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輝石草原の女剣士  作者: xxx
第一章
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序・昔語りの老婆



 ――……ガラハーンの草原を生きるものならば、誰もが知っていることだがね。


 老婆は、ゆったりとした口調で言葉を紡いだ。

 あまり広いとは言えない天幕の中、子どもたちはところ狭しと集まり、老婆の言葉を待ちわびるかのように視線をそそぐ。いくつもの瞳が、きらきらと輝いていた。


「ここに集うお前たちの胸には、薄青い(シュピルァ)が大切に下げられている。今は何の力も持たない石だけれど、いつか大人になるとき、それはお前たちを助けてくれるものに姿を変えるんだ」


 集落の中でもひときわ年老いたものの昔語りは、子どもたちにとっては立派な勉学のひとつであり、また、数少ない娯楽でもある。


「皆、いつも聞かされているね。男は剣を、そして女は首飾りを選び取る。お前たちの親を見ていればわかることだ。……けれどね」


 老婆が笑った。めくれ上がった唇からは、ほとんど歯の残らない口内が覗く。


「女でありながら剣を選び、そして首飾りをも手にしたものの話を知っているかい」


 老婆の言葉に、子どもたちは一斉にざわめいた。

 かれらの感覚からすれば、それはけしてありえないことだった。非力な女が剣を手にして戦うなんてもってのほか――それどころか、首飾りを持たない女は男の元に嫁ぐことができないはずだ。

 ざわめきはしばしのあいだ続き、やがて治まった。

 子どもたちの驚きを愉快そうに見つめながら、老婆は再び口を開く。


「お前たちにも充分に起こりうることだよ。よぉく耳を澄ましてお聞き。

 ……そうだね、なにから話そうか――」

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