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追放聖女は最強の救世主〜隣国王太子からの溺愛が止まりません〜  作者: Futahiro Tada


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公開祈祷 ― 命を賭す奇跡

公開祈祷 ― 命を賭す奇跡


王都アルスターの中心、光華広場。

王族の祝祭や国家の儀式が行われてきた由緒ある場所に、

この日は未曽有の試練の舞台が設えられていた。

高くそびえる祈祷台。

周囲には数万の聴衆、兵士、神官、そして貴族たち。

人々の目はすべて一点――

祈祷台へと注がれていた。

そこに佇む少女。

純白の法衣に身を包み、長い銀髪を風に流す。

聖女リリアナ。

アレンはすぐ近くに立ち、

彼女が倒れれば即座に受け止められる距離を確保していた。

「大丈夫か?」

アレンの声。

だが、リリアナは震える息を押し殺すしかなかった。

(怖い……でも、ここで失敗してはいけない)

「平気です。私は……人々を救いたい。」

アレンは口を真一文字に引き結ぶと、

彼女の頭にそっと手を置いた。

「祈れ。

ただし――お前は独りじゃない。」

その言葉が胸に染みていく。


広場に司祭長の声が響き渡った。

「光の神よ!

いまこそ聖女リリアナが、

王都のすべての民を救い給う奇跡を示し給え!」

祭壇の上の巨大な水晶が輝き始める。

祈祷陣が展開し、白銀の光が空へ登っていく。

民衆が息を呑む。

リリアナは静かに瞳を閉じた。

(どうか……)

胸の奥に温かい光が灯る。

それが全身に広がり、

無数の小さな光粒となって溢れ出す。

「聖女だ……本物だ……!」

「光が降りてくる……!」

広場が歓喜に沸いた。

祈りを受けた人々の傷が癒え、

苦しみと痛みが消えてゆく。

その輝きは、王都に希望を振り撒いた。


だが――

その美しさにかすむように、

ひとつの影がじわりと王都を覆う。

(……嫌な予感)

アレンの手が剣の柄を固く握る。

「アレン……?」

「……何か来る。」

耳に届く――異音。

地鳴りのような震動。

その瞬間、

白い光に混ざった黒い霧が空を裂いた。

「っ……!?」

霧が形を成し、

巨大な魔獣が上空に現れる。

黒い翼、赤い眼、鋭い牙。

悪意そのものが具現化したような怪物。

「魔獣だああああああ!!」

悲鳴が広場を覆い尽くす。

「っ! リリアナ、後ろへ!」

アレンが即座に彼女を庇い剣を抜く。

魔獣が咆哮し、

黒炎を吐き散らす。

兵士たちが各所へ駆けつけるが、

魔獣の圧倒的な力に為す術がない。

(どうして……こんな場所に……?)

リリアナは胸を押さえる。

そのとき――

魔獣の眼がリリアナを射抜いた。

狙われてる……!

理由を考える暇もなく、

黒い槍状の魔気が放たれる。

「危ない!」

アレンが抱きしめるように彼女を引き寄せ、

石畳を転がった。

アレンの肩に刃が掠り、血が滲む。

「アレン様!」

「大丈夫だ……それより……祈れ!!」

民衆が逃げ惑う中、

リリアナは両手を祈りの形に組んだ。

光が広がり、負傷者の傷が癒える。

だが――

(癒しの光じゃ……魔獣は止められない)

追放の原因となったもうひとつの力。

破壊を呼ぶ黒い力が、心の奥底でざわつき始める。

(駄目……暴走するかもしれない)

迷いが胸を締めつける。

アレンは立ち上がり、リリアナの前に剣を構える。

「俺が盾になる。

お前は、救いたいと思うものを救え!」

「でも……!」

「信じろ。俺を。そしてお前自身を!」

アレンの声が、

恐怖に縛られた心を断ち切った。

リリアナは息を吸い、両目を開いた。

「光よ――私たちを守って!」

輝きが奔り、

防御の障壁が展開する。

魔獣の黒炎を受け止め、

一瞬だけ攻撃を遮断した。


しかし魔獣は嘲るように吠え、

上空から再度黒い霧を放つ。

広場全体が悪意の霧に染まり、

人々の心に不安と恐怖が増幅していく。

「こいつ……ただの獣じゃない……」

アレンは確信した。

(背後に……誰かいる)

次の瞬間、

魔獣の背に乗った黒い影が現れた。

ローブの人物が囁くように叫ぶ。

「――光の器よ。

我らの主は、お前を歓迎している。」

声が不気味に歪み、

人ならざる音が交じっていた。

「お前たちは……何者だ!」

アレンの問いを無視し、

黒影は手をかざす。

魔獣の体が膨れ上がり、

黒い魔気が暴発する。

「っ……リリアナ!」

アレンが抱き寄せた瞬間、

爆風が祈祷台を吹き飛ばした。

石片が飛び散り、

兵士も民もなぎ倒される。

リリアナは膝をつき、血が滴る。

(立たなきゃ……皆を守らなきゃ……)

だが光の力は弱まっていく。

代わりに――胸の奥で黒が渦巻く。

救うためには壊せばいい

頭に誰かの声が響いた。

(違う……私は……!)

光と闇。

癒しと破壊。

相反する力が激しくぶつかり合う。

このままでは、また暴走してしまう――


アレンはリリアナの肩を掴み、真っ直ぐ見つめた。

「リリアナ!

お前なら救える!」

「でも私……また……!」

「いい。

たとえお前が何を選んでも――

俺がお前を止める。だから前を向け!」

涙が溢れた。

(この人は……私を信じてくれている)

震える足が、一歩踏み出す。

「アレン様……ありがとう。」

リリアナは腕を広げ、

自分の内なる光と闇を抱きしめるように祈った。

「……光も、闇も。

どちらも私の力!」

空へ向けて掌を突き出す。

純白の光と黒い炎が混ざり合い――

双つの力が一筋となって放たれた。

「――浄化と断ち切りの奇跡よ!!」

閃光が魔獣を貫く。

黒い霧が悲鳴を上げて弾け飛び、

魔獣の体が崩れ落ちていった。

群衆から、歓声と嗚咽が湧き起こる。

「助かった……!」

「本物の聖女様だ!」

「生きてて良かった……!」

リリアナは震えながらも立っていた。

(私は……ちゃんと救えた……)

アレンが駆け寄り、

彼女を強く抱きしめた。

「やったな……リリアナ。」

その腕の温もりが、

恐怖をすべて溶かしていく。

リリアナは小さく頷いた。

「はい……

アレン様のおかげです。」

二人は互いを確かめるように見つめ合う。

遠くで、息の根を止められた魔獣が黒い粉となって散っていく。

だがその粉は、

王都の空に溶けていきながら――

確かに残酷な呪いを撒いていた。


静まり返る広場。

そこへ――

司祭長エルドレッドが歩み出る。

「まさか……破壊の力とはな。」

周囲の貴族達の顔色が変わる。

「破壊……?」

「危険なのでは?」

「これでは災厄そのものではないか!」

アレンが剣を構え、

エルドレッドを睨みつける。

「リリアナを侮辱するなら、容赦しない。」

エルドレッドは不気味な笑みを浮かべた。

「いえいえ。

彼女の価値を、国中に示すことができました。」

その目には

利用するための評価が灯っていた。

アレンは悟る。

(こいつは……リリアナを支配する気だ)

彼はリリアナの手を取り、強く言い放つ。

「聖女リリアナは――

俺が護る。」

民衆がその言葉にざわめく。

その瞬間、

アレンの決断は公となり、

彼らの絆は誰の目にも明らかとなった。


しかし――

王都の隅で密かに笑う影がある。

水晶球に映る聖女の姿を見つめながら、

低い声で囁いた。

「壊れた器ほど魅力的だ。

闇が広がれば広がるほど――

主は喜ばれる。」

扇動、陰謀、破滅。

すべての糸が、リリアナへと伸びていく。

光は揺れ、

闇は囁く。

追放聖女リリアナ。

いま、国家の命運と恋の行方を握る存在となった。

物語はさらに深く――

そして危険な愛へ進んでいく。

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