悪役令嬢を拾ったおっさん冒険者の話
「化け物だ」
俺はドム。薬草探しのしがないおっさん冒険者だ。
薬草探し・・・でも魔獣と出くわす事がある。
人の姿をした化け物と遭遇したこともある。
蛇獣人なら舌がチョロチョルでる。
どこか違和感があるものだが・・・
こいつは違和感がない。深山で・・・貴族令嬢と出くわした。
「ごきげんよう。冒険者さんですか?」
木の下に腰をかけている。あれは縦ロールか?扇で口元を隠している。
ドレスも色あせているが、きちんと着こなしている。
「あ、冒険者さん!」
俺は荷を捨てて逃げた。こういった分からないのは怖い。
「危ない。そこには木の根がございますよ」
「うわ!」
転んだ。一回転をして頭を打った。意識が遠のく。これは・・・食われるか。
ああ、良い人生ではなかったな。32歳か・・・まあ、冒険者にしては長生きした方か?
・・・・目が覚めた。眼前に釣り目の令嬢がいる。
夢じゃなかった。看病してくれたようだ。
「まあ、大丈夫かしら、足の治療はしておきましたわ」
「ウウ、お前は誰だ。何故、ここにいる?」
「はい、私はエリザベータ・スホイと申します」
「俺はドム、D級冒険者だ・・・」
「ここにいる理由は・・・」
彼女は一瞬躊躇して答えた。
「夫・・・いえ、夫になる者の迎えを待っております」
「えっ」
本物の人族のようだ。
話を聞いた。
・・・私は王国スホイ侯爵家の娘でございます。
伯爵子息との縁談が決まりました。
ええ、婚約者として共に愛を育むと誓いましたわ。
☆☆☆
しかし、家族で領地から王都に向かう途中でした。崖崩れが起き。馬車が谷底に落ちてしまいました。
家族は私以外死亡・・・・
私は膝が砕け。歩けない姿になりました。
「グスン、グスン、ロドリゲス様、私は1人ぼっちになりましたわ」
「エリザベータ、私がいるじゃないか?」
ええ、正式にロドリゲス様がスホイ侯爵家を継ぐことになりました。
とても優しかったのです。
回復術士にみてもらいましたが・・・
「これは、欠損回復が出来る聖都の聖女様でなければ・・」
ええ、莫大なお金がかかります。
そのうち・・・
「エリザベータ、社交界は従姉妹に頼んだから良いよ。ゆっくり療養して」
「あなた・・・分かりました」
従姉妹は屋敷に入るようになり。私の代わりに侯爵夫人の役割をするようになりました。
ええ、大変助かりましたわ。
でも、結婚式の日まで後10日の深夜。
「エリザベータ、山で療養するのが良いと聞いた。連れていくよ。食料と日用品も持って行く。必ず迎えに行くよ」
「はい、ロドリゲス様、治してみせますわ」
私は馬車に乗せられ、この山からはロドリゲス様に担いで頂いて置いて行かれたのでございます。
・・・・・・・・・・・・・・
「ほお、ではもうすぐ迎えに来るのか・・」
「いえ、半年前のお話でございます」
聞いて損をした。これは・・・捨てられた・・・
「ロドリゲス様は王宮役人でしたから、お忙しいのでしょう」
そんなわけあるか。とは言えない。
しかし、好奇心がある。この女、何故、今まで生きてこられたのか?
周りを見渡す。さすがに鍋はある・・・貴族令嬢がどうしてここで食べ物を手に入れた?差し入れする者がいるのか?
だが、王都からここは遠すぎる。誰だ?
まるで俺の疑問に答えるかのように女は答えた。
「この山は食べられる野草、薬草が豊富です。這って取りに行ってますわ」
「そうだが、何故、貴族令嬢が知っている!お前は本当は化け物ではないか?」
「いえ・・・本で読みましたわ・・・山の事も記されています。この山の形状だと北の斜面に月の露が生えておりますわ」
・・・行って見たら本当だった。群生だ。
茨の群生がある。令嬢が行けたとは思えない。
「本で読みましたの」
「そうか・・・」
他にも魔獣を避ける方法も知っていた。
俺が18歳の頃から14年間で学んだ事よりも多い・・・
「エリザベータ様、食べ物です」
「まあ、パンなんて久しぶりだわ」
それから俺はちょくちょく令嬢の元を訪れた。
「テントを建てて起きます。これから冬になりますから・・」
「まあ、有難う」
俺の収入は二倍になった。
ギルマスからも訝しがられる。
「どうした。ドム、すごいじゃないか?何かあったか?」
「ギルマス、山の主に出会った。頭の中に山が入っている」
防寒着も買わなくては・・・しかし、これで良いのか?
ある日、エリザベータ様の特異体質が分かった。
帳簿が合わなくて愚痴をこぼしたの時だ。
「まあ、ドム様、帳簿を貸して下さいませ・・・まあ、13日の道具代が抜けてなくて?」
「あ、本当だ・・・」
一度、見たら数字でも文章でも忘れる事が出来ないギフトを授かっている。
しかし、本人は気がついていない。
「ええ、帳簿には癖がございます。本を読んだら忘れないものではなくて?」
「そんなことあるわけないです・・はい」
楽しい日々だった。エリザベータ様は19歳、そろそろ20歳だ。
山を降りてもらおう。しかるべき職もすぐに見つかるだろう。
ギルマスに相談をした。
「山になんでも記憶できる女がいる。どこかで面倒を見てもらえないだろうか?足は不自由だけど、そりゃ、すごい暗記力だ」
「そんなわけ・・・でも、ドム、お前最近すごいよな。いろんな物をみつけてくる」
それがいけなかったのか。悪かったのか分からない。何でも分かる足の不自由な女がいると噂になった。
エリザベータ様の20歳の誕生日に山を降りる提案をしようと決意した。
それは、婚約者との別れを意味するのかもしれない・・・
と思って山に行ったら、エリザベータ様の前に男がいた。壮年ぐらいか。
「誰だ!」
短刀を抜く。もしかして、よからぬ事をしようとしているのか?
男は振り返りながら俺を一瞥した。
「ほお、騎士がいたか、失敬」
「俺はドム、お前は誰だ!」
「・・・この国の財務卿である」
面食らった。
「良い。私も今は平民服、お忍びで来ている。エリザベータ嬢に教えを受けに来た」
話の内容は・・・王宮の帳簿が合わない。陛下はご立腹だ。
どうも金貨100枚ほど・・・どこにいったか分からない。
「金貨100枚、陛下は内密に調査を命じられた・・・」
いくらエリザベータ様でも分かるわけないだろうと思ったが。
あっさり分かった。
「はい、ロドリゲス様は、王家御用達商人の幹部とお話していました」
☆☆☆
「ロドリゲス様、いっときお金が入り用です。金貨100枚、用立てて頂けませんか?」
「うむ。二割もらうぞ」
「はい、来月に持って来ます。来月の15日に辻褄を合わせましょう」
「それまでは王女殿下のドレス代にでもしておくか・・」
と話している会話を聞きました。
私はその時、車椅子で廊下を移動しているときに自然に耳に入りました。
この事ではないでしょうか?
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「何と!金貨100枚、ピッタリだ」
「ええ、日付は女神歴二千八年の三月一五日ではございませんか?」
何と、王女殿下のドレスが金貨100枚分なくて大騒ぎになっているそうだ。
王女殿下?それともドレス商人が疑われていたらしい。
「でかした。エリザベータよ!これで仇討ち出来るな」
「あの?仇討ちとは・・・商人が忘れているだけかもしれません。早急に帳簿を整えるべきです」
「ロドリゲスは従姉妹と結婚してスホイ家を継いでいる。知らないのか?」
「えっ・・・・」
エリザベータ様は婚約者の裏切りを知らなかった。
財務卿が去った後もうつむいている。
俺が慰めることなんて出来ない。
去ろうとすると上着の端を掴まれた。
「しばらく、一緒にいて下さいませ・・」
「ああ、そうだ。俺が料理を作るよ!」
どうして良いか分からない。食事の後も沈黙が続いた。
ギフトが授かる分、どこか感覚が人と違う物になるらしい。
☆☆☆
その後、噂で聞くに、スホイ家は断絶、ロドリゲスが正式当主だったからな。エリザベータ様と戸籍を入れ。従姉妹とは内縁関係だったらしい。エリザベータ様は行方不明となっていた。
ロドリゲスがやったことは悪い経理官が金融のような形で商人に貸し出していたが、今回は、商人は払えなくて逃げだしたそうだ。
商人は辺境の地で討ち取られたと聞いた。
ロドリゲスと従姉妹は、市場で荷物を運んでいる姿が目撃されているとかいないとか。
エリザベータ様は迎えが来られて王宮の筆頭経理官になっている。女性は初だ。
俺は相変わらずに薬草探しだ。大空にエリザベータ様の顔が浮かぶと思ったらエリザベータ様の声が聞こえた。幻聴か?・・・本人だ。
「ドムさん。ごきげんよう」
「エリザベータ様、足は?」
「陛下から褒美で聖都の聖女様に治療して頂いたの」
お嬢様が訪ねて来た。
「お仕事大変では?」
「もう終わったわ。リハビリで来ていますの。山を案内して下さる」
「え、お嬢様の方が詳しいでしょう」
よく分からないが、エリザベータ様はここに通われている。
スホイ家の屋敷と領地は正当な金額で陛下が買われエリザベータ様に支払いが行われたことも聞いた。
「エスコートして下さる」
「山道に?」
これからどうなるか分からないが、まあ、笑顔になって良かったと思う今日この頃だ。
最後までお読み頂き有難うございました。




