序章 私の旅立ちと行方(7)
ここには確かに勇者たるものがいるはずなのだ。魔王よ、お前が捕らえている捕虜の中にいるのではないか?」
ここは魔王城。
かつてどれだけの勇者が挑んできたことだろうか。
かくいう私自身も初めて訪れたというわけではない。
私は歴代の勇者の手にその力を与えて、この魔王城の歴代の主に戦いを挑んできた。
今の代の魔王こそ初めて会うものの、
おそらく先代、先々代ぐらいにはあっているだろう。
魔王城の中には大抵捕虜となった人間が何人かいたものだ。
そのものを開放し、救出したこともあった。
「この城に人間が・・・ああ、確かに何人かいるな。探すというならば、探してみるがよかろう」
意外にもあっさりと魔王が勇者探しを許可すると思わず、私はおそらく非常に不可解で間抜けな顔をしたのだろう。
魔王は眉間にしわを寄せて非常にわかりやすくめんどくさそうな顔をした。
顔が整っている分、妙な迫力を持ち合わせつつ。
「協力する気はないが、勇者とやらをさっさと探し出し、この城から出て行ってもらうのが一番ベストだ。あいにく、捕虜にした人間はいないのでな。皆自由にこの城で働いている。好きに探し回るといい。ただし、お前の招待を明かさないほうが身の為だ。この城には勇者と聖剣に恨みを持ったものは山のようにいるだろう。勇者を見つけたとたんに袋叩きに会うなんてこともありえるだろう」
「了解した」
魔王の言葉に従うなぞ、不本意極まりないが、今はそれに従うしかない。私とまだ見ぬ勇者のために。