神の悪戯とは厄災と同義パート2
うわぁああああ!!
っと遠くから人の声とは思えない叫びが聞こえ、
兄さんとビクッと肩を強張らせた。
「魔物だ!魔物の大群だ!」
一瞬で村がパニックになった。
今までも何度か魔物の襲撃に遭っているらしい村からすると狼狽えるのも無理はないかもしれない。
"らしい"というのは僕らが生まれてからは、あの日の襲撃が初めての経験だったからだ。
僕らが生まれる前から苦渋を舐めさせられた為か、こういう時の対処法を親から何度も教わっていた。
それは村の一番奥にある村長の家には地下道があり、そこに子供は立て籠もり暫くしても自体が好転しないようなら地下道をそのまま進み別の村に逃げるというものだ。
魔物には最後まで抵抗する為に女も老人も戦うことが義務付けられている。
僕はそれを思い起こし直ぐにでも地下道へ向かおうとしたが、兄さんがナイフを返していないままだった為商人に声をかけると、
「このクソガキ!!」
盗人だと思われたのだろう、髪をグッと掴まれ屋台に頭を擦り付けられていた。
「待ってくれ!最初から返すつもりだったんだ!」
「兄さんを離してーー!」
僕らは必死に商人に叫んだ。
いや、僕はただ泣き喚いていただけかもしれない。
緊急事態ということもわかっていた為か冷静になれず、僕にはそれしか出来なかった。
商人はしばらくすると落ち着いてきたようで、
「確かに、盗人なら近くなんかに隠れず直ぐ遠くに逃げるか。
悪かったな小僧ども。」
商人が兄さんを離してくれて安心したが、それどころではない。早く逃げないと、早く逃げないと!
少し痛そうにしてる兄さんを連れながらその場を去ろうとすると、
「お前らどうしてコレを取った?」
手早く店を畳んでいる商人が話しかけてきた。
「別に欲しかったわけじゃない。なんとなく、だ!
そんなことより早く逃げないと!」
兄さんが商人を急かすが気にする様子もなく少し考える素振りを見せた商人は質問を繰り返す。
「金目のものだとかじゃなく、なんとなくか?
宝石もこんなに目立つのに?」
「別に手に取るまではそんなこと気にしてなかったよ!
それより早く!本当に早くしないと!」
さっき手酷くやられたのに相手の心配をするのは兄さんの良いところだろう。
だが、商人は逃げることよりももっと大事な事のように意外なことを言ってきた。
「なるほど、こいつらなら大丈夫かもな。
おい、小僧ども!このナイフを持っていけ!
代金はいらんが、護身用にいつまでも持っておくことを誓え!」
突然僕に押し付けるようにナイフを渡してくると、あっという間にその場からいなくなってしまった。
残された僕たちは5秒くらい呆然としたが、逃げなきゃいけないことに気づいて地下道へと走り出したのだ。