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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

「裏」

頑張って書いたのでよかったら読んでください。

2025年 3月20日


PM 9:36


夜の闇に包まれた頃、一つの生配信が始まった。

暗い森の中で、男女5人が椅子に縛り付けられている。

『んっー!!』うめき声を上げている。

すると画面外から上下黒服の人物が出てきた。さらにフードとマスクで顔は見えなかった。

その人物はポケットから何かを取り出した。

『んっっー!!んっっー!!』うめく彼らの目線の先にあったのはライターだった。

するとその人物は持っているライターの火をつけ、それを5人の方へと投げた。

そしてライターが地面に付いた瞬間、そのライターを中心に火が一気に燃え広がった。

『あ“っー””!!!!』椅子に縛り付けられ、燃やされる彼らはその苦しみに耐えられず叫び続けている。その息が絶えるまで……。

ようやく全員が死んだところで配信は終わったーー


3月21日 AM 8:50


[国立大学法人信州大学 ]


数多くの生徒の中、一人のが席に座った。

「三浦おはよう」

「あぁおはよう河地」

挨拶を交わす二人、すると三浦が話し始めた。

「そういえばニュース観た?」

「ニュース?」

「うん、昨日の夜近くの山で人が殺されたんだよ」

「そうなの?」

三浦は昨夜の事件のニュースの話をし始めた。

「そう、しかも犯人がその一部始終を生配信してたみたいなんだよ」

「何それ、悪趣味な犯人だな」

「そうだね、それにこの近くで起きたから怖いね」

「早く犯人捕まってほしいよ」

そう願う二人、だが変わることはない……。


3月21日 PM 9:36


昨夜と同時刻、またあの生配信が始まった。

この日は3人、椅子に縛り付けられていた。

『んっ……』その内の一人は恐怖から涙を流し、震えていた。

だがそんなことはお構いなしに火をつけた。火は物凄い勢いで広がり、昨日の光景へと変わった。

「……」黒服の人物は無言で、焼け死ぬその様を見つめていた。

そして彼らが死ぬと静かに配信を終了した。


3月22日 AM 8:54


翌日、この日も三浦と河地は昨夜の事件について話していた。

「ていうかまた近くの山で人殺されたね」

「うん、一体何人殺せば気が済むんだか」

二人はこの話題で持ちきりだった。すると三浦が一つの疑問を話した。

「ていうかさ、なんで人殺すのに生配信する必要があるんだろ」そう言った。

「あぁ」

「だってそんなことしたら犯行バレるし、最悪犯人自身の身元がバレるよ?なのになんでそんなリスクのあることしてるんだ?」

「まぁそうだね」

三浦は最初の事件の時から疑問だった。犯人は特定され、捕まるかもしれないのになぜ生配信で殺人をするのか。違和感しかなかった。

「ていうかそもそも、犯人の動機ってなんなんだろう?」

「あぁ動機ね〜、まぁ大体の犯罪には必ず動機があるからね」

犯人は一体、どういう理由でこんな殺人を行うのか?考えれば考えるほどわからない。

だが、必ず突き止める。


3月22日 PM 6:33


授業が終わり、三浦と河地はファミレスで話をすることにした。

犯人の動機はなんなのか。犯人の意図はなんなのか。

「今のところ、犯人はうちの大学の近くの山で殺人をしてる」

「うん」

「そして毎回火を使って殺しをしてる、それにもなんか意図があるのかも」

「そうだな、その意図がなんなのか。はっきりさせよう」

二人は犯人の意図を理解するため、まずは動機を考えることにした。犯罪には必ず動機がある、それがなんなのかを突き止める。

「犯人の動機だけど、今俺がぱっと思いついたのだと、単純なシリアルキラーって言うのがあるんだけど」

「それにしてはちょっとあっさりしてないか?」

「あぁ、そうか」

「もっとしっくり来るのだと、"復讐"とか?」

河地がそう言った。犯人の動機として一番しっくり来るのは"復讐"だと。

「復讐か……」

「殺人の大体は復讐だろ、だからあの犯人も復讐目的で動いたんだろ」

「なるほど、だとしたらなんの復讐なんだろう?」そう言って首を傾げる。それに対して河地が言った。

「家族、とか?」

「家族?」

「例えば、家族の誰かが殺される。そしてその犯人に復讐するために殺人を行なってるとか?」

誰かが殺され、その復讐のために行っている。よくある動機だ。

「う〜ん、考えても他に思いつかないからそれで話を進めよう」

「うん」

三浦と河地は復讐というのを主軸に、犯人の動機を考えることにした。

まず、犯人はいつも三浦達が通っている大学の近くの山で殺人を行っている。そして毎回椅子に縛り付けてから灯油をかけ、火をつけている。人数はバラバラだがいつもそうやって殺している。

「だから犯人は、うちの大学の誰かに復讐したくて、殺してるんじゃない?」

「誰かって誰?」

「それは……わかんないけど、でもそうなら誰かしらいるでしょ?」

「まぁそうだな」

復讐する相手は誰なのか?そもそもいるのか?その考えで頭がいっぱいだ。話を始めたばかりだが、早速話題を変えた。

動機はある程度話し合ったので、次は犯行場所について話した。

「次殺人が起きるのはどこだろうね」

「まぁ今までのことから考えるとこの近くの山のどっかだろうね」

「うん、でもどこで次行われるのかぁ……わからない」

犯行場所が近くの山だとわかっても、次がどこなのか検討もつかない。そこで三浦はとある賭けに出た。

「なぁ、俺の賭けに付き合ってくれない?」

「賭け?どういうこと?」

三浦は任せてと言わんばかりの表情で笑みを浮かべた。


3月22日 PM 9:27


三浦に言われ、言われた時間に河地は山に来た。

「あ、こっちこっち」

「はぁ」

若干めんどくさそうな態度で三浦のところへ歩く。

そして河地は聞いた、なぜこんな時間に山に呼び出したのか。そして賭けがなんなのか。

「いやその、犯人って毎回同じ時間に配信を始めて殺すんだよ」

「あぁ、まぁそうだな」

「それに今のところ2日連続で殺人をしてる、だからきっと今夜も殺人をすると思って」

そう、三浦は今までのことから犯人はこの日も配信で人を殺すと思い、時間前に来て待ち伏せしようとしていたのだ。

「でも時間がわかっても、実際に行われる場所はわからないだろ?」

「そう、それだけがわからない。だから賭けたんだ」

「は?」

「あいや、三度目の正直っていうか。三回目は……大学に、一番近い山でやるんじゃないかと、思いまして」

三浦は三度目の正直という言葉を信じ、次に殺人が行われるのは大学から一番近い山ではないかと予想した。

「はぁ、お前本当単純なやつだな」

「うるせぇ、お前みたいに頭良いわけじゃないんだよ」

互いに色々言い合っているがとにかく進んだ。犯行が行われそうな場所へ。

しばらく歩いていると三浦が何かを見つけた。

「あっ、河地あれ見ろ」

そう言われ指し示している方を見るとそこには椅子があった。恐らく犯人がいつも犯行で使っているものだろう。どうやら賭けに勝ったようだ。

「やっぱここで正解だったんだよ!」

「おぉ、良かったな」

「とりあえず、ここで待ってみよう」

そう言って二人はその場で待機することにした。犯行時間に犯人が現れるまで。


3月22日 PM 9:36


そして時は過ぎ、昨夜と同時刻になった。

三浦と河地は木の陰に隠れて犯人を待っていた。すると人影が現れた。

「来た、河地来たよ」

「あぁ」

「犯人は男っぽいね。でも、椅子には誰も縛り付けられてないよ」

犯行時刻となり、犯人は現れたが椅子には誰も縛り付けられていない。肝心な殺される側がいないのはどういうことだろう。

「どうしたんだろう、河地」そう言って振り返った。

『どうも皆さん今晩は』

「………え?」

『それから、初めまして』そう言う河地の手にはスマホが握られており、画面を見るとそこには配信画面があった。

『やっと、犯人がわかりました……』

「……」

『なので、今から殺します』

三浦は驚いた表情で見ることしかできなかった。

『これが、最後の章です』力強く画面に向かって言う河地の目は少し涙ぐんでいた。

「河地……?」そう言葉を投げかけると河地は三浦の方を向き、不適な笑みを浮かべた。

すると河地は三浦の襟を掴み、その場に立たせてから椅子が置いてある場所まで連れて行った。すると三浦は気づいた。

「あれ、先輩?」

先程この場所に来たのは犯人ではなく、三浦と河地の大学の先輩だった。だが様子が変だ、先輩は何かに怯えるように震えていた。

「座れ」先輩はそう言われ素直に従った。

三浦は訳が分からずそのまま立っていると河地に無理矢理座らされ、縄で椅子に先輩と一緒に縛り付けられた。

そして、河地はポケットから三脚と取り出し、配信をしているスマホを取り付けて立てた。

『皆さん注目、一体なぜ僕がこんなことをするのか。その理由をお話ししましょう』

そう画面に向かって話し、真相を語った。

『僕には妹がいました、河地夕美と言います』

「妹?」

『優しくて、元気なやつでした。でも、殺されました』

語られた真相に三浦は驚いていた。

河地には妹がいたが、2ヶ月前に亡くなったようだ。

『大学にある焼却炉の中に入れられて、そのまま燃やされました』河地は少し苦しそうに話していた。手も少し震えていた。

「焼却炉で殺された……、それって」

三浦は何かに気づいたようだった。

『そう、信州大学の人ならわかりますよね。焼却炉から女子生徒の焼死体が出てきた、あの事件です』

そう、河地達の大学では2ヶ月前、大学に設置されている焼却炉からその大学に通う女子生徒の焼死体が見つかった事件があった。死因は焼却炉の中で燃やされたことによる焼死。

「河地の妹だったのか……」

『それで、僕はその状況から夕美が殺されたと思いました。だから、その関係者を徹底的に調べました』河地は怒りが混じったような真顔で言った。

「もしかして、それで殺人をしてたのか?」

「配信も、そいつらに恐怖心を与えるためにやってただけだ」三浦の方を見て言った。

三浦は配信画面を覗き込んだ、そしたら同情コメントで溢れていた。

『こんなに同情してくれる人がいるんですね。普段他人事としか思ってないのに』馬鹿にするように笑いながら言っていた。

すると河地は吹っ切れたように言った。

『それでは皆さん注目、今からこの二人の死に様を見届けてもらいます』

「は?おい河地どういうことだよ!」

「だから今から二人には死んでもらうんだよ」

河地はハイライトの消えた目でそう言った。

「……それなら俺関係ねぇだろ」

「いや、関係大ありだよ」

「え?」三浦は訳がわからなかった。

「三浦、夕美殺したのお前だよ?」

驚きのあまり、河地から言われたことに三浦は言葉が出なかった。

「あれ知らなかったの?夕美を焼却炉に入れて燃やしたのは、お前」

「……え?」

河地によると、妹を焼却炉に入れて燃やしたのは三浦とのこと。

「いや、俺知らねぇって!焼却炉に持ってったやつだって、先輩に頼まれたから代わりにゴミ捨てしただけなんだって!」

「そうなんだよ、お前は知らなかったんだよ。何も」

三浦は先輩にサークルの手伝いをしてくれと頼まれ、その先輩の代わりに焼却炉にゴミを捨てに行った。そしてスイッチを押して燃やした、それが人の入ったものだとも知らずに。

「知らなかったのに、親友殺すのはちょっとな。」

「河地」

「でも、その時に中身を確認しなかったお前も悪い。いくらゴミとは言っても、人ひとり分の重さのゴミを焼却炉に捨てろなんて違和感しかない」

「待ってくれ」

河地は笑っていたが左目からは涙が出ていた。すると河地は画面に向かって言った。

『それでは!この二人の最期を見届ける視聴者の皆さん、いいねとコメントをよろしくお願いします。二人の死に様……、しっかりとその目に……焼き付けろ』

苦しそうな声でそう言った。すると右目からも涙が流れた。それは、嬉しさと、悲しさの表れだった。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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