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第2話

「真ん中が私です」

 改めて自分であることを勲に告げる佑奈。勲は画面に釘付け。よく見れば微かに残る面影。その異形ともいうべき衣装に惑わされていたがよく見てみれば間違いなく目の前にいるその人だった。

「すげぇ髪の色。これ、佑奈さん?」

 黙ってコクリと頷くだけの肯定。

「ヅラ?」

 写真を指差して問う。

「ウィッグって言ってください」

「あ、はい…」

 別物らしい、全力で訂正される。

「はぁ、でもすごいな。初めて見ました、コスプレ」

 田舎育ちの勲にとっては、こんなコスプレというものとは無縁で生きてきた。高校の学園祭で仮装というレベルのものなら会ったが、ここまで本格的な何かに成りきるというものは今の今までお目にかかったことがない。無論インターネットなどで意識せずに目に触れるケースはあったが、興味の対象外のためほとんど記憶には残っていない。

「隣は、友達?」

「はい」

「へぇ…。みんな可愛いですね」

 画面に目をやったままぽろっと呟く。それは見えていないが、少し佑奈が顔を赤くして照れている。自分が照れさせたことに気付かないまま、じっとスマホの画面を見ている。

「んで、これが一体?」

 本題を切り出す勲。それもそうだろう、「頼み」というものが何なのか、今のところさっぱりなのだ。まさかただ自身のコスプレ写真を見てほしいだけではないはず。続きを佑奈に尋ねる。

「はい、じゃあちょっと」

 勲の元からスマホを引き上げる。そして再度画面をスワイプし始める。別の画像を探しているのだろう。そして手が止まる。

「これなんですけど。見ても驚かないでくださいね。声もあんまり出さないでくれれば…」

 改めて勲にスマホが差し出される。

「どれ…。ん?」

 受け取り画面を見る勲。

「…ん? んんん!!??」

 先ほどとほぼ同じ、初めは何が写っているかわからない。しかしすぐに先ほどとは違う何か、しかも本来見てはいけないものが写っていることを悟る。そして画面から目を背け、佑奈を見る。

「ちょ、これって。パ…ンツ!? 佑奈さん!?」

 写っていたものは男ならだれでも憧れるであろうパンチラのショットであった。それは偶然撮られたものではなく確実に狙って撮っているもの。しっかりくっきり白いアレが画面に映し出されている。

「…」

 黙って頷く佑奈。

「え、ちょ…えぇ!?」

 見たいような見たくないような。本能に逆らい頑張って目を背けるが、指の隙間から覗くが如く、目を逸らしたふりしてしっかり画面の内容は理解できる角度を維持する勲。

「しかもこれって…」

「…私です」

「ですよねー」

 声には出さず、天を仰ぎそんなことを心の中で叫ぶ。それがなぜ佑奈と理解できたのか。それは先ほど1枚目の写真があったからこそ。アングルこそ違えど3人が並んでいる構図、着ている衣装、場所などなど。そうと判断するには容易いヒントがちりばめられていた。そして2枚目。先ほどと時と場所を同じくして撮られたものであるのは間違いないが、それを撮影している人物の位置、しいてはカメラの位置も全く異なる。それもそうだろう、写っているのは彼女らが来ている衣装を煽りで撮影している構図、しかもそれは意識して【スカートの中】を撮ろうとしているものである。盗撮以外形容する言葉はない。

「と、盗撮だよね? これって」

「そうです」

「そうだよね。頼んでこんなの撮るわけないもんね…」

 見てはいけないと判断し、既に画面を下に向け、その写真が目に入らないよう気を配っている勲。しかし脳内には目の前にいる女性の本来見てはいけない部分が写ったものがグルグルと巡っている。まさか初対面の女性の恥ずかしい部分を突然見せられるとは、思いもしなかった。

「恥ずかしいですけど、まだ見られても平気なの履いていたからマシです」

「あ、そうなの?」

 画面をひっくり返してもう一度その画像を見る。言われて気付く、たしかに普通の女性用の下着とは少々異なることにやっと気づく。俗にいう「見せパン」というやつだ。

「あ、ホントだ。なんか違うね。ガードが堅いというか飾り気がないというか…」

「それでもあんまり見ないでください。恥ずかしいことに変わりはないですから…」

 今度は明らかに恥ずかしそうに顔を赤くしているさすがに気付く勲。

「ご、ごめんなさい…」

 自分と同い年の女性の、見られては平気とはいうものの、普通お目にかかることのできないものを見てしまった勲は急に恥ずかしくなり、真っすぐ佑奈を見ることができなくなってしまった。しかしそれは佑奈も同じ。初対面の男性に『見せパン』とはいえ自分の下半身を見られてしまったことで、顔から火が出そうなほど恥ずかしくなって、こちらも勲を直視できなくなっている。

 次の会話が始まるまで凡そ5分程度時間を要した。後ろでは「ヒマだなー」と言わんばかりに巽がケーキをつついている。

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