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オーラの魔法使い  作者: 白木渥真
第一章
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第十六話 トリック

 洞窟はすぐに見つかった。人が二人並んで歩ける程の洞窟の中を進んで行く。 


 暫らく行くと開けた場所に出た。

 全員目の前の光景に感動して言葉が出ないでいる。

 洞窟の壁や天井一面がクリスタルのような透明な鉱物で覆われ、璃采達の明かり採りの為の光魔法にキラキラと反射していた。


「少し頂いて行きますか」

 落ち着きを取り戻した璃采が言うと、「「「少し頂いて行きますか」」」とそこら中から聞こえた。

「何だこれ?」

「「「何だこれ」」」

 ビルの声も聞こえる。反響しているようでは無かった。強いて言えば、全体が巨大なスピーカーで中から音が聞こえるといった感じである。

「これは!」

「「「これは」」」

 璃采は試しに欠片を採りビルに持たせて、洞窟の入口まで戻って欲しいと頼んだ。


 洞窟の入口まで戻ったビルは手元の鉱石を見る。

『ビルさん。聞こえますか?』

 すると、璃采の声が聞こえて来たのである。ビルは驚愕の表情を浮かべながらも手元の鉱石に向かって話す。

「ああ、聞こえる。何なんだこれ?」

『わかりません。でもこれは使えます』

 ビルは再び鉱石の広場まで戻り、全員で大量に鉱石を採掘した。

 大量の鉱石を抱えて一行はもう一度東の魔女の許へ向かった。


「な、なんじゃ」

「すみません、お願いがあるのですが」

 そうしてマッサージと引き換えにお願を聞いて貰った。


 数日後、大量の鉱石を抱えて一行は森の出口へ向かって歩いていた。

 そこへいきなり脇の茂みから一匹の魔獣がリズフィ目掛けて飛びかかって来た。

「リズ!」

 咄嗟にビルがイルの後ろを歩くリズフィを庇う。

 飛び付かれ転倒したビルの上に乗るピューマのような魔獣に、クレアがすかさずロングソードで切りつける。ティティも魔法で援護する。ダルは先頭を歩いていたので手が出せない。

 璃采はその様子をただ見ているだけしか出来なかった。その時の璃采は無意識に唇を噛み、拳を握りしめていた。

 そうしてピューマのような魔獣は絶命したが、ビルは肩口にがっつりと食いつかれ腕は斬り裂かれていた。


「ティティ、治癒魔法をお願い」

「わかったー」

 ティティと一緒にリズフィも治癒魔法を施す。

 ビルは痛みで苦しそうにしながらもリズフィを気遣う。

「リズ……平気か?」

 リズフィが一瞬固まったように見えたが、治療を続けている。

「は、はい、おかげさまで助かりましたわ。ありがとうございます」


 治癒魔法により、食いつかれた傷や斬り裂かれた傷が閉じて行く。

 その後の回復魔法で細胞分裂が活性化し傷の跡がきれいに消えた。

 璃采はその様子を見ていて何かに気付いた。


 その後は何事も無くヨンバイまで戻って来る事が出来た一行であった。

 その夜ビルの家で会議が行われた。

 冒険者ギルドで情報を集めて来たビルが話し出す。


「シュオルブ王国は最近軍備拡大に力を入れ、兵を集めているらしい。近々戦争を始めるかもしれないってんで、チェルド共和国も警戒態勢だそうだ。どこに攻め込むつもりかはわからんがな。あとロマノブ皇国で名のある冒険者が殺されたってのも聞いたが、まあルデールとは関係ないだろう」

「戦争なんて……ルデールお兄様は何を考えていらっしゃるのかしら……」

「ルデールを追い落とすなら早い方がいいな」

「だが、まだ証拠がないですな」

「その事で一つ試したい事があるんですが、ビルさん実験台になってもらえますか?」

 璃采が提案すると、ビルは「えーっ俺かよ」と言いながらもしぶしぶ実験台になる。


「ティティ、ビルの髪の毛に回復魔法を掛けてみてもらえる?」

「うんーいいよー」

 ティティが回復魔法を掛けると、ビルの髪の毛が伸び出した。

「回復魔法にこんな使い方があるとは驚きですな」

 皆驚いてビルに注目する。髪は肩位まで伸びた。


「ティティありがと。ルデールがレギールに成り済ました方法はこれかと思います」

 回復魔法はあくまで病気や怪我の回復に使われていた為、髪に使うのは盲点だった。

「しかし、こうして見ると金髪に青い目で、もっと色白にすればルデールに似てるな」

 そう言いながらクレアはビルの髪の毛を引っ張った。

「いてっ。やめろよ。だがこれだけじゃまだ証拠にならないな」

 一同はうーんと唸る。

 そこへ目を見開いたリズフィ王女が言った。


「お兄様?」


 全員がリズフィ王女を不憫そうに見る。確かにぱっと見ルデールに似てなくもないが、さすがに身内が言うのはどうかと。


「ヴィドルお兄様ではありませんの?」

 全員の不憫そうな目が吃驚した目に変わる。

「いやぁ、誰の事だ?人違いじゃねえか」

「いいえ。ヴィドルお兄様に間違いありませんわ」

 とうとうリズフィは言い切った。璃采、クレア、イルがビルを見る。ティティはどうでもいいといった様子でパタパタし、ダルは璃采達とは違った目でビルを見ていた。


「魔獣に襲われた時、私の事をリズとお呼びになりましたわ。ヴィドルお兄様もそう呼んでいらっしゃいましたわ」

「そこのティティだってリズって言ってるだろ」

「ヴィドルお兄様は王宮に居た頃、今のように髪を伸ばしていらっしゃいましたわ。そのお顔を見てはっきりと思い出しましたわ」

 確信を持ったリズフィは引き下がらない。しどろもどろに弁明するビル。

「もうよいのではありませんかな」

 ダルがビルに優しい目を向ける。

 ビルはその言葉を聞き、観念したように自分がヴィドル王子だと認めたのだった。

 そして、ビルは当時の事を語った。


「リズはまだチビだったから判らなかったかもしれないが、俺は当時からレギールよりもルデールが気になっていた。ルデールはいつもレギールの陰に隠れていたが、その目には嫌な光を宿していたように見えたんだ。こいつ何かやべーって感じがしてた」

「私はレギールお兄様が怖くて、一緒にいたはずのルデールお兄様を見てはいませんでしたわ」


「アルディの一歳の誕生日の時の大預言者ヌレドマの言動を覚えているか?それを見たルデールの顔が怒りなのか嫉妬なのか、とにかく歪な顔をしているのを俺は見た。それでルデールをこっそりつけたんだ」

 ビルはそこで言葉を一旦区切り、決心した表情で言った。


「アルディを殺したのはルデールだ」


 その言葉に全員息を呑んだ。リズフィはショックで口元を押さえ蒼い顔になる。

「リュレ王妃が目を離した僅かな時間だった。俺は少し離れた所から見てた。ルデールがアルディに何かしているように見えた。直感がやばいと告げて直ぐ飛び出したんだが、もう毒を飲ませた後だった」

 そしてルデールはその場を逃げるように去り、ヴィドルは戻って来たリュレ王妃に見つかったそうだ。

 リュレ王妃はヴィドルの言う事を信じてくれたらしい。だが、他の者がまだ子供であったヴィドルの言う事を信じるか疑わしかった。その場にいたのはヴィドルだけなので、ヴィドルが嘘を言っているのだと犯人にされかねない状況であった。

 そしてルデールに次に狙われるのは、目撃者であるヴィドルかもしれないという事もあり、逃げる事にしたそうだ。


「あんな所にリズやフェルを残して自分だけ逃げ出してすまなかった」

「いいえ。その状況ではしょうがなかった事ですわ。それよりお兄様が生きていらして嬉しく思いますわ」

 リズフィの瞳からは涙が零れ落ちた。


「ダルさんは知っていたようですが、ダルさんは何者ですか?」

 強さといい、物腰といい只者ではないと璃采は思っていた。

「ダルは元近衛騎士団団長ダルヴェだ」

「えっ。ダルヴェ団長と言えば、アルディが殺害された責を負って解雇されたと聞いておりますわ」

「アタシも聞いた。リュレ王妃が責め立てて解雇を強く望んだと」

「表向きはな。本当の所はリュレ王妃が俺の護衛に付けてくれたんだ」

 それを聞いたリズフィが嬉しそうな顔をする。


「ところで、ルデールを失脚させてどうするつもりだ?お前が王になるのか?」

 そう尋ねたのはクレアだった。

「俺は王にはならない。ただルデールが許せないだけだ」

「ではリズフィが女王になるんですか?」

 璃采がリズフィを見る。

「ええっ私はそんなつもりはありませんわ。こんな世間知らずな私に務まるはずがありませんもの」

「まあそん時考えりゃいいさ」

 そうは言うもののビルには何か考えがありそうだった。


「もし、このまま証拠が無くてルデールを失脚させられない場合はどうするつもりですか?」

「革命でもすっか」

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