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優しい、夜明け(2)


本気で何かをやったのは、もしかしたら初めてかもしれない。

見上げる天井。 傷だらけの空。 荒れ果てた大地、そこには今や消え去ろうとしている数え切れない程の敵の残骸。

レーヴァテインはボロボロの装甲で、刃こぼれした太刀を片手に荒野に立っていた。

貰ったシャツは汗だくで、身体はもうくたくたで、あんなに絶望的状況だったのに、でも何故だろうか。 こんなに気分が清清しい。

溜息混じりに立ち上がり、コックピットを開くと夜の風が吹き込んできて、汗ばんだ身体に心地よい。

振り返れば確かにそこには自分達が守ったものがあった。 傷ついているのはレーヴァテインだけ。 トライデントもエクスカリバーも、背後に広がる集落も殆ど無傷だった。


「オリカ、大丈夫か?」


「ん〜、ちょっとキツかったけどへーき。 リイドくんは?」


「大丈夫。 きっとお前ほど辛くもないから」


痛みは無くとも確かに精神は磨り減っていた。 もう思考もよく働かない。

でも、やりとげた。 守り抜いたのだ。 すっかりと消え去った夕暮れの赤も、押し寄せるような夜の黒も、今は全てが心地よい。


「勝ったんだな、ボクら」


ポケットに突っ込む片手。 捲くった上着の袖。 風が前髪を吹き上げて、突かれきった思考で考える。

これでよかったんだと思う。 それ以外の方法なんてきっとなかったんだ。 新しい何かを始めるために、決意して生きていくために。


「それでいいんだよな・・・イリア」


『強く在る為に努力し続けろ』。


それは、少女がその背中で語っていた強い強い想い。

だからそれに応えようと思う。 それがどんなに辛くても、それは最高の幸せに続く一つのスパイス。


「守れるんだ、ボクは」


自らの手の平。 何も掴み取る事も出来なかった愚かな手。

それは手を伸ばす事をしなかったから。 臆病に、ただ誰かを何かを手に入れる事を諦めていたから。

けれど本当はそのつもりになれば、想い一つで、たったそれだけで、守れるものはきっと必ずどこかにある。

両手は確かに一つずつしかついていないけれど。

何もつかめないことなんて、きっとない。


「辛くなって逃げ出して、その先でリイドは何を見つけたのかな?」


振り返る。 背後の少女は手をひらひら振りながら微笑んでいた。

だから少年は月を背に、風を背に、優しく微笑んで、自らの胸に手を当てた。


「ボクの守りたい物は、ここにはない。 だから守る為に、戻らなきゃならない―――誰に言われるでもなく、ボク自身がその力を行使するために」


決意に満ちた瞳。 それは漆黒の夜の中で、いや、恐らくは少年の人生の中で、初めて見せる輝きを秘めていた。

だから少女は笑って少年に駆け寄り、転びそうになりながらも笑って飛びついた。

転落しそうになるコックピットの上。 そんなところで踊るように二人は手を取り合い、笑いながら月に照らされている。

そんなのは本当にばかばかしくて、大人にしてみれば下らなくて危なっかしいだけの事なのに、不思議とそんなことは気にならなかった。

だってそうだ。 馬鹿になるって決めたのだ。 考えるなんてのは、やってからやればいいのだ。 だから少年は笑えるのだ。


「行こうオリカ。 ここでこうしていても、事態は何も好転しない」


「そうだね、行こうリイド。 君の守りたいものは、ちゃんと君を待ってくれてるはずだから」


手が差し伸べられた。

それがなんだか懐かしくて少しだけ泣きたくなる。

でも笑って。 ああ、もう泣いたっていいのだ。 それでも笑って、強く、今よりもっと強く在る為に。


「帰るんだね、リイド?」


トライデントのコックピットから身を乗り出し、疲れた様子のセトが手を振っていた。


「あ・・・うん。 ごめん・・・でももう決めたから、ボクはSICに戻れない」


予想の範疇だった。 とは言えリイドがここまできっぱりと同盟軍入りを蹴ることになろうとは。

短い期間でも確かにリイドは成長したのだろう。 だからそれに免じてセトは何も言わない事にした。


「スヴィアには伝えておくよ」


「ありがとうセト。 でも、ボクも戻ったら協力できる事がないか探してみる。 SICの言う事は、正しかったと思うから」


「そうしてくれると助かるね。 それと、勿論エクスカリバーは・・・」


「無論、おいらたちもここを離れねーさ。 むしろやる事山積みになっちまったしな」


三機の神の上に立つ三人の少年はお互いに顔を見て笑いあう。


「じゃあ、てんでばらばらか」


セトの一言に誰もが苦笑した。 トライデントがゆっくりと動き出すと、それを皮切りに三機は互いに背を向ける。


「それじゃ、また会おう」


「おうさ!」


「うん、それじゃあ」



また。



心の中で呟く言葉。 三機はそれぞれ別の方向に飛び立った。

目指すは我が故郷。 傷だらけの身体で、イザナギは夜の闇の中を切り裂き、空を舞って行く―――。




⇒優しい、夜明け(2)




「リイド、てんめええええええっ!」


「は? え、ぐはっ!?」


ジェネシス本部格納庫。 久々に収まった定位置に並ぶレーヴァテインのコックピットから降りたリイドを待っていたのはカイトの鉄拳だった。

思い切りぶんなぐられ、受身も取れずに吹っ飛んだリイドは頬を押さえながら目を丸くしている。

その胸倉を掴み上げ、カイトはさらに頭突きし、それからリイドを引っ張り起こした。


「最初のは俺の分。 次はイリアの分だ・・・!」


「・・・・・・か、カイト・・・?」


「てめーの身勝手な行動せいでみんなにどれだけ苦労かけたのか判ってんのか・・・?」


「・・・・・・わかってる。 言い逃れするつもりなんて、ない」


悲しげな。 しかし強い意志を込めた瞳でカイトを見つめ返す。

二人はそうしてしばらくの間見詰め合っていた。 カイトはそうしてリイドの意思を判断すると、ゆっくりと手を離す。

そして再び振り上げた手。 思わず身構えるリイドの頭の上に乗せられたその大きな手はぐりぐりと荒っぽくその頭を撫で回した。


「よく帰ってきたな、リイド。 おかえり」


「・・・・・・・え?」


周囲を見渡す。 誰もが怒ってなど居ない。 みんな笑って、リイドが帰ってきた事を喜んでいた。


「なんで・・・・・・」


自分がしでかした事の重大さは十分すぎるほど理解している。

罵倒される覚悟も、もしかしたらレーヴァテインの適合者を首になるかもしれないことも、覚悟していたのに。


「ようエース。 随分と遅いお帰り見てぇだな」


「おかえりなさい、リイド君」


「いや〜、やっと戻ってきてくれて助かりましたよ〜」


「・・・ルドルフ・・・ユカリさん、ヴェクター・・・」


「レンブラムッ!!」


ハンガーに響き渡った声に誰もが振り返った。

額の汗を拭いながら、ヘイムダルから下りたアイリスは早足でリイドに歩み寄り、息を切らして向かい合う。

二人はしばらく何も口にしなかった。 だが、アイリスはもっともっと、リイドに言いたい事があったはずなのに。 言葉が見つからなくて。


「・・・・・・あ、あなたは・・・その・・・」


最低です、なんて、もう言えない。

その気持ちも、あそこにいて、イリアを救えなかった気持ちも。 痛いほど。 痛いほど、わかってしまったから。

でも素直になれないのはきっと自分が小さい人間だからで。 それを押し付けるだけなんて、何と愚かしいことだろう。

泣き出しそうになる。 助けてくれたお礼すら素直に言えない自分が、本当に嫌いになりそうだった。


「あのさ、アイリス」


「え・・・・ッ!?」


無表情に、リイドはアイリスの頬を平手で打った。

だから一同目を丸くする。 何とも言えない空気が広がる中、頬を打たれたアイリスは呆けたままリイドを見つめる。


「好き勝手言ってくれた、お返しだ」


「・・・・・・・・・・・・」


「でも、今ので返した。 だから、これからは対等だ」


自らが打ち付けた頬に優しく手を当て、それから穏やかに微笑んで。


「ボクの代わりに出撃してくれて、ありがとう。 でも、無茶はしないで。 君まで居なくなったら、ボクはイリアになんていえばいいのかわからないから」


「・・・れ・・・れんぶら・・・!?」


「赦してくれなんてもう言わない。 君はボクが守る・・・その言葉に今も変わりは無い。 だから、ボクは戻ってきたよ。 約束を、君を、そしてこの世界を守る為に」


「・・・・・・か・・・勝手・・・過ぎますよ・・・っ」


うな垂れた。 歯を食いしばり、それはきっと悔しさから。

その笑顔が眩しすぎて、矮小だったのは自分の方だって思い知らされるから。

そしてそれを赦すと。 自らの罪を受け入れた上で、全てを赦すと笑った少年は、余りにも自分とは違いすぎるから。


「あなたなんて・・・っ! あなたなんて・・・っ! だいきらいです・・・っ」


「うん、ごめん」


「あなたなんて、最低ですっ」


「うん、わかってる」


「あなたなんて、あなたなんて、あなたみたいな人はっ・・・」


「うん」


「〜〜〜〜っ・・・お・・・っ」


涙を堪えた目で、強がって笑って見せる。


「おかえりなさい・・・先輩」


「うん。 ただいま、アイリス」


泣き出してしまったアイリスにカイトが駆け寄り、溜息交じりにリイドを見る。

促すような動作の先には一人立ったままのエアリオが居て、皆が道を開き、少年を促す。

だから笑って。 ポケットに片手を突っ込んだまま、悠々と歩いていく。


「エアリオ」


エアリオは答えない。 ただ少年を戸惑う瞳で見つめたまま、黙り込んでいる。

リイドは屈んで少女と目を合わせる。 それから少しだけ恥ずかしそうに笑って、言った。


「ただいま、エアリオ」


「・・・・・・りいど・・・っ」


だからそれが当たり前すぎて、その当たり前すぎるのが嬉しくて堪らなくて。


「リイド〜〜〜〜っ!!」


飛びついた。 小さな身体を受け止めて、少年は苦笑していた。

もう二度と離れたくないと言うように強くしがみ付いたその両手で、泣き喚くその声で、自分が戻ってきたのだとリイドは感じる。

ああ、そうだ。 一人で居られないのなら、きっともっと周りを受け入れて、一緒に歩いていくべきだったんだ。

悲しみの中、それぞれがそれを乗り越えて生きている。 乗り越えられない時は助け合い、手を差し伸べあって。

だからここに戻ってきた。 大事なものいつもここにあり、そして自分が気づかないだけでそれらはいつでも傍にあった。


「皆さん、ご迷惑をお掛けしました」


深々と頭を下げる。 誰もリイドをとがめなかった。 戻ってくるのを信じていたから。

けれどそれはそう容易いことではない。 誰もが信じ、疑わなかった。 それは本当に素晴らしい奇跡なのだ。

だからそれに感謝して頭を下げずにはいられなかった。 ゆっくりと、決意も新たに顔を上げる。


「いや〜、なんかめでたしめでたしでよかったねえ〜」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・誰?」


そこにはオリカが立っていた。 そう、今回の騒動を促した人間であり、無許可でレーヴァテインに乗り込んでいたオリカ・スティングレイが。

せっかく話がまとまりかけていたのに、その存在を思い出してリイドは思わず固まった。

この少女に関しては、何一つ。 何一つ、弁明の言葉が存在しないのである。

だからオリカがスパイだのなんだのと言われたとしても、怪しいので逮捕するとか言われたとしても、擁護する手段が一つもないのだ。


「レンブラム先輩、まさか・・・」


「リイド?」


「い、いや! これは違う! こいつが勝手にっ!!」


「ああ、紹介しましょう」


騒然とする場を嗜めたのはヴェクターの手を叩く音だった。

ヴェクターはオリカの隣に並び、その肩を叩いて当たり前のように告げる。


「彼女はレーヴァテインの適合者件干渉者である、オリカ・スティングレイ。 皆さんより早く発見されていた、レーヴァテインパイロットです」


「よろしくね〜」


手を振っているオリカ。 リイドは思いっきり素っ頓狂な声を出して、首をかしげた。




「はいっ?」




その日の夜は広いブリーフィングルームを貸しきっての宴会となった。

理由は、新たなる仲間の参戦とリイドの帰還を祝うもので、序にヘイムダル作成の打ち上げもかねているので人数は相当なものになっていた。

妙に綺麗に飾り付けられた普段は味気ないはずのブリーフィングルームの椅子に座りながら、頭に紙製の三角帽子を載せてリイドはコーヒーを飲んでいた。


「まさかオリカが正式なレーヴァテインパイロットだったとは・・・」


こうなると話は完全に変わってくる。 何も悪い事はしていないのである。 したといえば、長期間のレーヴァテインによる無許可出撃くらいなもので。

だからオリカは当たり前のようにヴェクターやユカリと楽しそうに談笑していた。 それがなんだか腑に落ちず、端っこでコーヒーを飲んでいるわけである。


「よおリイド、なんでそんなところにいるんだ?」


料理の大量に載せられた皿を手にリイドの隣に座るカイト。 明らかに食べすぎだったが、量は腐るほどあるので構わないかもしれない。


「いや・・・なにやら今回の事件、全てオリカに仕組まれたような気がしてきてね」


「仕組まれたって・・・ああ、お前あの胸のでけえ子に拉致られたらしいな。 色々おつかれさん」


「本当につかれたよ・・・あいつなんかもうホント疲れるんだ・・・カイトもすぐわかると思うよ・・・」


全く抵抗も無く馴染んでしまっているのがまた悔しい。 自分は馴染むのにこれだけ時間がかかったというのに。


「ま、女子が増える分には俺は歓迎だぜ! 可愛ければ尚よしだ」


「そういう問題じゃないんだよ。 あいつ頭腐ってんだから」


「腐ってる・・・? どういう意味だそれは・・・」


「出来れば思い出したくないから言及しないでくれる?」


「そ、そうか・・・・まあ飲めよ・・・」


コーヒーのお替りを注いでもらっていると、戦闘中は外していた眼鏡をかけたアイリスがおずおずと近づいてきて、リイドの隣にさりげなーく座った。

先ほどはあんなことになったが、気まずい空気は変わっていないわけで。 リイドとしても、アイリスとしても、声をかけづらいのはご尤もだ。

しばらくそうして二人は平行線。 ひたすらに料理を口に運び、露骨に緊張しているその様子を察知し、カイトは笑いながらこっそり逃げていく。

それを恨めしく見送り、リイドは意を決して声をかけることにする。


「あのさ、アイリス・・・」


「先輩なんて、嫌いですっ!!」


「・・・えぇ〜・・・」


「あ、いえ、今のは違うんです!? ただちょっと本音が出ちゃったというか・・・っ」


「えぇ〜〜〜・・・・」


「え? あ、ちがっ・・・うー・・・もう、先輩なんか・・・先輩なんか最低ですっ!!」


「えぇ〜〜〜〜〜〜・・・なんでそうなるの・・・」


走り去っていくアイリスを見送り、今後の事が不安になるリイドであった。

何はともあれ一応あいさつ回りでもしようかと思いコーヒーを飲み干して席を立つ。

ヴェクターとユカリは二人でアルコールを飲んでいるようで、すっかり出来上がっているユカリにヴェクターが首を絞められているところだった。


「な、何が起きたんだろう。 近づきたくないなあ」


「リイドくん?」


「は、はい・・・」


「とりあえずここに座ってくれる?」


「リイド君来てはいけません、殺され・・・ひぎい!」


「ヴェクターは黙っていてくださいね」


笑顔だった。 笑顔が怖い。


「リイド君は居なくて知らなかったかもしれないけど、私、五年も付き合ってた彼に振られちゃったの。 ついこの間」


「唐突ですね・・・ご愁傷様です」


「どうしてだと思う?」


「どうしてでしょう・・・」


「彼ったら、『お前は俺よりロボットがすきなんだろう』って言うんですよ? 私が殆ど毎日ここに篭りっきりで部外者の彼には全然会えないから、きっとそのせいで嫌われちゃったんですね」


「そうなんですか・・・」


「・・・・・・レーヴァテインなんて、ぶっ壊れてしまえばいいのに・・・」


冗談だと思いたかったが、その顔はきわめて真剣である。

だから乾いた笑いを浮かべ、そそくさとその場を離れようとするが逃げる手をがっしりとつかまれ、引き摺り戻される。


「まだ話は終わってないわよ」


「だ、誰か助けて・・・」


「リイド君・・・あなただけでも逃げてください。 そしてもう誰もここに来ないように警告するのです・・・」


「ヴェクター・・・!」


「うおおお! さらば若人よ! あとは任せましたよ!!」


「何をするんですか、この変態!!」


ユカリを押さえつけ、しかし顔面に肘うちを食らっているヴェクターを背にリイドは逃げ出した。


「ヴェクター・・・あなたの勇気は忘れない・・・」


「何が勇気なんだ?」


「ああ、エアリオ・・・ってうわあ!? どうしたんだその髪は!?」


正面に立つエアリオは長い髪をフリルのついたリボンでツインテールに括っている。

無論やったのはアイリスである。 椅子に座ると地面につきそうになる髪を見かねて括ってくれたのだが、リイドがその状態を見るのは初めてだった。


「なんか随分お前可愛くなっちゃたな・・・色々な意味で」


「そ、そうか」


「ていうか・・・なんだかエアリオには色々話さなきゃ行けない事が山積みなんだ。 今夜にでもまとめて話してもいいかな?」


「わかった」


「ん。 じゃあ、ボクは行くから。 まだ話さなきゃいけない人がたくさん居るからね・・・。 色々迷惑かけちゃったし。 それじゃ」


去っていくリイドの背中を見送り、それから照れくさくなって両手で紙コップを手にオレンジジュースを飲み干す。

二人きりで夜話がある、というのは少々ドキドキなシチュエーションであり、既に今から少々挙動不審気味である。

そんなこんなで宴会は続き、盛り上がりも最高潮に達した頃。


「みなさん、お話があります・・・」


口から血を流したヴェクターが声を上げる。 眠っているユカリにしがみ付かれたまま、苦しそうに手を叩いた。


「注目してください。 今日は重大発表があります」


視線がヴェクターに集中する。 それから力なく入り口の方を指差し、最後の力を振り絞って告げた。


「ずっと不在だった・・・ここの司令官が戻ってきたので、ご紹介します」


「は〜〜〜い、みなさん、元気ですか〜〜〜?」


入り口の扉が盛大に開き、ジェネシスの制服を身に纏った女性が入ってくる。

その姿を見た瞬間、リイドは口に含んでいたコーヒーを盛大に吹き出し、それから幻でも見たかのように何度も目を擦る。


「私が、ここの司令官、リフィル・レンブラムです♪ みんなー、よろしくね〜」


そこにいたのは、何故かリイドの母親の姿だった。

その姿を知っていたエアリオもカイトも完全に停止し、リフィルを見つめ続ける。


「あれれ? もしかしてお呼びでないのかしら?」


静まり返った会場の中、母であり指令である女は苦笑しながら手を振っていた。


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