カムバック勢の憂鬱
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「ああ……懐かしいな」
数年振りに思い出深い世界を訪れ、僕はそんな言葉を漏らした。
当時ハマって、寝る間も惜しんでやり込んでいたオンラインゲーム。就活やら何やらで忙しい日々を過ごすうち、自然とログインしなくなっていた。
当然と言えば当然だが、世界の風景は殆ど記憶の中にあるものと同じだ。プレイヤーの装備品などに見覚えのないものがあったりもするが、まぁそれも当たり前のことだろう。
街を一通り歩いた後、フィールドに出ることにした。
中世的な街並みを一歩出れば、原始世界にも似た大草原が広がっている。リアルなグラフィックも相まって、画面の中にある世界から風が吹きつけてくるような感覚を覚えた。
「お、あれは」
歩いていると、小さな影が茂みから現れる。
豚……のような、小さく可愛らしい生物だ。このゲームにおける雑魚敵であり、まだレベルが低い頃はこいつを狩ってレベリングをしたものだと懐かしい気持ちになる。
立ち止まってそれを少し眺めていたのだが、モンスターはこちらに気付くと慌てて走り去ってしまう。
当然だ。初心者の頃ならまだしも、高レベルのキャラ相手には逃げるに決まっている。この手のゲームのモンスターAIは、基本そういう風になっているものだ。
しみじみと懐かしみながら暫く歩く。けれど三十分も経とうかという頃になると、段々退屈になってきた。
それと言うのも、やることがない。敵は雑魚、キャラレベルは最大、シナリオは全てクリア済み。アップデートコンテンツはあるのだろうが、気紛れに開いただけだからそんなものは買っていないし……正直、懐かしむ為だけにログインしたゲームにそこまでの金を出す気はあまり起きなかった。
結局、僕はそこでログアウトして画面を閉じる。
その時の感情は、好きなものを退屈に感じた悲哀よりも――虚無の方が、遥かに大きいような気がした。




