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5.映りこみ

 

「あははははははははっ……もー、マジやめてよねー」

 

 朝登校して私が教室の入り口に来ると、クラスメイトのマホが自身の席に座ったまま後ろの机に両腕をのせて笑い潰れているのが見えた。

 彼女がゲラであることは皆が周知のこと。私だって知っている。なので室内にいるクラスメイト達はそれを気にすることもなく『またかー』くらいに聞き流して各々の会話を続けている様子だ。

 マホが腕をのせる後ろの席の主、ナナミが見あたらないところを見ると、会話の途中にあまりにも笑いがおさまらなくなってしまった彼女に呆れてトイレにでも行ってしまったのだと推測できた。

 入ってきた私に気付き、笑いすぎて涙目となっているマホはこちらを見上げてパタパタと手を振るのだった。

 本当、朝っぱらから元気である。

 

 「あっ、おはようミキー!あのさ聞いてよー。ミキだけに見聞きしてー。ゆっても、もう終わったことだから見ることはできないわけだけど……え、つまらない?ごめんてー。

 ……あのね、それでナナミがさあー。ワタシが席でスマホいじろうとしてカバンから取り出したのね、そしたらスマホの液晶って反射するじゃん、それで後ろの席のナナミの顔がワタシよりも先に映っちゃったの!暗い画面にいきなりバンって。マジびっくりしたー!その後は二人で笑いが止まんなかったわけ。ずっと笑ってたーあははー。

 ……え、ところでナナミはどこだって?

 今日は休みだよ?

 ……ああ、これは昨日のはなしー。

 あははーごめんごめんてー。ワタシ説明苦手だからさあー。

 え?さっき笑ってたのは何って……思い出し笑いだけど?」

 

 「……もういいよ」

 

 私はそう言うなりマホとのなんとも栓の無い話しを切り上げ自分の席へと向かうことにした。

 

 『やってらんない……』

 

 マホは悪い人ではない。明るくて元気で、一緒にいて面白い。しかし今日は朝一番に小テストを控えているため早く復習しておかなければならないのだ。

 

 席へと向かっている最中、先ほどの話しを聞いていて感じた微かな引っかかりのようなものが徐々に大きくなってゆく。それはやがて違和感へと変化した。

 自分の席へと着く頃には、思わず背筋がゾクッとするのだった。

 クラスメイト達の騒がしい声で満ちている室内。

 私は席にカバンを置くと思わず机上に両手をついたまま呟いてしまった。

 

 「昨日もナナミ、休んでたじゃん……」

 





 (完)


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