表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/200

腐った林檎の味比べ

投稿しました!

良ければ評価、感想よろしくお願いします!

「一つ、問答をしないか?」


 ある日の放課後。部室で課題をしていた時、珍しく姿を現した顧問がいきなりそんなことを言い出した。


「何です、突然」

「なに、ほんの気紛れだ。君は思うままに答えてくれればそれで良い」


 ……出たよ、いつもの。内心でそう呆れながら僕はノートを閉じ、顧問の方へと目を向ける。


「それで、今回の問いは?」

「おや、案外乗り気だね」

「違います。貴女が断ると余計面倒臭い人だってことを既に知っているから、もう諦めてるんですよ」


 そう返して顧問を軽く睨むが、当の本人は「生徒からの理解度が高いのは嬉しいね」などとへらへらしている。

 気付いていないのか……いや、多分分かっていて気にしていないだけだろうな。


「で?結局、何が聞きたいんですか」

「ああ、そうそう。今回聞きたいのは『団栗の背比べ』ならぬ『腐った林檎の味比べ』だ」

「『腐った林檎の味比べ』?」


 何だろうか、それは。話の流れからして、恐らく『団栗の背比べ』と似た意ではあると思うが……


「目の前に腐った林檎が二つ。そして、二つの林檎には一人ずつそれを勧める人間が付いている。

 片方は九割九分腐った林檎、しかし残りの一分はとても美味しく食べられると言う。対してもう片方は九割九分が普通に食べられるが、残り一分が腐った林檎だ。

 さて、君はどっちを食べたいと思う?あ、もちろん完食して貰うよ」


 問われて、少し考える。しかし――


「――――いや、どっちも食べたくないですよ」

「ほう、それは何故?」

「いや、何故も何もどっちも腐ってるのは同じじゃないですか。それが一分だろうが九割九分であろうが、腐ってるものなんて食べたくないです」


 僕がそう答えると、彼女は何処か満足げに頷き――そして、ふわりと微笑んだ。


「うん、正解」

「え?正解って……これ、そんなものがある問題だったんですか?」

「いや、別に?人それぞれだと思うよ」

「ええ……じゃあ、何が正解なんですか」

「まぁ、私の好みだ。敢えて言うなら「人間として」正解ってところかな?

 あくまでも、私の感覚としてね」

「人間として……?」


 意味が分からない。聞いてみようと思ったが、彼女はそう考えた時点で既に居なくなっていた。


「……どういう意図だったんだ、あの質問」


 考えてみるが、答えは出ない。

 ……全く、あの人は厄介だ。毎度悩ませるだけ悩ませて、姿を消してしまうのだから――――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ