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星空の中、刹那を思う

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 想起するのは、色褪せた絵画。美しく、そして残酷なまでに時の流れを示すもの。


 星空の中、世界をぼうと見下ろした。

 生命の営みは光と、そして闇で紡がれる。光は人、そして闇はそれ以外の持つ生の息吹だ。

 

 光は闇を呑んで行く。それは純粋なパワーバランスなどではなく、ただ蝕む光を闇が拒んでいないだけ。

 じわり、じわりと光が広がる。その侵食は美しいが、けれど少し空虚でもある。


 蝕む――そう聞けば負のイメージを抱くが、案外そうでもないのだということをこの光景に教えられた。

 満ちていくようで、欠けている。それは月の在り方にも似ていて、不覚にも親近感を覚えてしまう。

 

 月は己で光を放てない。ただ照らされる時を待ち、そして異なる光によって満ちる欠けるを繰り返す。

 本来同一である筈の惑星は、いつしか己の力で光を放つようになった。そこに住まう生命体の行動が生んだその結果に、置き去りにされたような孤独感を抱いたものだ。


 時が流れるにつれ美しく輝き出す世界を、遥か遠い昔から長い間眺めて来た。その度消えゆく愛しい闇に、共感性の痛痒を覚えながら。

 それを眺める時間は孤独で、苦痛で、けれどどうしようもない程に感動的で――背けることのできない瞳は、一度も瞼を求めなかった。


 長い長い時間を掛けて、世界は今の形となった。その過程全てを見て来た筈だが、何故だろうか――初めの姿は、不思議とまるで思い出せないのだ。

 きっと、醜くはなかっただろう。どころか、今より遥かに美しかったような気もする。


 けれど、記憶は蘇らない。その瞳に映るものは、今この時にある刹那的な美しさだけだ。

 恐らくまた時が流れれば、今の姿も消失する。存在としても、そして記憶の破片としても。


 しかし恐らく、それで良いのだ。

 生命も、世界も、そして美も――刹那という儚い時にしか存在しないからこそ強く他を惹きつけ、魅せる尊き存在なのだから。

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