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なろラジ6参加作品

彼の部屋のカレンダーで、私の誕生日が真っ黒に塗り潰されていた。

 バクバクと乱れた心音が、やけに(うるさ)い。


 目の前にあるカレンダーで。

 私の誕生日が、真っ黒に塗り潰されていた時。


 初めて彼の部屋に来た喜びが、一瞬で暗転した。


「なん……で……?」


 思わずこぼれた声に(かぶ)さるように、ドアから明るい声が響く。

美葵(ミマリ)、お待たせ~。お客様用のカップどこにあるかわかんなくてさぁ」


 ジンがいつも通りの笑顔で、お茶を運んでくる。

 片手にお盆、もう片手には小さな折り畳みテーブル。


 私は慌ててカレンダーから手を離し、(ジン)からお盆を預かる。と、彼は手際よくテーブルを置いて、引き取ったお盆を乗せた。


「飲んでから、レポートまとめよっか」


 学校の課題で出た、フィールドワーク。

 地元の湧き水を調べ、歴史や地域との関わりを文にして提出する。


 私は交際相手のジンと組んだ。


 勉強の名の元、二人で現地写真を撮り、資料を集めて。

「じゃあ仕上げは俺んちで」と誘われるがまま、彼の家を訪れた。


 部屋は二階。

 趣味が並ぶ本棚、整然とした勉強机、青い布団が乗るベッド。


 よく知る匂いが満ちた空間にソワソワしながら、お茶を淹れてくれてる陣を待ち。


 壁にカレンダーがあったから、つい。

 何か書き込んでるかもと、見たのがいけなかった。


 まさか私の誕生日が、乱暴に、真っ黒に、消されているなんて。


(どういう意味なんだろ)


 祝って欲しかったわけじゃない。

 そりゃ少し期待はしてたけど。でも。


 想像してなかった事態に、手が震える。カップが受け皿と当たって、音が出た。


「どうかした?」


 不思議そうに尋ねる陣に、私は青い顔を上げる。


「あの……、カレンダー見ちゃって……」

「っ!」


 陣の顔に、動揺が浮かぶ。


「もしかして読めちゃった?」

「え」

「まだ内緒にしておきたくて、慌てて消したんだけど……」

「?」

「やっぱマジックって、元の文字が浮かんじゃうのか」

「??」


 彼が何を言っているのかわからない。


 おもむろに立ち上がった陣が、カレンダーで私の誕生日を確認している。


「下の文字、見えるなぁ。サプライズにしたかったのに」


 めっちゃ良い笑顔で、こっちを向いた。


「というわけで来月、美葵(ミマリ)の誕生日空けててね。インテンドーミュージアム行こう」


「えっ?」


「チケットがさ、運良く取れたんだ。行ける範囲だし、記念に」


「塗り潰したのって、予定隠すため……?」


「部屋に入る前、少し待ってて貰ったろ? でも結局バレるんなら、消すんじゃなかった」



 残念そうに、ヤツは言うが。


 こンのポンコツ! 人騒がせが過ぎるんだわ!




 お読みいただき、有難うございます!


 この後カレンダーは多分、ミマリちゃん確認の元、交換すると思います。

 誕生日塗り潰されるなんて、プンスコものですからね。新しいカレンダーに赤いハート書き込まれるかもしれません。


 高校生にするか、大学生にするか。お部屋行っちゃうミマリちゃんに、イマドキってどうなんだろ~と、迷ったので「学校の課題」という情報だけにしました。

 なお「インテンドー」は誤字にあらず、察してください(´艸`*) 土日の倍率はすごいらしいですよ。きっとキャンセル枠を勝ち取ったのね!


 なろうラジオ大賞参加作品、8作目でした。有難うございました!!

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― 新着の感想 ―
このアホウめが(笑) …とツッコミたくなる!(*´∀`*) 不穏なカレンダーにメッチャビビるミマリちゃんがカワイ… はっ! まさか彼女のビビる様子を見たくてワザと! …んな訳ないね。やっぱアホウめが(…
たしかに、誕生日が黒く塗りつぶされていたら、ちょっと気になりますよね。でも、その想いにふれたとき、あたたかな気持ちになりました。 タイトルから引きこまれ、そのまま一気にラストまでとても楽しませていた…
人騒がせなバカップル共め…(-""-;) 末長く幸せにね! ( ^-^)ノ∠※。.:*:・'°☆
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