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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

葬儀屋

鳥葬

作者: 深水葉月



 高らかに電話の音が鳴り響いた。

 今から、葬式が行われるそうだ。


「今からするのは“鳥葬”という葬儀。」

 と、悠長に葬儀屋は話す。


 “葬儀屋”という存在にあこがれている私は、その葬儀の仕方を少しは知っていた。

 

「その顔は少しは知っているって感じだね。其は物知りなのか。」

 ふぅん、と呟き葬儀屋は何やら怪しげな呪文を唱えた。


「鳥葬について、其に教えとくよ。

 鳥葬はチベット仏教で行われるのが有名メジャーで、他にはパールスィーと呼ばれるインドのゾロアスター教徒も鳥葬を頼んでくる人がいるね。国や地域によっては、違法になる葬儀の仕方だよ。」

 

 葬儀屋の近くに、無数の籠が現れた。

 籠の中には、鳥がもちろん入っている。


 そして、葬儀屋は手に鋏をもった。


「今から其に葬儀の仕方を説明しよう。

 チベット発祥と言っても悪くないこの葬儀は、チベット高原に住むチベット人にとって、最も一般的な方法なんだ。まぁ、チベット仏教が布教している地域では普通の葬儀の仕方って感じかな。」


 そして、葬儀屋は遺体を切った。


「魂が解放された後の肉体はチベット人にとっては肉の抜け殻に過ぎないらしい。

 その死体を郊外の荒地に設置された鳥葬台に運ぶ。まぁ、もう依頼人がしてくれてたんだけど。

 それを裁断し断片化してハゲワシなどの鳥類に食べさせる。これは、死体を断片化する事で血の臭いを漂わせ、鳥類が食べやすいようにし、骨などの食べ残しがないようにする為に行うものなんだ。」


 遺体を切り終わった葬儀屋は、同時に鳥の入っている檻を開けた。



 あまりの気持ち悪さに目をそむけた私に、葬儀屋は近づいてきた。


「鳥葬は宗教上は、魂の抜け出た遺体を「天へと送り届ける」ための方法として行われているんだ。鳥に食べさせるのはその手段に過ぎないよ。

 日本では鳥葬という訳語が採用されているけども、中国語では天葬、英語では空葬 (Sky burial) などと呼ぶし。

 多くの生命を奪ってそれを食べることによって生きてきた人間が、せめて死後の魂が抜け出た肉体を、他の生命のために布施しようという思想もあるんだ。死体の処理は、鳥葬を執り行う私たちが行い、骨も石で細かく砕いて鳥に食べさせ、あとにはほとんど何も残らないようにする。」



「そう考えると鳥葬も悪くない、って感じかな?」



 そう呟く葬儀屋の顔は、恍惚に満ち溢れていて、変わった人だなぁ。と思いました。




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