答え。内心興味津々だったりする。

「コスプレイヤーって自分たちが満足するためにやっているタイプと撮られて満足するタイプがいてさ。私たちはどちらかというと前者、そんな撮られることを望んでいるわけじゃない。でもそういうイベントって撮影されてナンボって場所ではあるんだ。私らコスプレイヤーがいてそれを撮影しに来るカメラマンがいて。ま、カメラマンなんて言えば聞こえはいいけど、カメコがいるわけよ」

「カメコ?」

「カメラ小僧、略してカメコ」

 ゆきちが謎の単語の意味を教えてくれる。

「なるほど」

「持ちつ持たれつの関係ではあるんだけどね。全員が揃っている写真なら私たちも欲しいし、それをそれなりの腕でタダで撮影してくれるから迷惑とは言い切れない。変な趣味の人もいるけどね、表に出さなければそこまで気にしない。ただその場で変な要求して来ればそれは断る。私たちにだって取捨選択の自由はある」

「それはそうですよね」

「うん。で、その変なことというのが今回の本題」

 話が核心に入り出す。

「よくイベントで会う面識のある人たちはさすがに変なことはしない。いってみりゃ私らのファンだから、嫌われることを嫌う。写真を撮れなくなることが一番キツイからね」

「なるほどねぇ」

「でも中にはその変なことを要求する人もいるわけよ。エロいポーズ要求したり出会い目的だったり、アフター目的だったり」

「アフター???」

 またわからない単語が出てくる。首をかしげる勲。

「んー、とても端的に表現すると『ヤリ目的』ってこと。オフパコともいう」

 またゆきちが答えてくれる。オブラートに包まずド直球に。そりゃ理解もすぐできる。

「おおぅ…。やっぱあるんですね、そういうの。皆さん見る限りだと綺麗でかわいい人多そうな世界っぽいですし」

「やだなー、お世辞うまいなぁ。なんも出ないよ?」

「いいよメグねえ、あたしの胸見てるからそれで相殺さ」

「…」

「一生言われる」勲は今そう覚悟した。

「そういう人も基本的には自分たちで突っぱねるんだけどね。あと取り巻きの人達が守ってくれるケースもある。なんだかんだで優しい人多いからね」

「それでもどうにもならないのがいる、ということでしょうか?」

 その先を読む勲。

「うん、その通り」

「ちょっと厄介なのが中にはいるんだ。レイヤーだからって甘く見てるのか下に見てるのか知らないけど、金チラつかせたりして凄い要求してきたり。金欲しさにやってるわけじゃないっつーの」

 黒雪が愚痴っぽく言い放つ。

「たち悪いですね」

 理解を示す勲。

「私たちにも責任がないわけじゃないんだ。けっこう際どい恰好していたりすることもあるから撮られても仕方がないと覚悟している部分もあるんだ。でも、ちょっと度が過ぎるのだけは看過できない。そんな中で盗撮があったんだけど…」

 流暢だったメグルの話がここで少し淀む。

「ユウナから写真見せてもらった?」

「え? あぁ、あの写真…かな?」

 いつの間にか隣に座っていた佑奈の顔を見る勲。それに対して小さく頷いて答える佑奈。

「あの写真は私とユウナしか映ってないからまだいいけどさ。顔も写ってないないから無視できなくもない」

 昨日佑奈に見せてもらった写真の主のもう一人はゆきちだったようだ。胸を見たかと思えば彼女の下着まで昨日のうちに見てしまっていたわけだ。そりゃ責任を取る必要もあるかもしれない。

「あれはぶっちゃけ序の口。もっとひどいのがある」

「??」

「リリィ、パソコン出して」

「Yes」

 リリィがおもむろにカバンからパソコンを取り出して電源を入れる。しばらく操作した後その手が止まる。

「準備できたヨ」

「町村くん。今から見せるものはちょっと刺激が強いかもしれない。特にウブな君には余計に…」

「は、はぁ…」

 真剣だが少しばかり照れが見える。それはメグルに限らずその場にいる全員がである。周りを見回して異様な空気に押される勲。

「じゃあこれを…」

 向こうを向いていたパソコンの画面が勲の方を向く。

「…!!!! ダメですってこれは!!!!」

 即座に理解して目を覆う勲。そこに写っていたものは今この場にいる全員が着替えをしている最中の写真。一糸まとわぬとまではいわないが、下着姿、トップレス、アンダーレスまでいる。

「私らが難儀しているのはこれなんだよ」

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