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赤中夢

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 目を覚ますと、知らない路地に立っていた。

 ああ、またか――そう思って、僕は呆れ混じりに溜め息を吐く。


 こういう事態は、別に今日が初めてではない。

 夢遊病――とでも言うのだろうか。幼い頃からずっと、一週間に一回のペースでこんな風に気付くと知らない場所に居る。

 ある時は山中、またある時は海岸、またある時は高架下……この病はどこか特定の場所へ向かう訳でなく、ふらふらと目的も無く徘徊しているようだった。


 その間のことは、当然ながら覚えていない。

 夢を見ているような感覚ですら無く、暗転した世界を通って異なる場所に現れているような感覚だ。

 そのせいか、気付いた時には靴を履いていないことが多い。毎度足がどろどろになっているので、こちらとしては良い迷惑だ。


 今回も例に漏れず、靴を履いていなかった。

 足の裏は赤い泥に濡れていて、腐敗臭にも似た不気味な悪臭を放っている。幾度目かは数えていないが、毎度漂うこの臭いには未だ慣れない。


 どうせまた汚れるのだ、と泥塗れの足でひたひたと歩みを前に進める。その度に路地に響くぺたん、ぺたんと言う足音が奇妙に気持ち悪かった。


 路地を出ると、そこは平凡な住宅街だった。しかし深い夜だからか、人の姿はどこにも見えない。

 都合が良いか、と再び歩き出す。ぺた、ぺたという音が住宅街に甲高く響く。


 しばらく歩き続けていると、突然目の前に人が現れた。

 白いバイク、紺色の衣服――警察官だろうか、警戒心に満ちた瞳をこちらに向けている。

 いや……どちらかと言えば、恐怖か。

 しかし、なぜ恐れるのだろう。私は、ごく平凡な一市民だと言うのに。


 そんなことを考えていると、不意に眠気が襲ってきた。


 ああ……眠――――」


 眠ると同時、夜よりも深い黒が視界を覆う。

 白は黒へ、昼は夜へ――何かが、音もなく侵食する。


 気が付くと、また知らない場所に居た。また、人の気配がない場所だ。

 またか――そう思いながら帰路に着く。

 私はただただ静かに歩く。

 赤く濡れた、泥のような海の中を――――

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