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追放聖女は最強の救世主〜隣国王太子からの溺愛が止まりません〜  作者: Futahiro Tada


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断罪の光 ― 戦場の選択

断罪の光 ― 戦場の選択


巨大な魔獣が咆哮を上げた。

その声だけで、大地が震え、崩れた石壁が砕け落ちる。

兵たちは盾を構え、恐怖に喉を震わせながら叫ぶ。

「王太子殿下を守れ!!」

「魔獣が突っ込んでくるぞ!!」

アレンは剣を抜いた。

銀の刀身が黒い霧を切り裂き、鋭く光を放つ。

圧倒的な存在感。

王太子としての威厳と、戦士としての強さが同時に宿っている。

「全員、散開! 背後を取られるな!」

「「了解ッ!!」」

騎士たちが動く中、リリアナは地面に手をついて震える指を必死に握りしめた。

(あれが……魔獣……

こんな……こんなものを相手に……私は……)

喉が渇く。

足がすくむ。

だが、すぐ目の前で兵が倒れた。

「うっ……ぐぁあああ――!」

魔獣の爪が兵士の腹を裂き、毒のような黒い瘴気が傷口へ染み込んでいく。

血が大地を濡らし、悲鳴が響く。

リリアナは駆け寄った。

「しっかりしてください! 今、治します!」

震える手を上にかざすと、胸の奥に祈りが湧き上がる――

同時に、昨日より激しいもう一つの声も。

(壊せ 壊せ 壊せ)

低く冷たい囁きが意識の底に広がる。

光と闇が混ざりあい、境界が崩れる。

「だめ……今は癒しの祈りを……!」

自分に言い聞かせるが、焦りは暴走を誘う。

その時――

「リリアナ!」

アレンが魔獣の巨体を押し返しながら叫んだ。

「意識を集中しろ! 深呼吸だ!」

「は、はい……っ!」

震える呼吸を整え、兵士の傷へ手をかざす。

光が溢れ、腐食を押し戻す。

裂けた肉が再生し、血が止まっていく。

兵士は荒い息を吐きながら、震える声で呟いた。

「……生き……られるのか……俺……」

「生きられます。必ず。」

その言葉に嘘はない。

けれど――胸の中では、まだ闇が蠢いている。

(私の中に……何がいるの……?)

次の瞬間、魔獣が巨体をねじり、アレンへ牙を剥いた。

「アレン様ッ!!」

リリアナは思わず声を張り上げた。

胸の奥の光が脈動する。

(守らなきゃ……!)

光が弾ける――

だが、それは癒しではなかった。

黒い焔のような光柱が噴き出し、魔獣の頭部へ直撃。

轟音と共に、巨体が吹き飛ぶ。

地面が爆ぜ、黒煙が立ち昇る。

兵たちも、アレンでさえも、一瞬息を呑んだ。

「リリアナ……今のは……」

恐れと驚愕がない交ぜになった視線が注がれる。

(……また、壊した……)

恐怖が押し寄せる。

しかし、魔獣はまだ動く。

破壊した箇所から黒い霧が溢れ、肉を再構築していく。

「再生……? そんな……!」

アレンが叫ぶ。

「リリアナ! お前の光は癒しだけじゃない!

滅びをもたらす刃だ。感情を乱せば闇が優勢になる!」

「じゃあ私は……怪物……?」

震える声。

だがアレンは即答した。

「違う。

救いにも滅びにもなれる力を持つ者だ。」

リリアナは息を呑む。

その言葉は、一番欲しかった答えだった。

「今は……救え。」

アレンの声が鋭く響く。

「俺を信じて、光を選べ!」

アレンの瞳はまっすぐだった。

揺るぎなく――リリアナを信じている。

(……信じてくれている……)

胸に灯火がともる。

契約の環が強く脈打った。

リリアナは立ち上がる。

「……はい!」

祈りを両手で強く抱きしめるように紡ぐ。

「癒しの光よ、我が意志に応え――

傷つく者に安息を!」

淡い光が再び広がり、味方兵の傷を次々と癒していく。

歓声が上がり、兵たちは再び剣を握った。

「聖女様がいるぞ!

まだ戦える!!」

兵の士気が一気に高まる。

同時に、アレンは魔獣へ踏み込んだ。

剣が黒霧を裂きながら深く突き刺さる。

しかし魔獣の動きは止まらない。

その瞳の奥――赤黒い光が宿る。

(……誰かが見ている)

リリアナの背筋がぞくりと震えた。

魔獣が咆哮し、アレンを押し返す。

「チッ……!」

アレンが膝をつき、魔獣の爪が彼の頭上へ振り下ろされる――!

「アレン様!!」

リリアナの体が勝手に動いた。

胸の奥で光と闇が激しくぶつかり合う。

(壊してしまうかもしれない……!

でも――守りたい!!)

祈りが弾けた。

「光よ――断罪せよ!!」

癒しと破壊が混ざり合った白黒の閃光が一直線に放たれた。

魔獣の腕が砕け散り、巨体が後方へ吹き飛ぶ。

轟音が戦場に響く。

兵たちは呆然とした目で光景を見つめた。

アレンだけは、すぐに立ち上がり、リリアナの方へ振り返る。

その目には恐れがなかった。

ただ――誇りが宿っていた。

「やった……の……?」

リリアナが囁く。

だが――魔獣の気配は消えない。

崩れた肉塊から黒い霧が再び溢れ、天へ向かって薄く伸びていく。

その霧が――何かを形づくる。

人影。

細く長い腕。

金色に光る眼。

「……見ている。」

アレンが歯を食いしばり、リリアナを庇う。

「下がれ!」

霧の人影は、声なき声を告げるかのように

リリアナを指さした。

――よくぞ目覚めた、救世か滅びか。

禍々しい気配が戦場を包む。

黒霧は渦を巻き、天空へと消えていった。

残されたのは、ただ荒れた大地だけ。

リリアナは肩を震わせる。

「……私……何を……」

アレンがそっと肩を支えた。

「お前は救った。

何も間違っていない。」

その声が、揺れそうになった心を引き止めた。

だが兵たちの視線は二つに分かれていた。

救世と断罪――

希望と恐怖。

リリアナは唇を噛む。

(私は……どちらなんだろう……)

アレンが真剣な目で言う。

「リリアナ。

俺はお前を選んだ。

その意味は、いずれ話す。」

「いずれ……?」

アレンは視線を遠くへ向けた。

かつて戦場で何かを見た者の瞳。

(アレン様は……何を知っているの?

なぜ私をこんなにも必要とするの?)

恐怖よりも、

その答えが欲しいと初めて思った。

戦場の風が二人の間を過ぎる。

触れない距離。

けれど――確かに近づいている。

リリアナは静かに息を吸った。

(私が選ぶのは――救う力。)

その決意を胸に、リリアナはアレンと共に砦の内部へ向かった。

戦いはまだ終わっていない。

むしろ――

ここからが始まりだ。

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