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神様のコラージュ  作者: 飛来颯
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書類下の絆

 ‥‥‥栗栖要のアジトにて。2人は街をブラブラし過ぎた為、時刻は既に6時を過ぎていた。

 食堂での昼食後、あまりにもウルサく聞くので部屋に戻った栗栖は、合田に2つ折りにした紙を見せた。

 

 「‥‥‥なんだよ、ソレ?」


 合田は、帰って来る途中でコンビニで買った、チョコバーにかぶり付く。すると栗栖は、いつになく神妙な面持ちで話した。


 「俺と彼女の、婚姻届けだ」


 それを聞いた途端、慌てて紙を開いて中身を確認する。そこに書かれてたのは‥‥‥妻の欄に書かれた《石持楓》という名前。だが、夫の欄には栗栖が書くべき筈の名前が書かれてなかった。


 「え‥‥‥これって、どうゆうこと? この前、離婚したって言ってたんじゃないか。大体、結婚しなきゃ離婚なんか出来る筈ないだろ?」


 「俺に戸籍がないのに、結婚なんか出来る筈ないだろ? 名前も出生も全てデタラメなのに」


 栗栖は、遠くを見つめながら話しを続けた。


 「もちろん、彼女を愛してたよ? 結婚も彼女が望むからだ。〝式は挙げなくてもいいから、形に残したい〟って言うから指輪交換だけした。彼女は、看護婦だから忙しくって、区役所に行く時間が中々なかったんだよ」


 ‥‥‥だから、代わりに出しといてあげるって、彼女の捺印を貰って、ずっと提出せずに持ってたんだ。

 浮気がバレたりとかもあったし、どの道にしても別れる事になったんだけどね。

 それに今は、顔も髪型も変えてしまったから、もし街でバッタリって事があってもバレることはないよ。


 ハハッと笑う、栗栖の一方的な話しに、思わず本音が零れ落ちた。アンタ、サイテーだな。と‥‥‥


 「そんなことより、今日は早く寝ろ。明日も早いからな」

 

 そう言って、彼は早々にベッドに潜り込もうとする。しかも真っ裸で‥‥‥

 いや、ちょっと待てよ。何、腕枕をする態勢とってんのよ? 俺、ヤダよ。裸のアンタと寝るの!

 さっきまで真剣な話してたのに、責任感ないし緊張感ないわ、まるっきりのダメ人間だな。

 俺は大丈夫だから、心配しないで勝手に寝ろよ。

 俺は、ソファーで寝ます。お休み〜! 合田は寝心地の悪いソファーで一夜を明かすこととなった。




 ‥‥‥同時刻、都内にある高級マンション。その部屋の表札には《新庄秀美》と書かれている。

 その一室にて、バスローブ姿の男女がある会話をしていた。

 一人は関東系の暴力団員の《前川》という男、そして一人はこの部屋の家主《新庄》である。


 「えっ、どういうこと? 《立石房弘》って男が存在しないなんて」

 

 システムキッチンから、ワインとツマミのチーズを持って前川の居るソファーへと座った。


 ウチと繋がりのあるトコロの〝情報〟だから確かだ。この名前と同じ人物は、県内に3人居たらしいが、どれもこれもオッサンかジジイばっかで、秀美のいうような風貌の男は居ないらしい。

 それどころか《栗栖要》って、変なヤツが俺らの周りを動き回っているらしい。

 どっか組織に属しているヤツらしいが、ソイツね出生も本名も顔も全て謎らしいんだ。

 氏素性は知らないのに、ヤツの〝壊し屋〟という職業は、誰もが知ってるなんて変な話だよ。

 

 「何よ、その話。それが本当なら、どんな行動をされてても掴みドコロがないじゃない。一体、何が目的かしら? 門田の記憶も戻るか分からないし。付き添いが正体不明。今、教団の信者たちも、裏でコソコソしてるみたいだし‥‥‥」


 それを聞いた前川は、初めて聞いた。というような表情で、新庄の顔を見つめた。


 「なんだよ? その話は初めて聞いたぞ。御前の様態が分からないのに、この状況で信者に反乱でも起こされてみろ、今まで築き上げたものが、全て崩れ落ちてしまうぞ」


 アイツら信者と、私たちの考えは全く違うわ。

 そうね。でも問題は一つずつ、解決していきましょうよ。

 そう言って新庄は、バスローブを脱ぎ捨て前川の唇にキスをした。彼女の胸元には、相変わらず〝大蛇〟が牙を剥いていた。


 「まず、最初に門田の付き添いに来た《立石》を泳がせてみましょう。何か、面白い答えに辿り着くんじゃないかしら?」

 


 ‥‥‥そして、事態は急展開を見せる。

 最初に、それを知ったのは〝情報屋〟からの電話だった。




 「なんだって? 教団に潜らせた奴が行方不明になったて?」


 その話を聞いたのは、朝食を食べている時だった。この日は、油揚げと長ネギの味噌汁に白米、サバの生姜焼き。

 ホカホカのご飯の上に、納豆とオクラの叩きを乗せて栄養価バツグンのネバネバ丼の完成!

 もちろん、栗栖は何もやっていない。

 なんせ、簡易式のキッチンで「オクラをまな板の上で転がしてくれ」と言えば、オクラをオハジキのように弾いて遊ぶし。

 「じゃあ叩いてくれ」と頼めば、バンバンと包丁の腹で本当に叩き、全くもって役に立たないので、ソファーで猫のマルタと遊んどけ。と追い返した。

 ちなみに、ご飯は炊飯器なかったから土鍋炊きである。


 「でも、なんで居なくなっちまったんだよ」


 ‥‥‥情報屋の話によると、2時間ごとに行われる定時連絡に、昨夜の10時頃から取れなくなってしまったらしい。


 「でも、その時間帯だったら健全な男だったら、女と何処かにシケ込んだじゃねぇの?」


 栗栖の問い掛けに情報屋は『いや、それは有り得ない』と‥‥‥


 なんせ、教団のあまりに異様な雰囲気に圧倒されてしまい、勃つモンも勃たなくなったて、言うんだよ。

 それに、ヤツはGPS機能付きの隠しカメラを教団の服に仕込ませておいたから、カメラ自体も行方知らずになることなんて、まず有り得ないんだよ。


 『だから、お前ら二人の内から一人だけ教団の潜入調査をしてもらいたい』






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