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オーラの魔法使い  作者: 白木渥真
第二章
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第二十七話 魔物討伐

 璃采達は早速、魔物討伐依頼を受けた。

 次に向かうのは西のビブリオ地方にある森だ。


「思ったのだけど、魔物を見つけて直ぐに倒したら駄目なんじゃないかしら」

「そうねえ。倒しちゃったら魔女は現れないわねえ」

「どうします?」

「少し待ってみっか」


 移動が速いので、他の冒険者よりも大幅に日数を減らしている。直ぐに討伐しなくてもギルドに怪しまれる事は無い。

 璃采達はティティに魔物の物だと思われる強力な魔力を感知して貰い、見張る事にした。

 魔物は森から出る様子も無く、五日が経過した。


「魔女らしき人物は現れないわね」

「ティティ、魔物以外のおっきい魔力感じないよー」

「魔女って、村や町が襲われないと出てこないんじゃね?」

「そんなわざわざ危機になるまで待って、颯爽と現れるヒーローみたいな演出してるんでしょうか?」

「それなら名前も名乗らないで去ったりするかしら?」

「そうねえ。そんな目立ちたがり屋さんな性格には思えないわあ」


 このまま魔物を放置しておくのも危険である。

 璃采達は魔物が森から出て人々を襲う前に討伐する事にした。

「このメンバーで戦うのって初めてですね」

「ふふふ」


 魔物は森の浅い所にいた。虎のような頭が三つある。

 璃采は魔物を見るのはこれで二度目だった。

「魔物って頭がいくつもあるんですか?」

「新しい頭が生えると魔物になるっていうぜ」

「ふふふ。沢山あった方が強いらしいわあ」

「三つだとこの前のより強いってことね」

 

「じゃあ行くわねえ」

 シェナフィがおっとりとそう言うと、魔物にパルチザンで斬り付ける。

「オルゥアアア。ドタマかち割ったるううう!」

 虎魔物は前足で振り払おうとする。

 それをパルチザンで受け流すシェナフィ。

 シェナフィが引き付けている間に、璃采もサイドから攻撃を加える。

 虎魔物の頭の一つが璃采を噛み砕こうと大口を開ける。

 その顔めがけてリズフィの風魔法の刃が炸裂した。

 ティティとロントは氷の魔法を放つ。シェナフィと璃采が前衛にいる為、火の魔法は迂闊には使えない。

 虎魔物は魔法でガードしているのか、ティティ達の魔法はあまり効いていないようだ。

さらに虎魔物も魔法で雷撃を繰り出す。

 皆は上手くかわすが、璃采は避けきれずに雷撃が腹を掠めた。

「リト!」

 だがオーラを全身に纏っていた為、大したダメージにはならなかった。

 璃采が一番弱いと察した虎魔物が、璃采に狙いを定める。

 虎魔物の爪が璃采を襲う。

――避けきれない

 璃采はサーベルを前に出し、オーラを強化してガードしようとした。例えガードしても大きなダメージは免れないだろう。

 覚悟を決めた璃采だったが、シェナフィが璃采を庇った。

 ガキンと爪と鎧がぶつかる音がして吹っ飛ばされるシェナフィ。

「シェナさん!」

 動揺する璃采。


「効かぬ。効かぬぞおおお。フハハハハ」

 シェナフィは直ぐに起き上がり虎魔物に突っ込み、パルチザンで虎魔物の頭一つを突き刺した。

 怯む虎魔物。

 璃采もサイドから斬り付ける。璃采の前に再び虎魔物の顔が迫る。

 璃采は咄嗟に掌からオーラを撃ち出した。放たれたオーラは勢いよく虎魔物の顔にぶち当たる。

 オーラの攻撃は魔法防御を貫通するのか効いているようだった。だが致命傷にはならない。

 シェナフィがもう一つの頭の目を突いた。

 片目を潰されて頭に血が上った虎魔物は、璃采の方へ向いていた頭もシェナフィへと向けた。

 璃采はもう一度オーラを放とうとする。ふと、近くで放ったら威力が違うのだろうかと思った璃采は、虎魔物に近付きオーラを放つが、近付き過ぎて虎魔物の体に触れてしまった。

 虎魔物の体に衝撃が走る。虎魔物は苦痛に悶えた。

「なんだ、これ?」

 放った璃采もよく解っていない。その隙を衝いてティティが叫ぶ。


「ティティも行くよー。みんなどいてー」

 その声にシェナフィと璃采は魔物と距離を取った。

「ごおー」

 ティティの強烈な火炎放射のような魔法が虎魔物を焼く。リズフィとロントもティティに合わせ火の魔法を放つ。

 ティティ達の魔力が虎魔物の魔力を上回ったのか、虎魔物の魔法ガードが敗れた。

 断末魔の雄叫びをあげる虎魔物。

 シェナフィが首を刎ね落とす。

 璃采も残った最後の首目掛けてサーベルを横薙ぎする。首は落ちない。すかさずシェナフィがその首をパルチザンで貫いた。

 初めての魔物討伐は成功した。


「シェナさん。庇って貰ってありがとうございました。大丈夫ですか?」

「ふふふ。大丈夫よお。すぐに治癒魔法で治るからあ」

 璃采はシェナフィのオーラを視る。負傷個所や魔塞病以外の病気も、治癒魔法で治していなければオーラは変色している。シェナフィのオーラは、きれいな虹色で変色は無い。


「リトが途中で何かしたのって」

 リズフィが璃采の側に寄って来た。

「ええ。ずっと練習していたやつです」

「すごいわ。私ももっと頑張らないと!」

 そう言うリズフィの魔法も上達していた。

「あのオーラを放つってやつ?オレっちは無意識に纏ってるらしいけど、放つ事は出来ないもんな。リトやるじゃん」

 ロントがにやにやしながら璃采を小突く。

「まだまだですよ」

 璃采はまだやっと皆の足元に辿り着いた位だ。やはり魔法の威力は絶大だった。

 一行は、虎魔物の討伐証明部位と牙や爪等売れそうな物を持って帰路に着いた。


 璃采は自分の掌をじっと見つめていた。

 あれは何だったのだろうか。オーラを放ったのだという事は解る。だがその後の虎魔物の様子は一体。体の内部に攻撃が通じたという事だろうか。

 さらに虎魔物の体に触れた時に感じた力のような物。あれは虎魔物のオーラなのだろうか。璃采は今までオーラを視る事が出来た為、フォガートのように感じるという事は無かった。正確には、璃采は魔力を使えないので、フォガートと同じようには感じる事が出来ないのだが。戦闘という極限状態にあったからなのだろうか。虎魔物のオーラを感じた気がした。

 そして、その事に気付いてしまえば、感覚を研ぎ澄ませると自分自身のオーラも、視るだけでは無く感じる事が出来るようになった。


「ひゃっ」

「リズフィ!」

 璃采は狼狽えた。この悲鳴はあの時と同じである。またクレアのように誰かが――

「あ、あの時みたいに知ってる誰かを感じたりはしてないわ」

 今までと同じく何かが入って来たような感じらしい。

「だんだん感覚が鋭くなっている気がするわ……北の方で何かあったのかも」

「行ってみますか?」

 リズフィは首を振る。

「あの時みたいにハッキリとはわからないの。漠然と北の方としか」

 

 璃采達は三日後カストラへ戻ってきた。

 冒険者ギルドで報告を済ませ、掲示板を見ると魔物討伐依頼があったので受ける。


 そして一ヶ月が過ぎた。

 その間にも二度リズフィのあの悲鳴を聞いたが、結局何が起こったのかは不明だった。

「もうこれで倒した魔物も五体目か。全然魔女に会えねーな」

「そうですね。もう退治して回ってないのでしょうか?」

「引退しちゃったのかしら。どこかで腰を落ち着かせて定住しているのかもしれないわね」

「あらあ」

 五体目ともなると、璃采達はだいぶ戦闘に慣れて来ていた。頭が六つある魔物まで倒せるようになっていた。そして立て続けに魔物を狩る璃采達は、有名になりつつあった。


 冒険者ギルドへ報告に行くと、魔族の冒険者が声をかけてきた。

「すげーな。そんなに沢山魔物を倒すなんて。英雄並だな」

 璃采の脳裏にフォガートの姿が浮かぶ。彼と並ぶ事等ありえない。

「僕達なんてまだまだですよ」

「そうか?それより気を付けた方がいいぞ」

「何をですか?」

「冒険者が三人も殺られたんだと」

 璃采とリズフィは同じ事を考えたのか目が合った。

「詳しく教えてくれませんか?」

 話によると、最初の犠牲者は一ヶ月程前に殺され、二人目と三人目は半月程前に殺されたという。殺され方の手口は一人目と三人目が同じで、二人目は違ったそうだが、三人ともゼリメラ大陸では有名な冒険者で、かなりの実力があったという。

「お前達も有名になって来てるからな。狙われるかもしれねえぞ」


 璃采達は宿屋へ来ていた。

 食堂のテーブルを囲んで、夕飯を食べながら話し合う。

「ゼリメラの冒険者が殺された時期とリズフィが悲鳴を上げた時期が一致しますね」

「だよな。リズフィちゃんとどんな関係があるんだ?」

「私にも解らないわ」

 ロントとシェナフィには、西の魔女探しを協力して貰っている為、世界の終わりの事や今までの事を全て話してある。それが西の魔女を探す理由だからだ。


「誰かが亡くなった時に出る症状ですよね。でも誰でもいいわけじゃ無いと思います。多分世界中では亡くなる人が毎日いると思うので」

「たまにしか出ないものね」

「何時頃から、今まで何回ありました?」

「丁度ヌレドマ様が亡くなった頃から、九回だったかしら」

 璃采は顎に手を当て俯き加減になる。


「先生の書斎にあった、シュナッガ大陸で殺された冒険者が三人、それと先生、クレア、そしてリズフィの症状が出始めたというヌレドマ様」

「あらあ。今回の三人を入れればちょうど九人ねえ」

 その九人が全員関係しているのかは分からない。全く無関係の事件もあるかもしれない。


「つえー奴が狙われるのか?」

「確かに全員強いですけど、先生のメモ書きにあった、封印者というのが気になります」

「殺された人達が封印者なのかしら?」

「その封印者ってのは何人いるんだ?」

「分からないわ」

「封印者が殺されるって事は封印が解かれるって事よねえ。何を封印しているのか分からないけど、まずいんじゃないかしらあ」

 その辺も西の魔女に会って聞きたい所ではある。だがこのまま魔女探しをしていてもいいのだろうか、と璃采は思う。ずっと会えない可能性もある。仮に会えたとしても、ネストルテのように何も知らないという事もありえる。

 璃采は悩んだ末に結論を出した。


「西の魔女を探すのは諦めましょう。僕は一旦シュオリブ王国へ戻りたいと思います。スラーキュさんの方で何か分かったかもしれませんし」

「そうね。私も行くわ。ロントとシェナはこれからどうするの?」

 ここまで付き合って貰ったのに、これ以上付き合わせるわけには行かない。

「オレっちは一緒に行くぜ。これだけ色々知っちまったんだ。ほっとけないだろ」

「ふふふ。私も一緒に行くわあ。世界が危なそうなんですもの、どこで生活していても安心出来ないじゃない」

 二人の言葉に璃采は面喰らった。彼らはこれからも手伝ってくれるという。なんと心強い事だろう。

「二人共ありがとう」


「そこまで言ってくれた二人に、僕は秘密にしている事があります」

 この先も一緒に行動するのである。言わなければと璃采は覚悟を決めた。


「――実は僕には魔力が全然ないんです。だから魔法が使えません」

 は?という顔をするロントとシェナフィ。


「今更何言ってんだ?そんなの知ってたぜ」

「ふふふ。今までの戦いを見てれば分かるわあ」

 今度は璃采が、は?という顔になる。


 戦闘中一度も魔法を使わずにサーベルとオーラだけで戦っていた璃采。仮に魔法が苦手でも、一つや二つは魔法を放ってもおかしくない。それだけ魔法はこの世界に息づいていて、言葉を発するように自然と出てしまうものなのだ。

 特に緊迫した戦闘中に魔法を使わないという事は、使えないという事だと推測する事が出来た。勿論、璃采に限って魔塞病だから魔法が使えない、などという事はありえないと、誰もが理解している。

 

 璃采は嬉しさと恥ずかしさを同時に感じ、はにかんだ笑顔を見せたのだった。

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