ある日の正午
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「おじさん、こんなとこで何してんの?」
ある日の正午過ぎ。公園のベンチで惣菜パンを食べていると、不意に声を掛けられた。
話しかけてきたのは、いかにもギャルと言った感じの女だ。改造されてはいるものの、制服には近所の高校のものと同じ特徴があるから恐らくはそこの生徒だろう。
「見ての通り昼飯だ……と言うか、それは俺が言うべき台詞だろう。お前、学校はどうした」
「早退ー。ちょい寝不足でさ、授業全部寝てたら「やる気ないなら帰れー」とか言われたの」
「それ、本気で帰る奴いるのか……」
「あはは、ここにいるよん」
初対面にも関わらず、女は気さくに笑いかけてくる。
初めは警戒していたが……こうも無邪気な表情を見せられてしまうと、疑うのが馬鹿らしくなる。
「ねーねー、お昼それだけ?」
そんな自分にやや呆れていると、女は隣に腰掛けて俺の持っているパンを指差した。
「そうだけど……やらんぞ」
「いや、要らないし。てゆかさ、そんだけで足りんの?」
「おっさんの胃袋なんてこんなもんだよ」
「ふーん、そうなんだ……」
女は少し考え込む。俺は何が何だかよく分からないまま、取り敢えずパンを口に運び……そして、ある重要な事実に気が付いた。
「そう言えばお前、結局何で話しかけて来たんだ?」
聞くのを忘れていた。と、女は急にきょとんとした顔で聞き返して来る。
「や、別に。なんとなく、じゃ駄目なの?」
「いや、駄目じゃないが……知らんおっさんにいきなり声掛けるなよ。変な奴だったらどうする」
「大丈夫だよ。こう見えて、人を見る目には自信あるし」
「何だ、その自信……」
結局、女のことはよく分からなかった。
その後も軽い雑談はしたが、素性についての詳しい話はお互い何も聞いていない。
ただ、まぁ――なんとなく、いつもの昼飯よりは楽しかったような気がする。
……が、それはそれとして。娘には警戒心の教育をちゃんとしよう、と思ったのもまた事実であった。




