魔物遭遇2
走っても疲れない事を知り、今森を抜ける為走り続けている。かれこれ一時間程だろうか。今まで遭遇した獣やモンスターはゴブリンのみ。全部で11匹。レベルがもう1つ上がり、今のステータスはこうなった。
NAME:グレン
AGE:18
SEX:MAN
LV:3
HP:C【12000】加算値0
MP:X【0】
ATK:C【3200】加算値2
DEF:C【1200】加算値0
MAT:X【0】
MDF:X【0】
AGI:C【3200】加算値2
LUCK:C【1000】加算値0
SKILL
標準異世界言語
SPECIAL SKILL
???&???
SKILL POINT:5
BONUS POINT:0
今回のボーナスポイントは1。やはりすぐにランクアップとはいかない。
「いい加減森を抜けてもいいと思うが」
流石に1日中走り続けなければならないとは思わない。思いたくない。などと考えていると何やら煙が見える。
「人か!」
やはり嬉しい。ようやく初めての人に出会えると思うと自然と足も更に速くなり、すぐにその場所に着く。
「これは…まずいな」
そこにいたのは人ではなく、人を食っている2本足で立つばかでかい豚がいた。所謂オークだ。そしてオークの目の前には馬車が横転し、その後ろで鎖に繋がれた二人の女性が逃げようとしている。オークが食べ終われば間違いなく女性たちに向かうだろう。
「こっちだ!」
オークのでかい目玉がこちらを向く。改めてみるとかなり大きい。身体は3メートルを超え、手にはそれに見合う棍棒持っている。オークは食った人間の血を口から垂らしながらこちらへ向かってくる。
「遅い」
身体がでかいためやはり動きは遅い。棍棒振り上げ降り下ろすまで余裕で股下に到達する。
「食らえ!」
膝に向かって蹴りを放つ。ゴブリンとは違い手加減無しの本気で蹴り抜いた。
「っ!」
だがオークの身体には傷1つ付かず、逆に俺の足から血が出ている。骨は無事のようだがあまりの痛みにその場で踞る。その隙にオークは俺の姿を確認し、その太い足を俺の頭上へと持ち上げる。
「危ねぇ!」
転がりながら避ける。埃が舞い視界が遮られるが、女性の位置は覚えている。明らかにこのモンスターは格上だ。倒すのは諦め逃げに徹する。
「じっとしてろ!」
足の痛みをこらえ走り出し、彼女たちの前へ到達すると二人を脇に抱え一目散に走り出す。奴は足が遅い。逃げ切れる。そう思っていた。
「グオオオオオォォォ‼」
近くにある大木を引き抜き、俺たちに向けて投げつけてきた。かなりの速度で俺の足より速い。
「っ!」
思わず止まり、すぐに脇道に逸れる。とてつもない音と地面の揺れ感じそちらに目を向けると、さっきまで自分達がいた場所に大木が落ちていた。
「時間を稼ぐから遠くへ逃げろ」
二人に向かって淡々と言う。この状況をやけに冷静に頭の中で考えていた。力で劣り、奴の身体には傷付けられず、唯一勝てる速度でも対策をたてられている。勝てる要素がない。なら彼女達を助けて終わりにしよう。どうせ一度死んだ身だ。惜しいと思わない。
「あの、手を出して下さい!」
二人の内の一人が必死の形相で俺に向かって叫ぶ。その言葉に戸惑っていると彼女は強引に俺の手を掴んだ。
「止めろレイシア!こいつがどんな人物かまだわからないんだぞ!」
彼女はこの言葉を無視し、構わず俺の手を握り何か唱え始める。
「世界を作りし偉大な三神よ。我、この身この命捧げたる主を与えて下さることを神々に感謝し、生涯全てを捧げ主に仕えることを誓います。我が名はレイシア・ヴァイスレット」
「ガアアアアアァァァ!」
「シールド(盾)」
名前を言い終わると同時にまた大木が向かって来る。しかしぶつかる寸前で不可視の壁に遮られ大木が砕ける。
「な⁉」
「サンレイズ(太陽光線)」
レイシアの周りに小さな白い球が三つほど浮き始め、その三つとも光を射出しオークを貫いた。オークは叫び声一つあげることなく倒れた。
「凄い」
彼女はオークの絶命を確認すると綺麗な笑顔で微笑んだ。
「お怪我はありませんか?」
突然の問いに急に足の痛みが振り返し、手で足を押さえてしまう。それに気づいたレイシアは足に手を当て呪文を唱える。
「ヒール(小治癒)」
暖かい光が足を覆い光が消えると足の傷はなくなっていた。
「これで大丈夫だと思います」
「ありがとう。足の痛みはなくなった。ところで君たちはここで何をやっていた?」
鎖に繋がれ服装も必要最低限の物しか纏っていない彼女達は異常に見える。
「奴隷としてこの先にある帝国に売られるところでしたが、オークの出現で商人が死んでしまい現在に至るといった感じですね」
「言い方が軽いな」
何て事もないような口調で話す彼女に驚きを隠せない。
「この世界では普通の事ですから。転生者さんの世界では違うかもしれませんね」
「っ!何で俺が転生者だと?」
「その服装はこの世界には無いものです。なら貴方は最近この世界に来たばかりの転生者であることは予想が着きます」
「俺の他にも転生者がいるのか?というかそいつらは転生したことを隠していないのか?」
「そうですね。ここでじっくり説明してもいいのですが、また魔物が現れるとも限らないので、ノートリアス帝国に着いてからお話ししましょう。ご主人様」
ちょっと待て。ご主人様って何だ⁉
「申し遅れました。私の名はレイシアと申します。もう一人は親友のヴェルサリアです」
レイシアは腰にまで届くほどの長い金髪を揺らし花が咲いたような可憐な笑みを浮かべる。対してヴェルサリアは腰にまで届く銀髪揺らし警戒心を隠そうともしない目で俺を見ていた。