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無能扱いの底辺ギルドマスター、助けた仲間がなぜか全員最強になっていく  作者: 甲賀流


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銀翼のヴェルナー/掲示板回


「……ヴェルナー?」


 口に出した瞬間、リーゼの手帳を持つ手がぴたりと止まった。


 止まっただけで、落としはしない。

 逃げもせず、ヴェルナーの目を真っ直ぐ見る。


 フィオナはというと、何も言わずに俺の半歩前へ出ていた。


 分かりやすい。


 分かりやすすぎる。


 その背中がもう、

 

「この人に何かするなら私が出ます」


 と語っていた。


 いや、語らないでくれ。


 そもそもA級相手にその気配を隠そうともしないのはどうなんだ。


「久しぶりだな、リーゼ」


 ヴェルナーは苦笑いみたいなものを浮かべていた。


 A級ギルド《銀翼》のギルドマスター。


 装備も身なりも、いかにも上の人間って感じだ。


 実際に上なんだが。


 ただ、今日のこいつは妙だった。

 ヴェルナーが協会に一人でいる。


 銀翼といえば、いつもパーティ単位で行動していることがほとんど。


 まったくどこの大名行列だって思うほどに。


 なんとなく不自然だ。


 それに、さらに妙なこと。


 こいつは俺たちみたいな格下のギルドに、わざわざ直接声をかけてきた。

 

 まぁ俺たちというか、リーゼにだが。


 普通ならあり得ないことばかりだ。


 だが、だからこそ逆に分かることもある。


 つまり、こいつは気になって仕方ないんだ。


「聞いたぞ」


 ヴェルナーの視線が、俺を通り越してリーゼへ向く。


「お前のところのリーゼが、昇格審査で暴走せずに戦い切ったと」


「聞いたって、どこからだ?」


「噂ってのは勝手に広がる」


 ヴェルナーは俺を一瞥し、そう言った。


「特にお前のところは最近目立ってるぞ」


 まぁ、そりゃそうか。


 E級の番人なんて言われてたギルドが急に上がってきた上に、昇格審査で第七層を抜けたとなれば、目立たない方が無理だ。


 目立ちたくて目立ってるわけじゃないんだが。


 リーゼは黙っていた。


 顔色は悪くない。


 でも、白い指先が手帳の端を強く掴んでいる。


 緊張はしてるんだろう。


 それでも逃げない。


 初めて出会った時、腹を空かせて倒れていたときとはきっと大違いなんだろうな。


「……で、何の用なんだ?」


 俺がそう聞くと、ヴェルナーは少しだけ間を置いた。


 言い訳を探すみたいな間だった。


 だが結局、こいつは正面から言った。


「確認しに来たんだよ」


「確認?」


「ああ」


 視線はまだリーゼに向いたままだ。


「オレがリーゼを追放した時、あいつの魔法はもう制御不能だった。出力は高い。だが制御が壊れていた」


 そこでヴェルナーは一度だけ息を吐く。


「使えない。そう思ったから追い出した。だが、それを完璧に制御したと聞いた」


 声は静かだった。


 責めているわけじゃない。


 かといって怒っているわけでもない。


 ただ、答え合わせをしに来たみたいだ。


 喧嘩を売りに来た感じではない。


「……そうか」


 短く返す。


 俺に言えることはあまりない。


 だって実際、俺もよく分かってないからだ。


 分かってるのは、リーゼの魔法が今は暴走していないことくらいで。


 その理由を説明しろと言われても困る。


 多分、俺の固有能力的なもんが関係しているんだろうが、はっきりと断言出来るあれもないので、


 今は黙っておくしかない。


「はい。今は完璧に制御できてます」


 その代わりに、リーゼが答えた。


 静かな声で。


 震えていない。


「少なくとも、以前のような失敗はしません」


 ヴェルナーがその顔を見る。


 たぶん、そこで確信したんだろうなと思う。


 リーゼの言葉じゃない。

 表情に。


 追放された時のこいつは、たぶんもっと壊れそうな顔をしていたはずだ。


 今は違う。


 変ではあるが、壊れてはいない。


 いや、別の方向に壊れ始めてる気もするが、それは今ここで言うことじゃない。


「……なぁ、次の依頼に同行させろ」


「……は?」


 思わず間の抜けた声が出た。


 フィオナの気配が一段だけ鋭くなる。


 分かりやすいな、ほんと。


 リーゼもさすがに目を瞬いた。


「一回だけでいい。この目で確かめたい」


 ヴェルナーはハッキリと言った。


 困ったな。


 普通に嫌なんだが。


 A級連れて歩くなんて、目立ちすぎる。

 極めて厄介だ。


 なんてゴチャゴチャは一旦置いといても、何よりリーゼの気持ちが一番大事。


 彼女にとって、あまり一緒に居たくない人間だろうからな。


 そう思って横を見る。


 リーゼは少しだけ黙っていた。


 手帳を持つ手はまだ強張っている。


 でも、そのまま静かに頷いた。


「構いません」


 声に震えはない。


 そこに少しだけ驚く。


 逃げるかと思っていた。


 少なくとも、嫌だとは言うかと思った。


 だがリーゼは違った。


 今の自分を見に来た相手から、一切目を逸らさなかった。


「私は問題ありません」


 リーゼはもう一度言う。


「見たいなら、見ればいいです」


 ヴェルナーがわずかに目を細める。


「ロイドさん」


 隣からフィオナが小さく言う。


「私は反対です」


「だろうな」


「でも、リーゼさんがいいなら止めません」


 とは言いつつも、たぶん内心は全然納得してない。


 顔を見れば分かる。


 でもまぁ、そこで感情だけで噛みつかないあたり、こいつもこいつで少しずつ成長してきたのかもしれない。


 執着は相変わらず強いけど。


「……分かった」


 俺はヴェルナーに向き直る。


「一回だけだ」


「あぁ」


 短い返答だった。


 それだけでこの話は終わった。


 終わったんだが、空気は妙に重かった。


 さっきまでの依頼達成後の気の抜けた感じが、すっかり消えている。


 やれやれだ。



 とりあえず任務内容と日時、その辺を決めていく。

 そして全てが決定したところで、今日のところは解散となった。



 * * *

 


 掲示板回


 

◆探索者総合掲示板 冒険者スレ【その82】


 

※他人の正体探し禁止

※現地話は盛りすぎ注意


 

315 名前:路地裏ハンター

最近なんか面白い話ある?


 

316 名前:鉄靴の見習い

ロイドのギルド、D級に上がったらしいぞ

 


317 名前:昼寝探索者

あのずっとE級だったとこ?

 


318 名前:鉄靴の見習い

そうそこ


319 名前:赤銅ナイフ

でも結局、仲間二人がやばいだけなんだろ?

 


320 名前:灰マント

それはそう

短剣の女がまずおかしい

若いのに動きが完成しすぎてる

 


321 名前:紙袋レンジャー

リーゼの暴走も止まったらしいぞ

銀翼追放の魔法使いの方

 


322 名前:昼寝探索者

それ普通にすごくないか

 


323 名前:赤銅ナイフ

ロイドもギルメンに恵まれたな

 


324 名前:路地裏ハンター

でもなんで急にあんなの二人も集まったんだ

 


325 名前:灰マント

たまたまじゃね?

 


326 名前:路地裏ハンター

そんな都合よくあるか?

ロイドに固有能力が目覚めたとか

 


327 名前:鉄靴の見習い

ないない

大抵の固有能力って10代か、遅くても20代前半だろ

ロイドもう普通におっさんだぞ

 


328 名前:昼寝探索者

おっさんに夢見させるな

 


329 名前:紙袋レンジャー

でもそれ見てたやつが、ロイドの声入ると急に噛み合ってたって言ってたらしいぞ

 


330 名前:赤銅ナイフ

指揮の才能がおありで?

 


331 名前:灰マント

それにしても変らしい

見えてるみたいな指示だったって

 


332 名前:路地裏ハンター

何それちょっと怖いな


 

333 名前:昼寝探索者

本人は普通なんだろ?


 

334 名前:鉄靴の見習い

剣も魔法も並らしい

そこが余計に意味分からん


 

335 名前:紙袋レンジャー

ギルド名なんだっけ


 

336 名前:赤銅ナイフ

彼方のエトワール


 

337 名前:昼寝探索者

名前だけちょっと格好いいのやめろ

 


338 名前:灰マント

昔つけたらしいぞ


 

339 名前:路地裏ハンター

うわ、それはちょっと恥ずかしいやつだな

 


340 名前:鉄靴の見習い

でも最近ちょっと名前負けしなくなってきてるの悔しい

 


341 名前:赤銅ナイフ

結論

ロイドのとこ、最近なんかおかしい

 


342 名前:紙袋レンジャー

雑だけど間違ってない

 


343 名前:昼寝探索者

次また何かあったら教えてくれ

 


344 名前:灰マント

あの三人、たぶんまたすぐ噂になるだろ

 


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