表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/200

天使と悪魔

投稿しました!

良ければ評価、感想よろしくお願いします!

 ――――これは、ある深い夜の話。


 沈み込むような黒に誘われた一匹(ヒトリ)の悪魔がぶらりぶらりと散歩をしていると、不意に彼の眼前に目が眩む程の光が現れた。


 何事かと思い、咄嗟に両目をを腕で覆う。けれど、悪魔はすぐにその腕を退けた。

 悪魔にとって、光は忌むべきものである。しかしその光は彼にも不思議と苦を感じさせず、どころか暗中にいる時のように心安らぐ気さえした。


 見惚れるように眺めていると、その光は自ずから揺らめきヒトに似た形を成して行く。

 そうして彼の前に現れたのは、金色と白に彩られた見目悍ましい天使であった。

 金と白。「光」と「純粋」を示す、最も醜悪な色である。

 しかし、何故だろうか。暗闇の中で煌々と輝くその色を、彼は嫌悪できなかった。


 特段、彼は悪魔として心澄んだ存在ではない。それどころか穢れ濁った黒に全てを満たされた、悪魔の中でも更に悪魔らしい存在であるとさえ言えよう。

 であれば何故、彼はその存在を嫌悪できなかったのだろうか。それを知る者は、並行世界を億回巡ったとしても見つかることが無いだろう。


 当然、彼自身にもその理由は分からない。

 困惑、或いは慕情。そんな感情に縛られ呆けていた彼に、天使は甘く安らかな声で囁いた。


「貴方の黒は美しい。夜闇に溶けたその姿は、まるでこの世に存在していないかのようだ」


 ともすれば、嘲りのようですらあるその言葉。しかし彼はそれにさえ嫌悪を抱かず、ただ見惚れることしかできずに居た。


 果たして、何の目的で現れたのか。奇妙な言葉だけを残し、天使は空へと消えて行く。

 

 その日を境に、悪魔の心は天使に囚われた。とは言っても、心が清くなった訳ではない。


 ただ、美の感覚が変化した。


 黒を醜く、白や金を美しく。闇を恐れ、光を愛する。

 それは最早、悪魔ではなかった。けれど、天使にもなり得なかった。

 白と黒は混じり合えど、決して染まることがない。


 混じるだけ混じり、灰に歪んだその存在を――ある悪魔が、嘲るようにこう呼んだ。


 ――――「人間」と。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ