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制限時間 - タイムリミット -  作者: 八神
Scene 2 【小鳥遊姉妹の恋愛事情】
7/8

S2-3

- 3 -





「おっそーい!」

今日の鈴の開口一番だ。


「いや、すまない。ちょっと色々あってだな」

「色々って何よ?」

「色々は色々だよ」


「まぁいいけど。ちゃんと来てくれたし」

「ああ、ちゃんと来たぞ」


俺と鈴は昨日、友達になった。

年下の女の子と友達になったことがないので、こんな感じ


でいいのかは自分でも分からない。

まぁ、これは自分なりにやっていくしかないんだろうな。


「よいしょ」

ベッドの横にあった椅子に腰掛ける。

「ごめんね、今日も来てもらっちゃって」

ベッドから起き上がって申し訳なさそうに言う鈴。

「いや、大丈夫だ。今日は休みだし。」

そう言って親指を立ててみる。


「休み・・・明日は?」

「ああ、明日は仕事だな」

「そっか、じゃあ明日は来れないんだね」

ちょっと残念そうに呟く。

「そうかもな・・・でも暇があれば来ようとは思ってるよ


「本当?」

「ああ、鈴が迷惑じゃなかったら」

「迷惑なわけないよ! どっちかっていうと嬉しいかも」

「そっか、なら出来るだけ顔を出すようにするよ」


自分でもよく分からないけど、鈴の力になりたいと思う。


コンコン。


その時、ドアがノックされた。

鈴の返事を待たずに扉は開かれた。


「失礼するわ」

そこに居たのは、さっき別れたばっかりの燐だった。


「どなたって。

・・・またあんた、ノックしたら返事してから開けなさいよ!」

呆れたように鈴が言う。

「だって。めんどくさいじゃん」

そういって中に入ってくる。


「あ・・・」

『あっ!』


燐と目が合う。

「あなた、どうしてここに?!」目を丸くする燐。

「いや、さっき言ったとおりここに入院している・・・」

「それ、すずちんの事だったの?!」

さらに目を丸くする。

そんなに驚くようなことか?


「そうだけど?」

「そうだったんだ、あはは」

かと思うといきなり笑う。よく分からん。

「何かおかしいか?」

「いえ、あなたとまたすぐに会うことになるなんて思わなかったから」

「確かに、俺も思わなかったよ。」


「え、何? 二人とも知り合いだったの?」

俺達の会話を黙って聞いていた鈴だったが

気になって仕方なくなったのか、俺らの間に割って入ってきた。


「知り合いっていうか、まぁさっきたまたま会って」

「そうね、たまたま」

「会って、そんだけ?」


「まぁ、それだけだな」

「それだけね」

「ふ~ん・・・」

何か面白くなさそうに俺を見つめる鈴。

「どうした?」

「別に?」

ツンと顔を逸らされてしまった。



「それで、私に用があったんじゃないの?」

改まったように、燐に向き直る鈴。

「ええ、でもあなた起き上がって大丈夫なの?」

心配そうな目を向ける燐に鈴はカラカラと笑って

「大丈夫! 今はなんか調子いいんだ!」と言ってみせた。

「でも、無理はダメ。

 油断するとまた発作が起きちゃうよ。」

そう言って鈴にベッドに戻るように促す。

「え~、平気なのに~」

ブーブー言いながらもベッドに戻る鈴。


へぇ~・・・。

なんだ、ちゃんと友達いるんじゃん。

燐の方も結構鈴のこと気にかけてるみたいだし。


「仲いいみたいだね。二人とも」

「まぁ、あたしが居ないとこの娘寂しくて死んじゃうからね」


冗談めいたように笑う燐。

「そっちこそ、私が居ないと夜も眠れないくせに」

「な?! そんなことないわよ!」

「嘘つき~。

 夜中寝れないとかで私に会いに来たのはどこの誰だっけ~?」

「あ、あれは・・・不気味な物音がして寝れなくて・・・」


「ぷっ・・・あはははは!」

そんな二人のやりとりが面白くてつい笑ってしまう。

「な、なんで笑うのよ?」燐が恥ずかしそうに言った。

「いや、本当に二人とも仲がいいんだなって思って」

「う・・・お姉ちゃんには内緒にしておいてよ?」

鈴は急に真剣な表情になって言った。


「どうして? 友達くらい教えても問題ないんじゃ・・・」

「どうしてもダメ!

 いい? 言ったら絶交だかんね?!」

物凄い形相で釘をさされてしまった。


「分かったよ、琴乃には言わないでおくよ」

よく分からないが、必死な様子なので承諾しておいた。


「・・・琴乃?」

呼び捨てにしたことに何故か反応する鈴。

「いや、本人がそう呼んでくれと」

「・・・そう。ならいい。」

ちょっと不機嫌そうな鈴。

「てか、俺と琴乃が知り合いなの言ったっけ?」

「お姉ちゃんから直接聞いたのよ。」

「ああ・・・なるほどね」


全く、お喋りな姉さんだな。



コホン。


「それで、用なんだけど」

「あ、うん。用って何?」


「大した用じゃないんだけどね。その、大丈夫かなって」

「もしかして心配して来てくれたの?」

「ええ、まぁ・・・」

「私は、今のところ大丈夫。それより燐ちゃんは?

 大丈夫なの?」

「ええ、あたしも今のところ」


そうか、今まで忘れてたが燐も入院しているんだっけ。

この娘もどこかが悪いわけか。


燐はどこが悪いのだろうか。

と言っても今の俺にそれを聞く権利はない。

気にはなるが聞くのは止めておこう。


よいしょ。

俺はベッドの近くに置いてあった椅子に座る。

燐もその隣に座った。


・・・。



それから俺達三人は他愛のない話をしながら時間を過ごした。

二人は燐が入院した頃からの付き合いで

もうそれなりに気心が知れた仲になっているらしい。

琴乃が言うほど、人間関係がうまくない訳ではなさそうだ


年齢も近いし女の子同士だ。色々話せるだろう。

ちょっと安心したかも。




・・・・・・。

・・・。



「おっと、もうこんな時間だな。」

時計を見るともうすぐ夕方5時になるところだった。

白い光が射していた窓からはオレンジ色の光が射している。


「もしかして、帰っちゃうの?」

鈴が残念そうに眉を下げる。

「まぁ、明日は仕事だからね。

 そろそろ帰って準備とかしないと」

「そっか、残念だね」

燐も少し名残惜しそうな顔をしている。


「また、暇なときとかに来るから。

 そしたらまた、一緒に話そうな」

そう言って二人の頭を撫でてやる。

「ちょっ、くすぐったい」

と二人は顔を赤くしながら、はにかんだ。

・・・ちょっと可愛いな。



「じゃあ、また来るよ」

そう言って椅子から立ち上がる。

「待って!」そう言って俺を呼び止めたのは燐だった。

「どうした?」

「あの・・・あのね」

「うん」

「淳くんってさ、携帯持ってるよね?」

「ああ、持ってるけど。」


「良かったらメルアドとか交換出来ないかな?」

「え?」鈴が驚いたような声を出す。

「構わないけど、どうしてまた?」

いきなりの申し出に俺も少し戸惑う。


「いや、またこうやって皆で話したりしたいし。

 連絡先とか交換出来たらいろいろ楽かなって」

俯き、少し恥ずかしそうに言う燐。


「分かった、いいよ」

まぁ、断る理由はないからな。


「あ、ありがとう。

 それじゃあ、さっそく・・・」


ごそごそと

入院服のポケットを探ると赤いスマホを取り出した。


「じゃあ、俺のアドとか打ち込むから貸して」

「あ、うん」



・・・。

燐からスマホを受け取り俺の番号とアドレスを入力する。



・・・よし、これでOKだ。

「はい、終わったよ」

燐にスマホを返す。



「ありがとう」と燐は笑った。

「それじゃあ、また・・・」

「ま、待って!」



今度は鈴に呼び止められた。

「ん?どうした? 鈴もメアド交換したいのか?」

「ち、違う! そんなわけないでしょ?!」

黒い長髪をフルフルと横に揺らして否定する。



「じゃあ、どうしたんだよ?」

「やっぱりなんでもない。」

「なんだよ、まぁいいや。じゃあな」




そう言うと俺は病室を後にした。







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「行っちゃったね、淳くん」

燐ちゃんはドアを見つめながら言った。

「そうだね・・・」

「どうしたの? 元気ないね」

「ねぇ、燐ちゃん」

「なに?」


「どうして、淳とメルアド交換したの?」

「・・・どうしてだろね。なんか気になるのよ」

「気になる? どういうこと?」

「自分でもよく分からない。でも、確かなのは。

 あの人なら、本当のあたしを受け入れてくれそうだから。」


「本当の、燐ちゃん?」


「ほら、あたしお父さんにずっと外ではいい子にしてなさい。

 とか、上品な言葉遣いしなさい。とか。

 いろいろ言われてきてたから。

 言葉遣いも何もかも本当のあたしではなく

 “お父さんの好きな”あたし。

 それは本当あたしではないから。

 本当あたしは、こんな何処にでも居るような今時の女の子。

 そんなあたしを、お父さんは

 ううん周りの人は誰も受け入れてくれなかった。」


「誰も・・・?」



「もちろん、すずちんは別だよ?

 皆、あたしをここの病院の院長の娘としか見ない。

 でも、淳くんはその事を知っても、失礼な態度とっても

 普通に接してくれたから」


「そうだね、淳は優しいから」


「だから、なんとなく。

 淳くんとすずちんの3人なら、あたしはあたしで居られる。

 そんな気がするから。」


「そっか」

「すずちんは、交換しなくて良かったの?携帯あるのに」

「私は・・・いいの。恥ずかしいし」

「そっか、なら仕方ないね」


燐ちゃんは淳の事が気になると言った。

多分それは私も同じだと思う。

ここまで男の人と仲良くなったのは

初めてだからよく分からないけど。


これが“好き”ってことなんだろうか?

私にはまだよくその感情が分からない。


「燐ちゃんは、誰かを好きになったことはある?」

「へ? なんでいきなり?」

燐ちゃんの目が点になっている。


「いや、私ずっと病院に居たから恋愛とかしたことないし・・・

 燐ちゃんならしたことあるかなって・・・」

「そっか、そうだよね」

「燐ちゃんは恋愛したことある?」

「残念だけど、あたしもないんだ。

 お父さんがそこら辺厳しくてさ~・・・」

あはは、と苦笑いする。


「そっか・・・なんかごめんね」

「いやいや、全然いいよ」

「好きな人もいないの?」

私が燐ちゃんに再度質問を投げかける。


「今はいないけど、まぁもしかしたら・・・」

「もしかしたら?」

「多分、淳くんのこと、気になっちゃってるのかも」

「え・・・」

何故かその言葉は私の心をぎゅっとしめつけた。

「まだ好きとかじゃないんだけどね。

 顔も悪くないし、優しいし。

 あたしとしては、可能性はあるかななんて」


「そうなんだ・・・」

ズキンと、胸が痛い。

今まで味わったことのない痛み。

病気によるものではない、と考えなくても分かった。

でも“それの原因”が分からない。


「すずちんは? 淳くんの事気になったりしてない?」

「え? どうしてそんなことを聞くの?」

「いやだって、もしあたしが淳くんの事好きになったりして。

 それですずちんも淳くんのこと好きになって。

 同じ人を好きになったりしたら色々大変だから。」

「そうだね・・そうかもしれないね」


淳・・・。私は・・・。

でも私は・・・・・・。



「気になったりしてないよ。大丈夫。」

ズキンズキン・・・。


「本当? あたしに気を遣ったりしてない?」


「本当だよ、もし淳と燐ちゃんがそうなったら応援するよ」

ズキン・・・。


「ありがと!

 でもまぁ、まだそうなるとは決まってないんだけどね」

と苦笑いする燐ちゃん。

なんだろう、淳の事話すときは活き活きしている。


もしかして、もしかするのかもしれないね・・・。



胸の痛みを堪えながら、私は燐ちゃんを応援すると言った。

本心なのかは、全然分からない。

自分の気持ちが自分で分からない。



でも、今はこれでいいのだと思った。

燐ちゃんの微笑む顔を見ていたら、本当にそう思えた。





・・・だから、これでいい。




これでいいんだ。







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