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マサユメセツナ

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 ……この世界では、望めばすべてが手に入る。


 此処は「マサユメ」。あらゆる願いを叶える世界。

 食べ物も、恋人も、時には一つの国すらも。欲しいと願いさえすれば、世界が用意してくれる。


 私――「セツナ」は、そんな世界に生まれた。

 両親の顔を見たことは一度もない。けれど、私には母が居る。私が望んだ「育ての母」が。

 生まれたばかりの私は、両親に捨てられた――の、だと思う。曖昧なのは、単に記憶が無いからだ。


 私は「母」が生みの親でないことを、初めからずっと知っていた。その理由は恐らく、この世界に「自分の望みは忘却できない」という法則があるからだろう。

 私は「本当の両親」を探そうと考えたことが一度もない。何故なら、私の望んだ母は此処に居るのだから。


 願えば叶う世界に、一切の不自由は存在しない。私は苦労なく、苦悩なく、苦難なく十六年間を生きてきた。


 そんなある日のこと。土手で呆然と空を眺めていた私の前を、一人の青年が通り過ぎた。

 歳の頃は私と同じくらいだろうか。顔立ちはこの世界における「普通」――まぁ、端的に言えば整っている。しかし平凡なそれと違い、服装はこの世界では有り得ない程にぼろぼろだった。


 ほんの好奇心で、私は彼に声を掛けた。


「何で、そんなにぼろぼろなの?」


 彼は私を一瞥し、足を止めることもなく答える。


「旅をしている。この世界を知る為に」


 それだけ言い残し、彼の背中は遠ざかる。そしてそれが豆粒大になった頃、私はそれを追って走り出した。

 理由……と言えるものは、特にない。強いて言うのであれば、殆ど無意味に近い好奇心だろうか。


 望めば何でも叶う世界――そんな中、あれだけぼろぼろになりながらも叶わない願い。彼が見せたその姿に、私は何となく興味を抱いた。恐らくは、全てが叶うこの世界に退屈を覚えていたからであろう。


 ……それは、長くて短い旅の始まり。

 私は刹那の旅をする。ただの夢に過ぎないそれが、いつか真実に変わるまで。

 そして辿り着く「正夢」は――まだ、遠い未来のお話。

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