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歳上の友人

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「最近、歳をとったなぁと思うんだよ」


 そう切り出すと、それまで機嫌良く酒を飲んでいた友人の表情がみるみるうちに渋くなった。


「お前、二十代の癖に四十代の俺の前で良くその台詞を吐くことができたな」

「別に嫌味のつもりはないって」


 それでもちょっとムカつくわ、と文句を言いながら、友人は焼き鳥を口に運ぶ。

 彼とは、大学の入学式の日からの付き合いである。周りが同年代だらけの中、異彩を放つ彼の姿に興味を抱いた僕が声を掛けたのがこの関係の始まりだ。


 趣味も知識も年代上まるで異なる僕達だったが、不思議と馬が合い今日までこうしてたまに酒を飲む程度の友人関係を続けている。


「で?何で急にそう思ったんだよ」


 不満そうに尋ねて来る友人に、僕はいつも通りの態度で答えた。


「色々だよ。徹夜がきつくなったとか、うっかり忘れ物をすることが増えたとか」

「何だ、そんなことか」


 対して友人は、呆れたようにそう返す。その態度になんだかむっとして、僕は彼に聞き返した。


「そんなことって……これでも結構困ってるんだよ?」


 僕のそんな言葉を聞いて、友人は呆れたようにため息を吐いた。そして、酒で一度喉を潤してから話し出す。


「あのな、そこは俺の通ってきた道だ。その視点から言わせて貰うとな、そんなもんは老化に入らんわ」

「じ、じゃあ何だって言うんだよ?」

「まず、徹夜がきついのは普通のことだろ。普通はそんなことしないし。そんで忘れ物に関しては、お前が社会人に慣れてきた証拠だ」

「証拠?」

「気が抜けた、ってことだよ。作業の確認とか、初めの頃よりちょっと雑になってるだろ」


 言われてみれば、と僕ははっとした。

 確かに初めの頃は神経を研ぎ澄まして一つ一つ確認していたが、最近は効率重視になっている。


「ま、言うなりゃそれは成長の経過だ。本物の老化は怖いぞ?何せ、そんな愚痴すら吐けなくなるからな」


 友人はそう言ってにやりと笑い、焼き鳥を大きな口で頬張った。そんな彼を見ていると、なんだか悩んでいるのが馬鹿らしくなってくる。

 

 老化は怖い、と彼は言ったが――彼みたいになるなら案外悪くはないかもな、なんてことを密かに思った。

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