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交錯、天空都市(1)

第七話。ヘイムダル参戦。


ボクの記憶の始まりは、二年前。


始まりと言っても、明確な開始点は不明。 ボク自身の記憶の始まりは間違いなく二年前なのだけれど、その始まりは曖昧なのだ。

目が覚めて、それ以前の記憶が何一つ存在していなかった時、受けたショックは少なくない。

けれど別に、もう何も分からない以上、不安に思う事もない。 ただ、自分が何故そこに居るのか理解出来ないだけで。

始まりは一人だった。 だから死ぬまで一人なのだと思った。 自分自身の身体も、声も、他人のように余所余所しく感じる。

自分さえないなら一人ではなくそれは零だと思う。 自らさえも信じられないのならば一体何を信じろというのか。

だからボクは空っぽの自分を何かで満たそうと必死だった。 自分自身をまずは構築しなければ、何も出来ない。

不確かな自己というものを完結するために、ボクは他人を排除するという方法を選んだ。

誰かを否定し、拒絶し、排除するという行いは即ち自己が存在するという事実に直結する。

否定し、思う。 故に我在り。 他者を否定する=自分はそれとは違う何かだと判別する、ただそれだけのきっかけ。

けれどいつの間にかそうして一人で居るのが普通に成りすぎて、それ以上のことは何も考えないようになっていた。

ボクの周りに人間は二人しか居なかった。 母さんと、スヴィアだけ。 母さんといっても、あの見た目。 本物でない事がわかりきっているのならば、心を許せるはずもなく。

だから一人で生きていけるという事を照明し、彼女の保護から離れる必要があった。 いや、ただ傍に居たくなかったのかもしれない。

兄であるスヴィアはボクの過去を何一つ語らなかった。 しかし勉強や常識をボクに語り、常にボクを導いていた。

不器用で無口なその背中を眺めながら、子供なりにそれを兄だと認識し、慕っていたのだと思う。


「お前は将来何を成したい?」


ある日スヴィアはボクにそう尋ねた。 ボクは頭上、鉄板で覆われて見えない真上の空を見上げて答える。


「ボクは、宇宙に行きたい」


それは、書物やデータベースで宇宙を見たからかもしれない。

天使と神により進出を阻まれた人類の限界、その先にある何かが見たかったのかもしれない。

何より気づいたときにはそう願うようになり・・・その先にある自分だけの世界を求めるようになっていた。

スヴィアはそんなボクの事を普段と変わらない、冷めた目で・・・しかし、時間を共に過ごしたからこそ分かる、彼なりの理解を込めた瞳で見つめていた。

だからいつか、そうした夢や孤独の先にある何かをつかめるのだと、ボクはからっぽのまま信じていたんだ。




⇒交錯、天空都市(1)




さて、問題はここからだ。

学園祭を抜け出し、人の波を逆流してエレベータまで移動、必死で何とか自宅付近まで戻ってきたものの、ボクはへとへとだった。

流石にあの人の波は堪えたのか、オリカも少しだけ疲れたように溜息をついて帽子を被りなおしている。


「すごい人だったね・・・第三共同学園の学園祭ってこんなに人気だったんだね・・・」


「ああ・・・今頃ボクの知り合いが大食い大会に出てるところだと思うけど・・・」


エアリオの事が脳裏に過ぎる。 それを振り払うように首をぶんぶん振り回し、自宅へ向かって歩き出した。

もうこんな町になんか居たくない。 ボクの中でそれが一番のはずだ。 エアリオだって所詮は他人・・・気にすることなんか、ない。

気にすることなんかないはずなのに、さっきからエアリオの顔が頭の中に浮かんで離れない・・・。


「リイド君はさ、もう少し気を楽に生きてもいいんじゃないかな」


後ろで手を組み、オリカは笑いながらボクの隣を歩く。 彼女に対しては歩幅を合わせる必要なんかない。

イリアはガンガン先に行ってしまって、エアリオはのろのろ遅くて。 でも彼女はボクの歩幅にあわせ、自然に隣を歩いてくれていた。


「一人の人間には、手は二個しかついてなくて。 足も二個しかついてなくて。 頭なんか、一個だけしか着いてないの」


前に躍り出て、彼女はくるりと回って振り返る。


「だから、その両手で救えるものはこれっぽっちで。 その両足で向かえる先はほんの少しだけ遠くで。 考えられる事は、一つっきり。 リイド君は何もかも考えて救おうとしてどんどん先に行こうと焦りすぎてるんだと思うよ」


「あんたにボクの何がわかるんだよ」


「わかるよ。 わかる。 だって、きみのことばっかり、考えてきたんだもん」


満面の笑み。 もう、ツッコむ気力も反論する気力もなくなってくる。 恐るべき脅威の脱力パワー。


「あっ! ここがリイドの家!? わー、すごーいおっきいー! でっかーい! ひろーい! ごうかー!」


まだまだ彼女の称賛は続くが、無視して中に入る事にした。

平然と入ってこようとする少女の頭を強めに打撃し、目を丸くしているオリカを玄関の外に締め出した。


「えええええええっ!? な、なんで!? なんで締め出すの!? おかしいようー・・・なんか怒られたよー・・・」


「そこで待ってろよ・・・準備してくるから」


「リイド君のお部屋に入りたいな〜?」


「・・・」


無視することにした。

なにやら玄関でドタバタ騒いでいるが、絶対に無視だ。 あんなやつ家に入れたら怖くて仕方がない。

溜息を着きながら部屋に戻るが、特にコレと言って持ち出すものもなかった。 服も・・・なんだか着替えるのも面倒で制服のままで行く事にした。

結局殆ど何も持たず、ただ部屋に戻ってぼんやりそれを眺めるという作業だけ行い、玄関に戻る。

鍵を開けてドアを開くとそこにまだ立っていると思いきや、オリカの姿はどこにも見当たらない。


「って、うわあっ!? そこで何やってんの!?」


扉の脇、一見しただけでは分からないようなくぼみに蹲ったオリカがすっぽり収まっていた。

涙を零しながら恨めしそうな表情でボクを見上げている。


「えぐえぐえぐえぐ・・・」


誰か翻訳してくれ・・・。

そうしてボクらは82番プレートを後にする。 エレベータに乗り込んだが、人気はまばらで殆ど貸切状態だった。

そりゃそうだ。 今は平日の昼。 しかも学園祭と被っているんじゃ仕方がない。


「ぐすん・・・どうしてリイド君は私の事いじめるの・・・」


「いじめてるつもりは無いんだけどね」


「じゃあもしかして愛の鞭なのかな!?」


いや、それは愛の無知だと思う。

目指す先は第50番プレートシティ。 その場所はすぐに見えてきた。

50番プレートシティはヴァルハラの出入り口・・・つまり空港を主としたシティで、ユーテリア同様ここにもポートファイブという通称が存在する。

ヴァルハラには二つの出入り口・・・即ち空路と海路が存在する。 ポートファイブは海路よりもより多く利用されている空路であり、大量の飛行機が行き交う空港なのである。

しかし、基本ヴァルハラの外に出たがる市民はいないため、ほぼ全ての飛行機がジェネシスのために運航されている。 一般人が乗り込む便は一日にいくつもないだろう。

よって、いくらポートファイブに来たからと言ってこの街から出られるとも限らないわけだが、他に行くあてもなかったわけで。

エレベータホール付近で途方に暮れているとオリカはえらくはしゃぎながらそこら中を駆け回っていた。


「空港って広いねー! なんか楽しいねー!」


本当に幸せそうなやつだ。 何やってても楽しくて幸せなんだろうなーなんて思いながら便の内容を調べる。

今からではどんなに急いでも二時間後の便にしか乗れそうにない。 しかも乗ったところで行き先は米国だ。

まあ確かに現在世界中で最も安全な国といえば米国なわけで。 まあ米国だろうがどこだろうが、ここじゃなきゃどこでもいいのだが。

しかし行ってどうするのか。 所詮ボクらは子供であり、後先を考えれば全てが無謀すぎる事は明らかである。

そして旅の同行者はこのわけのわからない頭の弱そうな女一人。 そもそも素性が知れないにも程があるわけで・・・。


「ああ、八方塞だな」


「ねえ、ところでリイド君・・・ちょっと聞いてもいいかな?」


「結婚はしないぞ」


「がーん!」


口でそんなこと言うやつ初めてみたけど、いい加減話が進まないにも程があるので黙って聞く事にする。


「リイド君、なんでポートファイブに来たの?」


「何でって・・・この町を出るには徒歩じゃ無理だろ? 海上にあるんだから」


「徒歩でなんかむりだよ〜。 でももっと簡単な方法があるじゃない〜」


「簡単な方法・・・?」


女は何も言わず、にっこりと微笑む。

だからボクもまた何も言わず、静かに首を傾げていた。




「何だアイリス、学園祭には行かなかったのか?」


カイト・フラクトルが入院する病室には私服姿のアイリスの姿があった。

アイリスは見舞いの品であるリンゴを詰めたバスケットをテーブルの上に置き、パイプ椅子の上に腰掛ける。


「はい。 どうせ、準備も何も参加していない学園祭ですからね」


アイリスは今年で14歳になる、リイドより一つ年下の少女だ。

無論、第三共同学園に通い、今年は中学年に上がって始めての学園祭になる予定だった。

しかし、クレイオス戦に巻き込まれ丸一月入院生活を余儀なくされていたアイリスは全くクラスの出し物の話も聞けず、その準備にも参加できなかった。

クラスメイトは何人か見舞いに来てくれていたらしいが、眠っている時間が殆どだったアイリスにしてみれば自分にはなんら関係のない学園祭に違いなく。

そんな子供っぽいイベントはもう興味がないと言いつつも本当は楽しみにしていたアイリスにしてみれば、それも込みでリイドは許せない相手なのであった。

だから、自分同様楽しみにしていたイベントに出られなくなったカイトの病室を訪れ、今はなぜかリンゴの皮を剥いている。

はためく白いカーテン。 少しだけ寒い風の吹き込む病室。 本当ならばここに座っているべきなのは、自分ではなく・・・。

そう考える度にやりきれない思いとリイドに対する怒りが湧き上がってくる。

アイリスが姉の病状を知ったのは、つい最近の事。 自分が退院したというのに、全く顔を出さない姉を不審に思っていた頃だった。

ジェネシス社員が数名彼女の家を訪れ、事情を説明し、本部の病室へと連れて行かれた。

そこで少女が見たのは・・・美しい、生きたままの姿で眠り続ける・・・死に続けている姉の姿だった。

だから、理由を知りたがるのは当然の事だった。 アイリスは情報開示を求め、責任者であるヴェクターに詰め寄った。

結果、ホルスの戦いにまつわる一連の資料を手に入れ、それに目を通し、彼女なりに現実を解釈した。

アークライト家はイリア、アイリスの姉妹と母親の三人家族だった。

父親は元々ジェネシス社員であり、その科学者でもあった。 が、アイリスが物心つく頃にはとっくに事故でこの世を去っていた。

その死を最も重く受け止めていたのは、顔もよく覚えていないアイリスではなく、よく遊んでもらっていたイリアでもなく、夫を失った母親であり。

だからこそ、母に代わりイリアはアイリスの面倒を見る事が多く、アイリスは母よりもイリアに懐いていたくらいであり。

いや、むしろアイリスにとって男が居なければ生きていけないという母親の存在は認めたくないものであり、常に強くあろうとする姉の生き様に強く憧れていた。

アイリスが入院する事になったのは、無論流転の弓矢ユウフラテスが周囲に放ったフォゾンの影響もあるが、彼女自身元々身体が弱く、ユウフラテスの影響を強く受けてしまったのが原因。

故にアイリスの趣味は読書、楽器演奏とイリアのそれとは百八十度違い、そうした内向的な自分の生き方をアイリスはもどかしく思っていた。

やがて姉がレーヴァテインに乗るために家を出て母親と二人きりになると、アイリスの中で母と自分に対するコンプレックスはより強いものとなっていく。

イリアは無論、アイリスにも事情を話さなかった。 いつ死ぬかわからないような戦いの中に居ることなど、妹に話せるはずもなく。

だから全てを知ったのは本当につい最近のことで、少女はそれを知って・・・姉が自分を見てくれなくなった理由を探していた。

たまたま都合よくそこに収まってくれたのがリイド・レンブラムであり、面識も無い人間をここまで憎めたのはそのお陰なのだろう。

何はともあれ、リイドが気に入らない事に違いは無い。 いや、一生許すつもりも口を聞くつもりも無かった。 けれど・・・。


「リイドには会ったか?」


「・・・・っ・・・ええ、まあ」


「まだ、あいつの事許せないか?」


「許すも何も・・・先輩にも嘘をついていたんでしょう? リイド・レンブラムは。 先輩は腹が立たないんですか?」


「許すも許さないも、無いと思うけどな、俺は」


「・・・・・・」


病室で出会った少年は、アイリスに申し訳ないと頭を下げていた。

けれどそれが許せなかった。 実は、その姿そのものに怒りを覚えたわけではなかった。

これから一生憎んでいくべき人間が、あっさりと、自分の非を認めて頭を下げた事が許せなかったのだ。

いや、認めたくなかった。 一生憎んでいけば、きっとこの悲しみから一生逃れられるだろう。

誰かのせいにして誰かを憎んでいればきっと悲しくはない。

なのに、あっさりと。 あっさりと、自分が悪いと認めてしまうような人間を・・・このままでは憎めなくなりそうで。

そうなってしまったら、自分がどうなってしまうのかわからず。 母親のようになってしまうのではないかと、不安でたまらなかった。


「むしろ、イリアがああなったのは俺の責任だよ。 俺がもう少しちゃんとした体だったらあんなことにはならなかった」


「そんな・・・! そんなこと言わないでください! 姉さんだって、そんなことは思ってないです!」


「そうだな。 イリアはそんな風に人を責めるようなやつじゃなかった。 いつでも自分で抱え込んで、それでも毅然としてた」


目を細め、少しだけ寂しそうに笑う。


「だから、きっと俺の事、許してくれてる。 それは、俺だけじゃないと思うんだがな・・・・・・」


「それ、は・・・・・・」


反論も出来ない。 イリアとカイトがどれだけお互いを理解していたのか・・・いや、姉が彼を愛していたそのことすらアイリスは理解している。

定期的に会う姉が話すことはいつもカイトのことばかりだった。 そう、つい最近を、除けば。

リンゴの皮を剥いていた手が止まる。 果物ナイフに映った自分の顔は、鈍く歪んで見えた。

直後、遠くから聞こえてくる物音・・・正しくは爆発音。 何かが壊れて吹き飛ぶ音が迫ってくる。


「な、なに・・・?」


窓の向こうを眺めると、空は裂け、膨大な数のガラスが街に降り注ぐ瞬間だった。

ヴァルハラのプレートシティ一つ一つは伸縮構造の薄いガラス膜のようなもので覆われている。 故に外気の影響を受けず、温度や湿度もプレートごとに個別に管理されている。 割れた空から降り注ぐガラス片は、このプレートシティに何かが突っ込んできたという、証拠―――。

ガラスの破片が降り注ぐ大地の上、降り注ぐガラスが当たる場所に何かの影が浮かび上がる。 そこは何もないはずの空間なのだが、『透明ななにか』に確かに破片は降り注ぎ、そこに何か巨大なものがいる事実を示していた。


「警報も鳴ってねえのに・・・!? 天使・・・いや・・・違うな・・・なんだありゃ・・・!?」


『何か』は背後のスタビライザーを開き、放熱フィンから蒸気を放出しながらゆっくりとその身体に色を取り戻していく。

光学迷彩。 光を屈折させ、自らの存在を目視不可能にする最新鋭の迷彩機能。 透明のヴェールを脱ぎ、姿を現したのは巨大なロボットだった。

蒼い装甲、見た事の無いデザイン。 少なくとも似たような機体が2,3機。 市街地に立っていた。

そしてそのうちの一機は真っ直ぐに二人の居る病院へと近づき、残りの機体はプレートシティの外へと飛び出していく。

残りの機体がどこに行くのかはともかく、今はなぜか目の前にまで迫りつつある蒼い機体をどうにかするのが先決―――。


「いや・・・どうにかなるわけねえだろ・・・。 逃げるぞアイリス、病院を出るんだよ!」


「え? え? えっ?」


ベッドから飛び出し、アイリスの手を取る。 その腕がずきりと痛み、まだ体の調子は完全ではない事を示している。

しかしこんなところでわけもわからず死ぬわけにはいかない。 いや、殺させるわけにはいかない。

彼女の妹がいるんだ。 自分も死ぬわけにはいかないが・・・アイリスだけはどうにかさせてなるものか。

病院を慌てて駆け出すカイトだったが、アイリスはそれについていくだけでいっぱいっぱいであり、息を切らせ何度も足を縺れさせそうになりながらもカイトの後についていく。


「せ、先輩・・・何がおきてるんですか・・・!?」


「知らん!」


と、ここに来てようやく町中に警報が鳴り響く。 遅すぎる警報に苛立ちながら階段を駆け下り、病院を後にした。

外に出ると蒼い機体はカイトたちが居た病室を覗き込んでおり、中に誰も居ないと確認するや否や部屋に向かって手を伸ばし、強引に病室の壁を破壊していく。


「な、なんだ・・・!? 狙いは俺なのか!?」


病院の周囲を眺めていたロボットの二つの目とカイトの視線がぶつかり合う。

直後機体は進路を変えてカイトに向かって駆け寄ってくる。


「やっぱりかよ!? くそ・・・アイリスはあっちに逃げろ! 俺は別の方に逃げて時間を稼ぐから!」


「そんな・・・先輩、殺されますよ!? 見ての通り、手段を選ばないみたいですし!」


「でも、アイリスをつれて逃げるわけには・・・うわっち!?」


二人の間、3メートルほどの空白に突如乗用車が突っ込んでくる。 急ブレーキをかけ停車したその車の助手席から顔を出したのはユカリだった。


「二人とも乗って!」


「ユカリさん・・・と、ルドルフ!?」


運転席に座っているのはルドルフだった。 しかし今はそんな事を気にしている場合ではない。 二人は慌てて車に乗り込み、ルドルフはすぐに車を後退させる。

すぐ目の前まで伸びてきていた巨大な手からバックで逃れ、急反転し法廷速度も走行方向も無視し、必死で逃げていく。

と、同時にカタパルトエレベータによりシティまで運ばれてきた戦車、砲台たちが一斉に砲撃を開始する。 機体はそれを避けて空中に移動し、そのままカタパルトエレベータに突っ込んでいった。

巻き上がる炎を遠巻きに眺めながらカイトは舌打ちする。


「いきなりなんだよ!? ユカリさん、あれは!?」


「少なくとも天使じゃないわね・・・すぐ本部に向かうわ。 狙いはレーヴァテイン関係者よ」


「レーヴァテイン関係者って・・・リイドとエアリオは!?」


「二人ともなぜか連絡がつかないのよ! アイリスが一緒に居てくれたのは助かったけど、このままじゃまずいわ・・・」


住民の避難もままならない真昼の市街地での無差別な砲台による発砲。 それを投げ飛ばし、踏み潰す蒼い機体。

巨大すぎるもの同士の戦いは周囲を一瞬で破壊、炎上させていく。 逃げ惑う人々の中にはそれに巻き込まれ、命を落とす者も少なくない。

しかし戦闘は止まらない。 一瞬で壊滅した戦車隊に続き、標的をルドルフが運転するジェネシス製高級車に絞ると、蒼い機体は浮遊し、一直線に突撃してくる―――。

その速度と車の速度など比べるまでもない。 だから機体が追いついてくるのはほんの一瞬・・・


「振り切れるわけねえだろっ!!」


ルドルフが匙を投げ出し、誰もが終わったと思ったその瞬間、機体は横からの衝撃でビル群に向かって吹き飛ばされていた。

その衝撃に思い切りスリップした車はそのまま民家に突っ込んでいったが、幸い搭乗者四人に怪我はない。 ジェネシス製最高級安全装甲が役に立った瞬間である。

蒼い機体を蹴り飛ばしたのはそれよりも一回り大柄な白い機体・・・ジェネシス製人型戦闘機、ヘイムダルだった。


『みんな、大丈夫? 随分派手にスピンしてたみたいだけど』


「なんだあれ!? レーヴァテインじゃねえぞ!?」


「一々騒ぐな! ありゃヘイムダル・・・量産型レーヴァテインだよ! お前もデータ集めるのに協力したろうが!」


「ちょっとまって! ルドルフ! あのヘイムダル、誰が乗ってるの!?」


そう、ヘイムダルのパイロットは今一人も居ない状態のはず。

ヘイムダルを動かせる人間がそんな都合よくみつかり、しかも初の戦闘で人型戦闘機を吹き飛ばしたとはとても思えない。

背部にマウントされたアサルトライフルを取り出し、ヘイムダルは四人を庇うように前に出る。


『とりあえず本部に急ぎなさい。 そこにいたらただの的よ』


蒼い機体が瓦礫の山から飛び出すように飛翔し、空中よりヘイムダルに迫る。

アサルトライフルの弾幕で迎撃を図るが、機体はそれを器用に交わしてジグザグに飛行しながらヘイムダルに迫っていく。

アサルトライフルを投げ捨て、脚部にマウントされたコンバットナイフを両手に構え、駆け出す。 正面から突っ込んでくる敵が放つ二本のワイヤー弾をナイフで弾き、弾かれたワイヤー弾は勢いもそのままにいくつものビルを貫通していく。

ぎゃりぎゃりと音を立て、火花を上げるワイヤーとナイフ。 はじけたのはワイヤー攻撃だけで、本体の突撃は避けられなかったヘイムダルごと機体はプレートの端に向かって突き進んでいく。

それを見届けルドルフは車を発進させた。 とにかくここに居ては巻き込まれてお陀仏、ということになってもおかしいことはなにもない。


「ヘイムダルに誰が乗ってるのかは本部に行きゃわかる! いける限り飛ばすぞ! ちゃんと掴まってろ!」


車がエレベータに駆け込んでいくのを見届け、ヘイムダルはゆっくりと身体を起こす。

壁際の障壁に叩きつけられたまま手を手を組み合い力比べ状態になっていた白と青の二機。 パイロットは小さく笑い、それから敵を見据える。


「どこの差し金かは大体見当がつくけど・・・手段くらいは選んで欲しいものね」


スタビライザーから浮力を発生させ、全出力で押し返す。

弾き返した青い機体が体勢を乱した瞬間、空中から鋭く、ヘイムダルの足が機体の頭部へ落下し、胴体まで細い足を減り込ませていた。



エアリオ「め〜ると〜・・・とけちゃいそ〜う〜だよ〜」


カイト「何してんだエア子・・・一人で踊って・・・」


エアリオ「ファンサービス」


カイト「この小説にファンっているのか?」


エアリオ「はっ!?」



⇒おまけ(^−^)



カイト「何だ上の顔文字は!?」


エアリオ「サブタイのセリフパロディのつもりらしい」


カイト「そ、そっか・・・それで、ここはどこなんだ? 何をするところなんだ?」


エアリオ「まあ座れ」


カイト「お、おう・・・」


エアリオ「本編ばかり毎日毎日書いていると段々飽きてくるだろ?」


カイト「そうなのか?」


エアリオ「そうなんだよ・・・だから、本編では出来ない事をやって気分転換しようと思って」


カイト「成る程な・・・じゃあ本編じゃ出来ない事をやるか! ・・・・って、何をすればいいんだ?」


エアリオ「腕もげるとか」


カイト「本編でもげたからな!? あと、なんでそんな腕もげたがるんだよこの小説!!」


エアリオ「んー・・・たまにはあしもげろってか?」


カイト「いや、どこももげなくていいよ!?」



〜小休止〜



カイト「しかし、マジでもうすることないな」


エアリオ「んー・・・どうせ思いつきだしな・・・。 でも書くからにはなんか面白いことしたいそうだ」


カイト「ムチャクチャ言うなよ・・・そんな都合よく面白い小説が書けたら誰も苦労しなぶろあっ!? 何故殴る!?」


エアリオ「いや、わたしじゃない。 手が勝手に・・・その時、エアリオの拳がカイトの顔面を強打し、少年は空中をきりもみ状に回転しながら吹き飛んで行った・・・見たいなことをやれって」


カイト「そ、そっか・・・ところでエアリオ」


エアリオ「んう?」


カイト「大食い大会の結果はどうなったんだ?」


エアリオ「なにそれ」


カイト「忘れんなよ!? ほんと学園祭の扱いが不遇だなこの小説!」


エアリオ「んんん・・・? 学園祭と言えば、学園モノでは一大イベントだからな・・・何故これを利用して人気をとりにいかないのか些か疑問である? ・・・らしいぞ」


カイト「カンペ読むなよ」


エアリオ「んああああっ! こんなおまけ誰も読みたがらない! 意味ない!」


カイト「なんでそういうこと言うかねぇ」


エアリオ「だって、本編で出番が少ないっ! 胸が痛いんだよおっ!」


カイト「そういえばお前なんか出番微妙だな・・・戦闘はイリアばっかりだったし」


エアリオ「・・・どうすれば人気出る?」


カイト「え・・・ええと・・・そうだな・・・? イリアみたいにツンツンしてみたらどうだ?」


エアリオ「カイト・・・」


カイト「何だ?」


エアリオ「ふつうにしね」



〜小休止〜



カイト「それはなんか違うぞエアリオ・・・ただ俺が悲しくなっただけじゃないか・・・」


エアリオ「ふつうにごめん!」


カイト「それ気に入ったのか・・・? そんなだから不人気って言われるんだよ」


エアリオ「・・・・・・不人気・・・・・・」


カイト「そうだ、やっぱりこういうところだからこそ本編では出来ないお色気シーンをだな」


エアリオ「こんな胸の無い女子のお色気シーンなど誰が喜ぶ?」


カイト「俺は大小気にせずみんな好きだぜ? イリアの胸も、エアリオの胸もな・・・!」


エアリオ「前々から思ってたけど、おまえなんか気持ち悪いな・・・」


カイト「えー・・・」


エアリオ「じゃあとりあえず・・・(ごそごそ)」


カイト「うおおおお!? 人様にお見せ出来ない格好に!? それはやばいってエアリオ! 発禁で小説削除されちゃうぞ!? 『小説家になろう!』は十八禁だめじゃなかったか!?」


エアリオ「文章として表現しない限りは大丈夫だ。 ほれほれ」


カイト「そ、そんな・・・スクール水着でネコミミであんなことやこんなことや・・・うわああああっ!!」



つづく。


つづく、のか?



エアリオ「ちなみに作者はスクール水着にはまったく興味ないそうだ」


カイト「ネコミミはどうなんだ?」


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