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神々の、黄昏(2)


水平線を突き抜ける光は通過する全てを無に帰す。

銀色の機体だった。 それは眩い輝きを放ちながら海を、大地を、空を、吹き飛ばして突き進む。

中国大陸某所。 ロシアゲートから進軍してくる天使の群と戦う同盟軍のヨルムンガルド隊の姿があった。

銃弾と光の飛び交う戦場を視認し、銀色の機体に乗り込んだ少年は頬を歪ませる。

そして加速。 突き抜ける後に残る音の残滓。 両手に伸ばした手ですれ違う一瞬、ヨルムンガルドの首を四機、跳ね飛ばす。


「…何だァッ!? 何が起きたッ!?」


通過の衝撃だけで天使が吹き飛ばされていく。 巨大な爪に頭部を剥ぎ取られたヨルムンガルドはその場に静かに崩れ落ちる。

誰もが振り返るよりも早く、天使たちが動きを止めた。 まるでそうする事をずっと昔から知っていたかのように、自然に。

静まり返る世界に、子供の笑い声が響き渡る。

向かってくる存在に気づいた時、世界は時を止めるように誰もが呼吸を止めた。


「隊長…! あれはなん…っ!?」


「おはよう、人間諸君。 始めまして、人間諸君。 そして…」


さようなら、人間諸君。

正面に翳す片手を中心に渦巻くフォゾン。 銀色の魔方陣から放たれた光が大地を焦土と化し、一瞬で天使もヨルムンガルドも世界から退場した。


「この世界はいい…。 まだ壊す命が残っている…。 それは素晴らしい事だよね。 そうは思わないかい―――スヴィア」


コックピットは玉座のようだった。 光の中、足を組んで頬杖を突く少年は嬉しそうに微笑む。

呼応するようにヴァルハラの地下に眠るユグドラシルが目を覚まし、静かに悲鳴を上げ始める。

それは大地を伝い、世界中に生きる命に警告する。 世界の終わりが始まった事を告げている。


「どうするつもりなの、スヴィア…! もう、時間が無いというのに…!」


ジェネシス本部でコンソールに拳を叩きつけ、歯を食いしばるリフィルの姿があった。

それとほぼ同時期、本部の扉が開き、白衣の男、アルバが入ってくる。


「司令。 彼女が目を覚ましました」


アルバの影。 白く長い髪が揺れた。

全身に包帯を巻き、その合間から覗く金色の瞳。 死んだはずの少女が、そこには立っていた。




⇒神々の、黄昏(2)




「………なんっ…だ…!? この感じ…ッ」


背筋に走る悪寒。 ほぼ同時にその場に居た誰もが顔を上げた。

結局室内庭園で考え事をしていたリイド、その隣に座って眠っていたミリアルドも、その背後からリイドを見張っていたエンリルも、同時に。

それどころではない。 先ほどまで遊んでいた子供たちも同時に空を見上げ、怯えるように身を縮めていた。


「すごく嫌な感じがする…。 ミリアルド、これは…?」


「こりゃ、きやがったかなぁ」


「…はい」


常に笑顔を絶やさないミリアルドでさえ、冷や汗をかいて苦笑する。 状況が飲み込めないリイドはただ眉を潜め空を見上げていた。

付け加えそこには空などない。 コンクリの天井があるだけだ。 しかしその先にある空に、恐怖の根源が確かに息づいているのを感じる。

それも、とんでもない速さで今まさにこの場に現れようとしている。 地球上に存在する全ての命にとっての憎悪が、今ここに向かってきているのだ。


「来たって何が…!?」


「エンリル、リイドを避難させてやってくれ。 子供連中も頼む」


「ちょ、ちょっと…ミリアルドッ!! どこに行くんだよっ!?」


「お前は戦えないだろ? ここは俺たちの家だ。 守るのも俺たちの仕事だ」


「何だよそれ…わけわかんないって! なんでみんな黙ってるんだよ!! ボクも手伝う! よくわかんないけど、これは…存在を許しちゃいけないものだ!」


全身を駆け巡る悪寒がせかすように伝えてくる感覚。 リイド・レンブラムは誰よりもその感覚から逃れることが出来ない。

しかしミリアルドはリイドの肩を叩き、子供たちを指差す。


「ガキ連中は頼んだぜ。 お前にとっちゃ弟みたいなもんだろ? 後は任せる」


「そんな…。 ミリアルド…! ミリアルドォッ!!」


「リイド…」


「離せよエアリオ…っ! あっ―――いや、その、ごめん…」


腕を掴んだエンリルに対し、そのオリジナルとなる少女の名前を叫んでしまった。

沸騰しかけていた思考がクールダウンし、振り払おうとしていた腕から優しく力を抜いた。


「君は、エアリオじゃないのに…」


「…わたしは、気にしませんから」


「でも…」


「今はそんな個人的な感情で行動するべき時ではありません。 早く避難用シェルターに移動してください」


「あ、そ、そうだね…。 子供たちを避難させなくちゃ…」


あわてて振り返るリイドの足元、に集まった子供たちはリイドのズボンを弱弱しく引っ張り、泣き出しそうな顔で問う。


「ミリアルドは…? お兄ちゃんは、どこ行っちゃったの…?」


何も答えられなくなる。 ミリアルドだけで勝利できるような相手でないのは明確だ。 いや、アーティフェクタ全機をそろえたところで勝率は零に等しい力。

究極的な絶望の権化。 そんな化け物じみた何かが迫っているのだ。 安全だなんていいきれるはずがない。

それでもリイドは屈んで子供たちの頭を撫でると強く笑って見せた。


「ミリアルドなら大丈夫だよ。 みんなを心配させないように、早く避難しよう。 それが今君たちに出来る一番の応援だよ」


「…うん、わかった」


「エンリル。 避難用シェルターはどっち?」


「は、はい…。 こっちです」


自ら率先して歩き出すリイドの傍らで疑問を胸に顔を上げるエンリル。

何故、リイドはこんな状況下で、敵陣の中で、こんなにもひたむきなのだろう。

自分にはきっとマネの出来ないことだ。 誰かを受け入れ、誰かの為に努力できる力。


「変わりましたね…リイド・レンブラム」


「何か言った?」


「いえ…。 それより、あなたはハンガーに向かってください。 そこでマスターに話を伺ってください」


「でも…」


「大丈夫です。 避難訓練くらいは、完璧ですから。 わたしもすぐに追いつきますから、早く」


「わかった。 みんな、エンリルの言う事聞いて頑張るんだよ」


リイドの呼びかけに頷く子供たち。 苦笑して背を向けるリイドに子供の一人が声をかけた。


「がんばれ…! がんばれ、リイドおにいちゃん!」


振り返らないで手を上げて答える。

少しだけゆっくりと歩き出し、それから徐々に加速する。


「がんばれ、か…」


緩やかな笑顔。 それから強く気を引き締め、前を見る。

先ほどより俄然力がわいてくるのを感じる。 そうだ。 自分が頑張らないでどうするというのか。

こんな状況でも出来ることが何も無いはずがない。 何かあるはずなのだ。 自分にも出来ることが、何か―――。


「それにもう…ここはボクにとってただの敵陣なんかじゃない」


同じ運命に抗う人々が集まる場所。

分かり合えもしないうちに、無くなっていいはずがない。


「そうだ、ボクらは分かり合える…」


もう絶対に理解しあえないと思うような相手でさえ、その意外な一面に心を開く事もある。

だから何もしないで諦めるなんてことはしてはいけない。 それは自らの可能性を自ら踏み潰す行為だ。

本当の目的がどこにあるのかはわからない。 けれどスヴィアがこれを予見していたのならば、まだ何かあるはずなのだ。

逆転の切り札が。 リイドはそこに、賭ける事にする。




「うおおおおおっ!!」


基地上空付近。 空中で激突する二つの機影があった。

片方はカイトが操る蒼いヘイムダル。 もう片方は同じく蒼いカラーリングのヨルムンガルド改良機、ウロボロスだ。

空中を交差した二機は距離を取り、ウロボロスはフォゾンライフルをヘイムダルに向ける。


「こんな時に襲撃か。 裏切ったというのか、エリザベス…!」


「ち、違う! あたしは、裏切ったわけじゃ…!」


カイト機の後方で武器を手に出来ないで居るテイルヴァイトが浮遊していた。 緊迫した空気の中、エリザベスは戸惑いを隠せないで居る。

先行していたテイルヴァイトとカイト機が交戦状態に入ったことにより、後続のアイリスとオリカはコースを変更する。

それは移動しながら決めていた事であり、リイドの救出を最優先とするならば当然の行いだった。

幸いカロードの注意は完全にエリザベスとカイトに注がれていたし、その防衛ラインを潜り抜ける事は難しくはなかった。


「後はカイトくんとエリザベスちゃんが上手く説得してくれる事を祈るのみだね」


そう、それが唯一彼らの立てることが出来た作戦。

それはとてもシンプルで、唯一争いを回避できる方法―――説得。

エリザベスはジェネシスに拿捕され、そこで人々の戦いを見て少しだけ心境が変化した。 その世界に対する希望のようなものを、仲間に伝えることが出来たならば…争わずに済む方法もあるいは存在するのではないか。

それは淡い希望。 確約の無い未来。 それでも彼らは…特に彼は、その可能性に賭けたかった。

ラグナロクの一人であるエリザベスと触れ合い、それが化け物でもなんでもないただの人間だと気づけたカイトは。


「裏切るもくそもねえ! 争う必要なんて、どこにあるんだよッ!!」


想い人を奪った組織に対し、偽善を吐く。

その罪も罰も己で抱え、これ以上の偽善を必要とせぬようにと、自ら率先して吐き出したんである。

しかしウロボロスの銃口は無慈悲にもヘイムダルから―――テイルヴァイトに狙いを変えた。


「下らない世迷言だ」


放たれた光。 驚きのあまり身動き出来ないエリザベスをつれ、攻撃を回避するヘイムダル。

それを追撃するように放たれる無数の光。 それをかわし、カイトは叫ぶ。


「馬鹿野郎ッ!! こいつにはお前の妹が乗ってるんだぞ!? 見てわからねえのか!!」


「そんなことは見ればわかる。 だが、ラグナロクに裏切り者は必要ない―――!」


「裏切ったわけじゃねえ!! 俺たちはただリイドを帰してもらいたいだけだ!」


「理解出来ないなエリザベス。 お前も誇り高きラグナロクの蒼の旋風ならば、拿捕された時点で自害すべきだった…違うか?」


「―――お、お兄様」


それはそうだ。 当たり前のことだ。

非公開の軍事組織。 機密情報の塊であるテイルヴァイトと自分自身…その情報を保護するには、死と破壊の一手しかない。

わかっていた。 けれどそうできなかったのは、家で心配して自分を待っている家族の顔が脳裏をちらつくから。

みんな待っていてくれる。 おかえりっていってくれる。 そう信じていたからこそ、ここまで恥を晒しても戻ってこられたのに。


「そんな…あたし…。 あたし…っ!」


震える両手。 こんな事ならばさっさと自爆でもして死んでおけばよかった。 そうすればもう、悲しいことなんて何も―――。


「エリザベス…」


「ひぐっ…なに…よう…っ!」


コックピットで泣きじゃくる少女に聞こえてくる少年の声。


「先に謝っておく…」


その言葉は怒りに満ちていて、少年は歯軋りして目の前の敵を敵と認識する。


「説得は中止だ! 気にいらねえんだよ、あいつ…!!」


テイルヴァイトを下がらせると同時にその尻尾を手に取り、チェーンソーを構えて前に出る。


「コックピットから引き摺り下ろして一発ぶん殴ってやらなきゃ気が済みそうもない」


「か、かいと…?」


「言うだけならば誰にでも出来る―――。 理想を語るは容易いが、それを叶えるのは限りなく不可能に近い!」


放たれる光の矢。 チェーンソーでそれを切り裂き、翻弄される大気のをかける蒼いヘイムダル。

降り注ぐ破壊の光。 潜り抜ける華麗なステップ。 チェーンソーを振り下ろすと、ウロボロスもまた剣でそれを受け止めた。

飛び散る火花とフォゾンが激突する甲高い小刻みな爆発音を耳にしながら、カイトは力強くその刃を弾き飛ばす。


「だったら道理にかなわない事をしてもいいっていうのか…!?」


「元よりこの身は摂理に反している。 僕らはこの世界に生きることを許されない―――! 生まれた瞬間から否定された命だ!! 貴様に何がわかる!? 何が!?」


両手に剣を構え、切りかかる。 しかしその剣を一撃で破壊するヘイムダル。

刃の破片と砕けた装甲の残骸がゆっくりと飛び散る中、瞳を輝かせてヘイムダルは至近距離でウロボロスを見据えていた。


「だからって―――妹を殺す兄貴がどこにいるんだよぉぉぉぉっ!!」




あわただしい格納庫の中、一人だけ静寂に包まれたスヴィアの背中。

振り返るその穏やかな瞳。 まるで一人だけ世界を切り取った場所に居るかのような男は、息を切らして駆け込んできた弟と向かい合う。


「やれやれ。 誰が外に出したんだ」


「スヴィア…。 話は、ミリアルドに聞いた…!」


眉を潜めるスヴィア。 腕を組み、冷たい視線で問いかける。


「それで、お前はどうする?」


意思を問う言葉。 それは重く、容易に答える事など許されぬ決意を要する問いかけ。

だというのに、少年は考える事もなく、しかし決して考えなしの答えではなく、きちんと吟味した上で出した答えを、すぐさま答えた。


「抗う」


見詰め合う二人。 それからスヴィアは優しく微笑み、緊張感を保ったまま呟いた。


「合格だ、リイド」


「…は?」


「お前はもう、十分過ぎるほどに、『リイド・レンブラム』だ」


「…えっと、何を言ってるの? スヴィア…」


「お前はもう、誰の模造品でもなく、お前自身だと言ったんだ」


「………………え?」


歩き出すスヴィア。 自然とリイドも歩き出し、その隣に並ぶことになった。

誰もが直ぐそこまで迫っている争いに向けて駆け出しているのに、やはり二人の歩くその場所だけはまるで別世界のように静かで、喧騒さえ耳に届かない。

少年は見上げる。 長身の兄の姿を。 その姿はいつでも凛としていて、己の行動に後悔などしない。

過去を変えられないのであれば、これからの自分がどうあるべきなのかを求め続けてきた男の、ひたむきに、愚かなほどに、前向きな姿がそこにはあった。

故に常に冷静。 どんな出来事にも動じず、常に強く在る。 どんな瞬間も予測し覚悟し得るのならば、戸惑う事などありはしない。

今ならばリイドにもわかる。 彼は、全ての業も罪も背負って歩いていくだけの覚悟があるのだと。 だからこそ、ここにいるのだと。


「リイド、リフィルは元気か?」


「えっ? 何突然…。 元気だよ? 仕事が忙しいみたいで、あんまり会う事はないけど」


「―――そうか」


立ち止まり、微笑む兄。 弟はその姿に疑問を覚える。


「私は、歴史上最大級の犯罪者だろう。 付け加え、人でなしだ。 今後後世まで語り継がれかねない名を残してしまうのは、心残りだよ」


「スヴィア…?」


「リイド」


「う、うん?」


振り返るスヴィアの真剣なまなざしに思わず直立するリイド。


「私は戦う。 だから、お前の力を貸してほしい」


「勿論だよ…。 一緒に戦おう。 納得は出来ないけど、ボクだってここを守りたい! 何も出来ないままなんて、嫌だから!」


「そうか…」


微笑み、目を閉じる。 自らの首に下げたネックレスをリイドの首に下げると、その頭をくしゃくしゃと撫でて背後を指差した。


「あのヨルムンガルドを貸してやる。 あれはお前用に高スペックに改造された特別機だ」


「普通のヨルムンガルドにしか見えないけど…」


「乗ればわかる。 こっちだ」


スヴィアに連れて行かれ、ヨルムンガルドのコックピットに乗り込むリイド。

喧騒の中、コックピットを閉じる。 閉ざされた小さな場所でシステムを起動するが、機体は動かない。


「スヴィア、これなんか動かないけど…あ、動いた」


システムが起動すると同時に急に歩き出すヨルムンガルド。 何ひとつ操作などしていないのに、勝手に歩いていく。


「す、スヴィア!? なんだこれ!? スヴィアッ!!」


『聞こえるか、リイド』


通信機から聞こえる声に耳を澄まし、コックピットのモニターにすがりついた。

遠ざかる格納庫の中、駆け込んできたエンリルの隣に通信機を耳に当てるスヴィアの姿があった。

多くのヨルムンガルドが向かう先と違い、自分だけどんどんリイドを乗せた機体だけが逆走していく。


「ちょっと、操作できないよ!? スヴィア、どういうことだよ!」


『すまん。 それは普通のヨルムンガルドだ。 私は、嘘をついた』


「何が!? しかも欠陥品じゃないか!」


『違う。 整備は万全だ。 その機体は、オートパイロットでヴァルハラに向かうようにセットしてある』


胸を打つ言葉。 目を見開き、ようやく事態を飲み込んだ。


「スヴィアアァアアアッ!!!」


コンソールに拳を叩きつけ、モニターの向こうに向かって叫ぶ。


「なんだよそれええええええっ!!! ボクだけ逃げろっていうのかよ!!! 何だよそれ!! 何だそれ!! 何なんだよぉっ!!!」


『だから、すまんと言っている』


多くのヨルムンガルドが出撃していく中、全く別のカタパルトに向かっていく。

そのまま水中に向かって出撃し、海から空に出る。

安全な速度で飛行するヨルムンガルド。 離れていく島を振り返り、壁にへばりついた。


「とまれよ…! いやだ…! 戻してくれ!! スヴィア!! スヴィアアアアアッ!!!」


『安心しろ。 近くにオリカも来ているようだ。 お前の居場所を転送しておいた。 直ぐに発見してもらえるだろう』


「そういうことじゃないだろ! 何でだよ!? 帰すくらいならつれてくんなァッ!!」


『すまん』


「すまんじゃねえよ!! なんであんたは…! あんたはいつもいつもいつもいつも…いつもォッ!」


『リイド。 リフィルと話せ。 あいつが足りないピースを教えてくれる』


「…」


『それと…すまなかったと、伝えてくれ。 私は彼女と会うわけにはいかないからな』


「…」


『じゃあな…。 この世界は、お前の世界だ。 お前が守れよ―――リイド』


通信が、途切れる。

壁に拳を叩きつけ、リイドは涙を流した。


「なんだよ…。 何でそんな事、ボクに言うんだよ…。 自分で言えよ…。 自分でやれよ…」


寡黙で、人に誤解されてばかりのスヴィア。

しかし彼が本当は優しい人だということを、誰よりもリイドは知っていた。


「ちくしょううううっ…!!」


人は分かり合える。 そう、思えたのに。

力がないから、守れない。 力がないから、救えない。


「兄さん…! 兄さん―――!!」




「…よかったんですか…マスター」


ガルヴァテインのコックピットに座るエンリルは正面に座るスヴィアの背中に問いかけた。

しかし男は静かにため息を吐き出し、それから正面を見据え、誰にも見せないような無邪気な瞳で苦笑した。


「まだまだ甘いな…ボクも」


「…マスター」


「君にも迷惑をかけてばかりだね。 でももう少し…付き合ってもらうよ。 エンリル」


「はい」


「生きろよ、リイド…。 この世界はお前の世界だ…。 世界を守れるのは他の誰でもなく、この世界を生きる何者かなのだから…」


ガルヴァテインが起動する。

漆黒の翼を広げ、空を目掛けて飛び出していく。

その瞳の先、遥か上空から降りてくる銀色の影があった。

二機は向かい合い、大空の彼方まで響き渡るような声で、激突した。


レーヴァテイン開発秘話 その1


〜完全にどうでもいい話なので注意〜


投稿日時を確認すると、プロローグのみ随分前に投稿していることがわかります。

これはレーヴァテインという話を考えて、実際に執筆を始めるまでの間にタイムラグがあったことを証明しているわけですが、その理由を語るにはまずボクの執筆スタイルを語る必要があるでしょう。


ボクは基本的に執筆時に設定を書き留めたりする事はありません。かなりてきと〜に書きながら考えてキャラも設定も作っています。つまりかなりの行き当たりばったりです。

とはいえ執筆前にまずざっと設定を下ろします。脳内でですが。とにかく設定とコンセプト、必要なキャラクターは事前に作成を行い、それから書くわけです。

しかしレーヴァテインは違いました。次に何か小説を書くときは設定とプロットをちゃんと書くんだ!と思っていた時期が僕にもありました。

そんな時執筆を始めたレーヴァテインはそのおかげで設定資料を作成し、キャラクターのデザインもきちんとしてから連載開始しようと考えていたのです。

しかし大まかな設定が決まったら直ぐにプロローグだけ思いつくままに執筆し、投稿することにしました。理由は今となってはよくわかりませんが、とにかく投稿してしまったわけです。

当時は割りと暇だったので執筆に裂ける時間も多かったため色々と他にも出来る事があるのではないかと考えていました。しかしいちいちプロット書いたりしてたら毎日更新するのはまず無理なわけです。

そもそもプロット書いたところでそのとおりにならないもんです。大筋の流れはそのとおりになりますが、結局差異は出ます。 よってボクが書いたプロットを一部後悔しようと思います。



『夢の、終わり』

主人公がレーヴァテインに乗る。

主要登場人物や設定が登場する、世界観をざっと説明する。


↑これが第一話のプロットです。


わ か る か よ っ!!!!


もっと酷いものもありました。


『翼よ、さようなら』

イリアが死ぬ。


↑どんだけぇ〜。


ちなみにこの翼よ〜から先はプロットありません。どうも完全に書くのをやめたようです。


そんなわけでこの小説は思いつきで描かれています。文章とかも完全に思いつきなので、似たような描写が多くなってしまっているのが難点です。

基本的に自分が日常で使う程度の語学力しか存在していないボクとしては、まあこれくらいが限界のような気もしますが。

レーヴァテインは微妙に三人称小説の練習でもあるのですが、あまり凝った言い回しとかは得意ではないのでどうもかっこよくならないのです。多分ボクの国語の成績が2とかだったからだと思います。


さて、レーヴァテインにまつわる裏話をちょくちょく書いていこうと思います。もう後半なのでネタバレにもならないですしね。

思い返すと色々ありましたが、このお話はリイド君の変化と成長が主軸にあります。ツンデレな少年が徐々に優しさと意思に目覚めていくというお話で、それは物語としても非常に重要な位置に存在します。

子供と大人、というのはボクの中で重要なテーマでもあります。登場人物の多くが子供であり、それぞれ問題と欠点を抱え、対比となる大人が存在していること。

たとえばカイトとハロルドであったり、アイリスとリエラであったり。特に親子というのは重要なテーマだったりします。

成長したのはリイドだけではなく、カイトやエアリオもそうでしょう。どんな方向に成長したのかはよくわかりませんが、仲にはキャラが変わってしまった人もいるかもしれません。

途中参戦であるアイリス、オリカは当然変化も後半に持ち越されますので、今まさに成長しようとしているのはアイリスとオリカなのかもしれません。

リイドはなんだかんだいいながらもうだいぶしっかりした子になりつつあるので。

ぶっちゃけネタバレなんですが、もうじき三部に入ります。三部は今よりもう少し未来のお話で、アイリスを中心に展開される物語です。

ボクの中でアイリスは第二の主人公であり、イリアという姉との対比であり、リイドにとっての罪の意識であると同時にリイド同様、成長する可能性を秘めたヒロインなのです。

彼女にとってこの世界がどのようなものになるのか…それはリイド君次第。この物語は多くの登場人物によって受け渡されるバトンリレーのようなものです。

最初はスヴィア。スヴィアはカイトを育て、カイトはリイドの兄貴分。そしてリイドは後輩であるアイリスへとバトンを渡します。

世界は一つの可能性ではなくありとあらゆる可能性を秘めていて、それは見る人によってかわるものだと思います。 それをたった一人の人間で変える事は非常に難しいでしょう。

だからボクは世界を変えてしまう理由を自分で納得するために、前作の主人公的な位置にあるスヴィアの存在やカイトの存在を作る事にしたわけです。

もうしばらくリイドの物語は続きます。そんで二部が終わったらもしかしたら半年くらい休載するかもしれな…ゲフンゲフン。

まだ悩んでるのでなんともいえないところですが。


そういえばこの話にはいくつかのカップリングがあります。リイドがモテモテなのは主人公だからいいとしても、大体の男女が付き合ってたりする関係にあります。

個人的にカイトとエリザベスの将来が気になりますが、二人の年齢差を考えると厳しいような気もします。

キャラのカップルは常に悩みます。どういうのが望まれているんでしょうかね。なんか希望の組み合わせがあれば考えるんで感想とかほしいんですけど。


最近は読者数も増えてきてすこしは内容が安定してきたのかなあと思い始めましたが、まだまだどうにかなるところはありそうです。

どうにかなる可能性がある限りは、のんびりと頑張っていこうと思います。


そんなわけで、次回に続く。

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