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オーラの魔法使い  作者: 白木渥真
第二章
26/33

第二十三話 魔女を探して

 ゼリメラ大陸で最初に足を踏み入れた場所はレヌカという港町だった。

 同じ港町でもカリゼとは雰囲気がガラッと違った。


 カリゼの町は、シュオリブ王国にある町とさほど変わらなく見えるレンガ造りの三角屋根の建物が多かった。

 だがレヌカは、真っ白い四角い建物が多い。異国の地といった感じがする。

 行き交う人々の見た目は人族と変わらない。だが決定的に違うのが背中に蝙蝠のような黒い翼を持ち、飛んで移動している事だ。

 魔族と呼ばれる彼らだが、魔族とは決して侮蔑的な意味があるわけでは無く、魔法に長けた種族というだけである。

 璃采は興味深げに町の様子を眺めていた。


「皆さんはこれからどちらへ行くのお?」

 シェナフィに話しかけられハッと我に返った璃采。

「僕達は西の魔女を探しに行きます」

「あらあ。西の魔女ねえ。それじゃあ私も一緒に行っていいかしらあ?」

「えっシェナちゃんも来るの。勿論大歓迎さ」

 ロントは相変わらずのオーバーリアクションで両手を広げてシェナフィを歓迎するポーズをとる。


「でもシェナ。何か目的があってゼリメラ大陸に来たのではなくて?」

 ロントは大喜びだが、リズフィが尤もな事を聞いた。

「そうねえ。特に目的はないわあ。この大陸が過ごしやすそうなら永住しようかしらあと思って来てみたのよお」

 それならば問題無いのかもしれない、と璃采は思う。


「ふふふ。それにねえ、リトとティティは嵐の中から救ってくれた恩人じゃなあい。恩人にはお返ししなくちゃあ」

 シェナフィはのんびりと言う。

 璃采達一行にシェナフィが加わった。


「で、これからどうするよ?」

「そうですね。まずは町の人にでも聞いてみますか」

「よっしゃあ。オレっちの出番だな」

 ロントは張り切っていたが出番は無かった。

 というのもロントは通訳が必要だと思っていたのだが、璃采は召喚石の影響で言葉が解ったし、リズフィは王族のたしなみとして何処へ行ってもいいように、世界中の主な言葉は勉強済みだった。

 そしてゼリメラ大陸へ来ようと以前から思っていたシェナフィも、魔族の言葉を勉強していた。

「オレっちの存在意義……」

 ロントはガックリと肩を落としていた。


 璃采達は手分けをしてレヌカの町の人々に聞いてみたが、西の魔女を知っている者は誰もいなかった。

「冒険者ギルドで聞いてみましょう」

 一行は冒険者ギルドへ向かった。


 レヌカの冒険者ギルドは町の中央付近に建っていた。

 街並みと同じく白い四角い三階建の建物だった。

 中へ入ると一階は広さこそ違えども、ルネムと同じような造りであった。

 奥の受付で聞いてみる事にする。


「すみません。ちょっとお尋ねしたいのですが」

「はい、何でしょう」

 受付の魔族の女性はにこやかに答える。

「西の魔女の情報はギルドにありますか?」

「西の魔女ですか?」

「はい。些細な噂でも何でもいいんです」

 受付嬢は困ったような顔をして、「少々お待ち下さい」と受付の奥へ消えて行った。

 三十分位して戻って来た受付嬢が申し訳なさそうな顔で言った。

「ここ十年の資料には魔女関連の情報は上がっていません」

 十年分を調べていたらしい。親切な受付嬢に感心する璃采達。

「いえ、ありがとうございました」


 璃采達がギルドを出ようとすると声を掛けられた。

「さっき聞こえちまったんだが、兄ちゃん達魔女を探してるのか?」

 四十代位の魔族の男性だった。

「はい。何か御存じなんですか?」

「何でもいいんならな」

「是非お願いします」

 

 璃采達はギルドを出て隣のカフェのような場所に入った。

 メニューを見ても璃采は読めなかった。

 シュナッガ大陸の文字が読めるようになった璃采であったが、また新たな文字の出現であった。シュナッガ大陸には様々な国があるが、公用語として同じ言葉と文字が使われていた為、覚えてしまえばシュナッガ大陸内では不自由しなかった。

 璃采は読めないのでロントと同じ物を注文した。


「ではムリクさん。お話をお伺いしたいのですが」

 ギルドで話しかけて来た男性はムリクと名乗っていた。

 ムリクは椅子に深く座り、少し前かがみになって話し始めた。

「おうよ。これは百三十年程前、俺がまだ小さかった頃の話だけどな」

 百三十年前と聞いて璃采は驚いたが、よく考えてみると魔族の平均寿命は三百年だった事を思い出した。


「俺の住んでた町に行商人が来たんだ。そいつが面倒見のいいやつでよ。町の子供にも懐かれてた。そんで町の子供を集めて話をしてくれたんだ」


 行商人がある村へ行った時の事だった。

 その村の近くに魔物が出るようになって村人は恐怖に慄いていた。

 魔獣ならば村人でも魔法で倒せるが、魔物となると殺されるだけだ。

 魔物は魔獣が進化したものだと言われるが、強力な魔物だと知能も高いらしく魔法も使いこなす。

 

 冒険者ギルドに依頼を出していたが、報酬が安い事と辺境の村という事、そして強力な魔物討伐という事もあり、受けてくれる冒険者は現れなかった。

 いつ魔物が村へ襲ってきてもおかしくない状況だった。

 もし一度でも襲われたら、撃退する事は難しく全滅するだけだ。


 そんな村だとは知らずに行商人は行ってしまったのだ。

 村で話を聞いた行商人は直ぐに逃げ出そうとした。

 しかし運悪く、とうとう魔物が村へ現われてしまった。

 絶体絶命の状況で村人に混ざり魔法で撃退を試みるも、全く効いている様子は無かった。


 村人達が諦めかけた時、魔物の前に一人の女性が立ち塞がった。

 女性は聞いた事無い呪文を唱えたかと思うと、一撃で魔物を倒してしまった。

 行商人も村人も唖然とした。

 そして現れた時と同じように、女性はあっという間に消えてしまった。

 行商人も村人もあの女性は魔女ではないかと思った。

 ピンチになると魔女が助けに来てくれる。


 というヒーロー物のような話を子供達に聞かせたそうだ。


「俺もその時は魔女に憧れてよ。いつか会ってみたいと思ってたぜ。まあ、大人になった今なら行商人の作った御伽話みたいなもんじゃねえかと思うようになったけどよ」

 ムリクは運ばれて来た紅茶のような琥珀色の飲み物を口に運んだ。


「その村の名前は分かりますか?」

「うーん何だっけな。なんせ子供の頃の話だからなあ」

 ムリクは頭を掻きながら考えているようだった。だが結局思い出せなかった。


「まあとりあえずムリクの住んでた町へ行ってみっか。村の名前を覚えている奴もいるかもしれねえし」

 ロントの意見に皆が頷いた。

「ムリクさん、ありがとうございました」

「まあ大した話が出来なくて悪いな」


 ムリクと別れ、璃采達はまずはムリクが住んでいたドムスという町へ向かう事にした。

 

「シェナちゃんも加わったけど、移動手段はどうする?」

 ロドルーブの熊手は、二人は乗れるが三人は無理だった。

「これ勝手に熊手って呼んでるんですが、飛行用の乗り物らしいです。同じ様な物がこの町に売っていれば買いましょう」

 道具屋を覘いたが、魔族は飛べる為、飛行用の乗り物は売っていなかった。


「無いな。どうすっか」

「私がまたリトに乗るのも悪いし」

 璃采はロドルーブの言葉を思い出した。

「魔女は箒に乗って飛ぶらしいです」

「おし。じゃあ箒を買えばいいんだな」


 璃采達は雑貨屋へ行った。

 本当に箒で飛べるのか不安だったので、ロントは箒に跨って浮くか実験する。

「おお。ホントに箒で飛べるじゃん」

 雑貨屋の店員は箒に跨るロントを、変な人を見るような目で見ていたが、何も言わなかった。道具に乗って飛ぶ習慣が無いので、ロントの行為が奇妙に映ったのだ。

 ロントは色々な箒に跨って一番乗りやすい物を選んで購入した。


「あらあ。じゃあ私も買おうかしら」

「えっシェナさんも飛べるんですか?」

「やったことないから判らないわあ」

 シェナフィは適当な箒に跨って試してみる。

「すごいわ。シェナ。絶対私も頑張って飛べるようになるわ」

「ふふふ。リズならきっと出来るわあ。リズには才能があるもの」

 シェナフィも自分にしっくりくる箒を選んで買っていた。


「それじゃあ出発しますか」

 璃采とリズフィがロドルーブの熊手に二人乗りし、ロントとシェナフィはそれぞれの箒に跨って飛ぶ。ティティは自分で飛んだり、熊手に乗ったりと自由にしている。


「やっぱ飛行用というだけあってそっちの方が乗りやすいな」

 箒に跨ったロントが熊手を指差す。

 璃采は箒で飛んだ事が無いので違いが判らない。そもそも璃采自身が操作しているわけでは無いので、例え箒で飛んでも判らないだろう。

「ふふふ。風が気持ちいいわあ」

 全身プレートアーマーなのに風を感じられるのだろうか、と璃采は疑問に思った。



 ドムスの町はレヌカより北西に少し飛んだ所にあった。

 ここでも手分けして聞き込みをした。

 そして二時間後村の入口に集まった。


「僕の方では、ムリクと同じく商人の事を覚えている人はいましたが、村の名前まで覚えている人は見つかりませんした」

「私も同じだったわ」

「ごめんなさい。私もそうよお」

「へっへー。オレっちはバッチリ聞いたぜ。ヤードゥって村だ。しかも村の場所を知ってた奴も見つけたぜ」

 一同は「おお」と感心した。ロントを少し見直した璃采であった。

「オレっちだってやるときゃやるんだぜ」

 ロントはドヤ顔だった。



 一行はそのままドムスの町を出て、街道沿いに町の人に聞いた方角へ向かった。

 途中であった町で宿を取りながら、三日目にはヤードゥ村の近くまで来た。


「リトー。あっちの方で何か騒いでるー」

 ティティがそんな事を言った。

「何だろう。行ってみようか」

 ティティが言う方へ行ってみると、二十匹位の大きな鳥のような魔獣の群れに囲まれた一人の魔族がいた。

 これではいくら飛べる魔族でも、飛んで逃げるわけにもいかない。

 さすがにこれはまずいだろうと、璃采達は近くに降りて助太刀することにした。


「あらあ。久しぶりの戦闘ね。私に任せてえ」

 そう言うとシェナフィが前へ出た。

 あれだけ魔法が上手なシェナフィの事だ。どんな魔法が飛び出すのだろう、と皆は期待に胸を膨らませていた。


「うおりゃあああ。かかってこいやあ」


 璃采はその声に混乱し、誰が言ったのかと辺りを見回した。

「おるぁあ。弱い。弱いぞおおお」

 声の先には、パルチザンを豪快に振り回すシェナフィがいた。

 璃采、リズフィ、ロントの目が点になる。

 ティティだけは目を輝かせて「おおー」と興奮していたが。

 

(何だろうあれは。運転すると人が変わる人がいると聞いた事があるけど、似たようなものなのかな。戦闘すると人が変わるという……)


 だが戦闘力は確かなようで、空から襲い来る魔獣をパルチザンで叩き落とし、斬り裂き、突き刺す。正確に一匹また一匹と倒してゆく。

 間もなく魔獣は一掃された。


「あらあ。もう終わりなのお」

 おっとり口調に戻ったシェナフィは、まだ暴れ足りないといった様子だ。

「ありがとうございましたズラ。助かったズラ」

「いいええ。良い運動になったわあ」

 魔獣に襲われていた魔族の青年に話を聞くとヤードゥ村の人だったので、一緒にヤードゥ村へ行った。


「村長に話してくるズラ」

 そう言うと青年は村長の家へ向かった。

 そして青年が戻って来て村長の家へ案内してくれた。璃采達の話を聞いてくれるという。


「此度はラールクが危ない所を助けてくれたそうで感謝するズラ。わしはこの村の村長のズワコダという者ズラ。して聞きたい事とは何ズラ?」

 家の中へ案内された璃采達は、真ん中にコの字型のテーブルが置いてある会議室のような部屋で椅子に座った。この村の村長宅は公会堂も兼ねているようだ。

 璃采はムリクから聞いた商人の話をした。


「あの時の女性の事ならよく覚えているズラ。この村を救ってくれた救世主ズラ」

「その方はどんな女性だったのでしょう?名前は分かりますか?」

「残念ながら名前を聞く前に空へ飛んで行ってしまったズラ。だが顔ははっきり覚えておるズラ」

 年は魔族で言う所の七十代位。人族で言えば二十代半ば位に見えるらしい。

 目の色は黄色に近いアンバーで髪は明るいカーキ色。少し垂れ目で右目の下に泣き黒子があったそうだ。ネストルテに魔女達の外見までは聞いていなかった。聞いておけばよかった、と後悔するがもう遅い。


「その方は魔女なんですか?」

「本当の所は分からんズラ。ただ、あの強さは異常ズラ」

 魔女と思える人物がどこへ行ったかは分からないらしい。百三十年も前の話なので仮に分かったとしても今そこにいるとも限らない。

 村長の家を後にした璃采達はこれからの事を話し合った。


「魔女らしい人物の外見はわかったけどよう。これだけじゃ探せないな」

「そうですね。だけど、僕達は今まで西の魔女知りませんかという感じで探していました。でも今回の事で一つ解った事があります」

「何だ?」

「西の魔女は西の魔女として行動していないかもしれないという事です」

「そうね」

「周りが勝手に魔女だって言ってるのよねえ」

「ええ。だから魔女についての逸話や御伽話を探って行けば何か分かるかもしれません」

「そういう事なら首都カストラへ行って図書館でも見てみるか?あそこの図書館はでかいから、各地に伝わる民話なんかも置いてあると思うぜ」

 

 ゼリメラ大陸は大陸全土がゼリメラ共和国となっている。その中にいくつもの地方があり町がある。

 首都カストラは大陸中央部に位置するメイスィ地方にある。

 因みにヤードゥ村はザーバ地方というらしい。

 このヤードゥ村の西側に、南北に連なるイスティオ山脈があり、大陸中央へ行くには大きく迂回しなければならない。

 イスティオ山脈には八千メートル級の山が多く存在し、空を飛べる魔族でも、空から越える事は不可能だった。


「あの山越えるのー?おもしろそー」

 アクアマリンの瞳をキラキラと輝かせ、興味津々といった様子のティティ。

「ティティは大丈夫かもしれないど、人間にはちょっと無理かな」

 酸素マスク等、酸素を確保する物が無ければ、低酸素症になって意識を失ってしまうだろう。

 ティティは少し残念そうだったが、南の迂回路を通ってカストラへ行く事にした。


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