当て無き旅
眠気眼を擦り、空を見上げる。
ボクは何を求めて旅をしているのだろう。
最初は何かを追って、旅を続けていたのだと思う。
しかし、それが何年も過ぎていく内に薄れて行き、果てには何も無くなった。
それでも、ボクは続けていくのだろう。この当て無き旅を。
空はどこまでも暗く影っていた。
全ては夏の終わりの事だった。
ボクは一人、町のはずれにある藁束の上で寝そべっていた。
することも無く、ただただ空を見上げていた。
青く澄んだ空はボクにはとても眩しくて、目を細めながら見上げていた。
時間とは何もしていなくても過ぎていくもので、雲は流れ、風が凪ぎ、そして人は町を動き回る。
そんな人たちにボクは馴染めなくて、ただ息苦しくて、でも何もする気も起きなくて。
誰かが手を差し伸べてくれたなら。
そう考えているボクがいた。
そんなとき、村には一人の青年がやってきた。
ソイツは一人、馬を牽いて旅をしていると言った。
ボクには、ソイツが眩しく見えた。
だけど、ソイツはボクに言った。「キミがとても羨ましいよ」と。
その言葉はボクの心に重く圧し掛かった。
ボクはソイツに「オマエも同じ事すればいいじゃん」なんて言っていた。
ソイツはボクの言葉に笑っていった。
「そう出来たらいいのに」
ボクはその言葉に何も返す事は出来なかった。
全てはあの夏の終わりの事だった。
ボクの旅が始まったのは。
どこまでも、どこまでも遠い世界へと。
ボクの当ての無い旅路は続いている。
アイツは元気にしているのかな。
ボクは今でも藁束の上でアイツを探す旅を続けている。